ビジネス英語力世界一?!フィリピンの驚異的な英語力の秘密に迫る!


ここ数年フィリピンへの英語留学がブームとなっていますが、「え、フィリピンで英語?なんで?」なんて思っていた方、いませんか?フィリピン人の英語力とはどんなものなんでしょう!?気になりますよね。今回はフィリピンの言語事情をのぞいてみましょう!

2012年に行われたGlobal English社(米国)の調査によると、フィリピン人のビジネス英語運用能力はなんとアメリカを抜いて第1位!!ちなみにこの調査、78か国137000人の様々な産業で働く従業員の「職場で使用する英語力」を測ったもので、日本は50位となっています。

また、筆者はこれまでアジア各地を旅行しましたが、フィリピンだけはどこに行っても誰かしら英語を話せる人がいるので安心!!と感じていました。(あくまでも言語面では…笑)

ビジネス英語も日常会話もこなすフィリピン人ですが、それもそのはず、フィリピン人と英語は切っても切れない関係にあるのです。

 

100年以上をかけ、多言語国家フィリピンに浸透する英語

フィリピンは160以上もの言語があり、地方に行くと5つの言葉を操る、なんていう人も。このような状況では意思疎通のため、国家統一のために共通言語は欠かせません。公用語は英語とフィリピン語が定められており、学校教育においてもこの2つの言語を使いこなせるよう訓練されます。

そんな英語教育のルーツは遡ること約100年前。1898年にアメリカがフィリピンを植民地化したのを機に大量の宣教師が送り込まれました。彼らは学校教育と同時に英語を普及させていきました。だから、この時代を生きた人々はとても英語が堪能です。「おじいちゃんのほうが英語うまいんだよね~、若い世代はフィリピン語の方が得意だから」と話していました。(余談ですが、日本の占領時代には日本語が国語とされていました。山下将軍が降伏した山間の村では、90歳のおじいちゃんが日本語を披露してくれました。

 

幼いころから英語漬け!教育熱心なフィリピン人家庭

フィリピンの英語教育は小学校1年生から始まります。国語、社会、道徳、音楽はフィリピン語で、理科、数学は英語で教えられる、というように教科ごとに使用言語がわかれています。低学年のうちは母語の割合が多いのですが、学年が上がるにつれて母語の使用は補足説明程度になっていきます。徐々に英語とフィリピン語を授業の中に取り入れていくことで、子供たちは2つの言語を習得していきます。

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「将来のため」と親も子供に英語を学ばせようとします。もちろん母語が基本ですが、学校で良い成績を修め、良い大学に進学させるために、幼いころから英語を使う家庭も少なくありません。日本人からすると、そんなに多くの言葉を使ったら頭がごちゃごちゃになってしまうんじゃないか、と考えてしまいますよね。でもフィリピン人にとってそんな心配はご無用。フィリピンの学生 に尋ねたところ

“小さいころからずっと2つ以上の言語で教えられてきたから、どの言語を使おうと全く苦にならないよ。これは何語か、っていう意識はなくて、ひとつのものに対して2つの呼び方がある感覚かな。”

とのこと。苦にならず外国語を身に着けられるなんて羨ましいですね~。

ただし中学校までの就学率は50%程度。教育を受けていればある程度の英語は理解できるそうですが、受けていない半数の人々は理解できない、ということになります。私が話を聞いフィリピン人学生は、かなり優秀な層のようです。

 

英語への強いこだわり…その理由は

国家を統一するためならフィリピン語だけでいいじゃん!そう思った方もいるのではないでしょうか。しかし、英語を捨てられない事情がいくつかあるのです。まず、海外への出稼ぎ労働者(OFW: Overseas Filipino Workers)が多いということです。フィリピン政府は海外労働を奨励しており、香港やシンガポール、サウジアラビアといった国に出稼ぎに行く人が多くいます。英語が話せるために海外での就労がより容易になるのだそうです。

また、国内での言語対立という問題もあります。フィリピン語はタガログ語を基礎に作られたために、最も話者の多いセブアノ語話者からの反発が強いのです。セブアノ話者はあまりフィリピン語を話したがらないので、英語の方が得意だとか。

また、分野によっては英語での情報よりフィリピン語での情報量が少ないということがあります。アカデミックな分野の資料はほとんど英語で書かれています。全て翻訳するにはかなりの労力と費用が必要です。筆者も留学時に大学の図書館を良く利用しましたが、英語の資料がほとんどでした。

english02(筆者が留学中に使用した教科書)

フィリピン人は英語が堪能であるが故に頭脳流出という問題も起きています。優秀な人材は給料の高い海外で職を探すため、国を支える人物が国内に残らないのだとか。最近は「フィリピン人」としてのアイデンティティを高めるためにもフィリピン語を強化する動きもあるようですが、今後どのようになっていくのか目が離せません。

今回はフィリピンの言語についてレポートしましたが、やはりフィリピン人と英語は切っても切れない関係にあるようです。みなさんも是非フィリピンを訪れてフィリピン人の英語力を体感してみてください!

 

 




ABOUTこの記事をかいた人

関千尋

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。フィリピン大学に1年間交換留学し、主に少数民族について勉強していました。フィリピン国内はもちろん、ASEANの国々を旅し、魅了されていきました。文章を通して少しでもASEANの魅力を伝えていけたらと思います!