ベトナム最大級の日本語コミュニティーであるJVCとタッグを組み、スカイプを使ったオンライン授業を行う小貫氏。前職である経理分野から一転し、日本語を学ぶ人々の役に立ちたいと一念発起。その想いの先に見つけたものを伺った。
≪プロフィール|小貫均氏≫
茨城県日立市出身。経理としてキャリアを積むも、かねてから取り組んでいた英語学習をきっかけに、語学の道へ。現在はオンライン日本語教師として、ベトナムの生徒を中心に日本語を指導している。
経理から一転。語学の魅力にひかれて
ー まず、現在のお仕事内容を教えていただけますか?
20年ほど前までは、経理関係の職に就いていました。仕事に対してプレッシャーを感じ始めたのをきっかけに退職し、いくつか職場をめぐっていましたが、1年ほど前からオンラインを使ってベトナム人学生を中心に日本語を教えています。
現在は2つの場所で活動しています。ひとつは、私個人のFacebookを使って行っているライブ放送。それに加え、べトナム最大級の日本語コミュニティーであるJVC日越親友会と共同し、FreeKaiwaというオンライン授業も行っています。
ー 経理から語学という異種のお仕事にうつったのは、もともと語学に興味があったのでしょうか?
はい。もともと英語の勉強は仕事の合間をぬって勉強していました。語学を操れると、他国の人々と対等に話せるようになり、そのような人が増えれば、世界平和につながるのではないかという気持ちでいましたね。その想いは今も変わっていません。
ー 素敵ですね。英語の学習者から日本語を教える側になったのは、どのような心境の変化があったのでしょうか。
仕事を退職してから、より英語の習得に力をいれていました。しかし、これがなかなか難しくて。思い悩んでいた時、ふと「自分と同じように勉強の仕方がわからない日本語学習者もいるのではないか」という考えを抱くようになりました。
オンラインツールを使えば、今すぐ何か始められると思い、Facebookからアクションを起こしたのが始まりです。「語学学習者の役に立ちたい」という気持ちが強かったです。
始まりはFacebookのグループチャット、引き寄せたJVCとのご縁
ー 個人のFaceboookを使用しての日本語教師というのは、今まで聞いたことがなかったです。どのような形で始められましたか?
まず、「日本語でお話しましょう“Let's speak Japanese”」というFBグループに入会し、参加者を募りました。5~6人からレスポンスがありましたね。ベトナム、ブラジル、モンゴル人など、国籍も様々でした。
少数ではありましたが、学生とやりとりしながら交流していると、私がシェアした投稿を見たベトナム人女性から連絡がきたんです。それがJVC(日越親友会)のスタッフさんでした。
これも何かの縁だと思い、その女性スタッフさんに思い切って「日本語を教えられるコミュニティがほしいので、協力してただけますか?」と打診したところ、快く引き受けてくださいました。すぐにベトナム行きの航空券を購入して現地に出向くと、本部の方々と引き合わせてくださり、FreeKaiwaのローンチが決まりました。
個人FBやSkypeを用いた授業はご自宅の一室から発信
ー まさに、最初のチャレンジが引き寄せたご縁ですね。FreeKaiwaでは具体的にどのような教壇をとられているのでしょう?
生徒の確保と授業の時間割はJVCのほうにお任せしています。週に1回、90分の授業を月に4回、スカイプを使って行っています。1ヶ月当たり、15人の生徒が参加してくれています。
授業は会話練習を中心におくため、テキストを使わずに行っています。例えば今取り組んでいるものでいうと、テーマを選んで作文を発表しあう、といったものですね。スピーチが終わったら質問をしたり、発音・文法・語彙などに関して修正点をアドバイスしたりしています。
また私自身、日本語教師としての経験がまだ浅いので生徒の言葉や発音を完全に否定しない、というスタンスでいるように心掛けています。
ー 教える、という一方的なものではなく相互コミュニケーションの中で学びとる、という授業のかたちは私も楽しくて大好きです!
ダッカ(バングラディッシュ)の日本語学校に向けてSkype授業を行う小貫氏
生徒からの「ありがとう」が何よりのやりがい
ー オンライン教師として活動するなかで課題に感じること、またそれを乗り越えられる支えのようなものがあれば教えてください。
正直なところ、スカイプの限界を感じることはしばしばあります。特に日本語を勉強し始めた初心者の生徒さんとはコミュニケーションを取るのが難しいですね。画面を通して表情や身振り手振りで意思疎通を図ることは簡単ではありませんん。
一方で、彼らから感謝を伝えられたときは何よりも「やっててよかったな」と心から思う瞬間です。「ありがとう」のひとことに勝るものはありません。
私の場合、会社員時代に経理として働いていた際、仕事をして誰かに感謝を伝えられた記憶があまりないので特にそう思うのかもしれませんね。
また、生徒の大半を占めるベトナムの若者たちが、夢や目標を語っている姿を見るのも最高にワクワクする瞬間です。
ー 最後に、日本語教師というキャリアを検討している方々に向けて、メッセージをいただいてもよろしいでしょうか?
自身のなかにある「何をやりたいか」という気持ちを大切に進んでほしいなと思います。「ベトナムの教育が、経済が‥」という理由で「日本語教師」の道を選択をするのではなく、「自分が何をやりたいのか」という気持ちに向き合うことが大事なのではないでしょうか。
この記事を読んでいただいている方の中に、もし私と同じ気持ちで日本語教師をやりたい、という方がいらっしゃったら、是非FreeKaiwaでご一緒できたらなと思います。
編集後記
「『ありがとう』と言ってくれる彼らの役に、少しでも立ちたいんです。」穏やかな口調で何度も繰り返す姿に、氏の想いの強さを垣間見ることができた。柔和な笑顔の奥にある確かなその想いは、海を越えたベトナムの彼・彼女らの元まできっと届いていることだろう。
SNSの普及に伴い、今後ますます需要が増えると予想される「オンライン教師」。小貫氏からは、オンライン教師ならではの工夫や苦労を聞くことができた。日本語教師を目指す方のひとつの選択肢として、参考にしていただければ幸いだ。
小貫氏のFacebookはこちら。