2017.04.20
はじめまして! 私、筑波大学社会国際学群国際総合学類3年の渡辺祐里と申します。
生まれも育ちも埼玉県、大学入学を機につくばの地で一人暮らしを始めました。
現在は、マレーシアのペナン島にあるUniversiti Sains Malaysiaという大学に1学期間の留学をしています。こちらではSocial Science という学部に所属し、主に人類学をテーマに学んでいます。
ペナン島ってどんなところ?
ここでちらっとペナン島についてご紹介します。
ペナン島はマレー半島の西側、マラッカ海峡に位置する面積約295万㎢(東京23区の約半分)、人口約70万人(島根県とほぼ同じ)の小さな島です。マレーシアを構成する人種のうち、ペナン島は中華系がとても多く、中華系6割、マレー系3割、インド系1割といわれています。
「東洋の真珠」とも呼ばれているように、アジアを代表するリゾート地のひとつとしても知られています。ジョージタウンは、2008年にユネスコの世界遺産にも登録され、観光客でいつも賑わっています。東西の文化が融合し、多様な民族の文化を彩るこの町は、訪れる人々を魅了しています。
マレーシア・ペナン島という選択
「留学したい」
入学当初からそんな気持ちがあったものの、なかなか決断できずにいました。
大学1, 2年生のころは所属する部活のマネージャーとバイト、カンボジアの子供たちを支援する学生団体の活動と少しの勉学に勤しむ日々を送っていました。
「自分の進路についてなんとなく考え、想像したときに、ここで挑戦しなかったらきっと私は後悔するだろう」、そんな感情がよぎり、すぐに両親に相談し、大学の留学窓口に出向き話を聞きました。
「なんでマレーシア?」
よくそう聞かれますが、最初は強い理由があったわけではありません。
自分の専攻である人類学が学べること、学生団体でカンボジアに関わる中で東南アジアに少し興味があったこと、英語が日常の中で使えること、物価が安いこと…先輩の勧めもあり、ざっくりとした理由でペナン島を選びました。
留学で学びたいことはあとから見つけた
留学で学びたいことを見つけたのは、留学先が決まってからでした。
“宗教について"でした。
今まで、宗教について勉強することは複雑で難しくて、あまり好きではありませんでした。
わたしの留学のプログラムは、ASEANに留学するプログラムで、1学期間留学し、もう1学期間は受け入れ大学として、ASEANから来る学生のバディとして活動します。
私の場合は留学する前にバディとして活動する期間がありました。
ASEANの学生と接する中でいわばカルチャーショックのようなものをうけ、宗教について大きな関心を抱くようになりました。
いつものようにASEANの学生たちと休み時間に会い、「やっほ~」とみんなにハイタッチを求めました。そのとき、一人のマレーシアから来た男の子に「やめてくれ」と避けられました。ムスリムの男性は女性には触れていけない、恥ずかしながらその戒律をその時に、初めて知りました。宗教に対する信仰心はもちろん人それぞれですが、その男子学生は強い信仰心をもっていたので、ハイタッチや握手さえもNGでした。
また、一緒に食堂に行くと、彼らは私に「これは豚肉?鶏肉?」「お酒は使ってるかな?」何度もそう聞いてきました。今までどんな食材が使われているかなんて、自分の嫌いな食べ物が入っていないかということくらいしか気にしたことがなかった私にとって、彼らのその行動は驚くべきものでした。
日本人は無宗教の人が多く、私自身も今まで宗教について考えたことはほとんどなく、その出来事は自分にとって衝撃的でした。
宗教というものがなす意味の大きさを強く、そして近く感じたのです。
まだまだ環境が整っていない日本では、お祈りをするにも一苦労です。
空き教室をさがし、ひっそりとお祈りをする、そんな風にして彼らは、日本でも宗教を大切に生活していました。今まで宗教というものを身近に触れてこず、20年間生きてきたわたしにとって彼らの行動ひとつひとつは大変興味深いものでした。
さらに興味深かったのは、マレーシアにはチャイニーズ系、インド系の人々も共存していることでした。違う宗教を持った人、偏見のあるような言い方になってしまうかもしれないけれど、日本人の私からすれば、彼らは様々な特殊な習慣を持っているように見えます。そんな人々が一体どうやって一つの国に、一つの島に、生活しているのか、私の想像はぐんぐんと膨らみ、自分の学習テーマとして大きく設定していた“人類学”という学問を“宗教”という切り口でみてみたいと思うようになりました。
実際にペナン島に留学して約2ヶ月が経ちました。
その中で、自分が想像していた通りのことと、そうではない部分、多くのことに出会いました。例えば、共存という点からすれば、できている、と思う点とそうではない点があることです。
共存できている、という点はなんとなくみなさんも想像できるのではないでしょうか。
同じように授業を受け、グループワークをし、ご飯を一緒に食べたり、休みの日には出かけたりもします。イベントに参加し一緒に楽しみます。衣服や食事や習慣が異なっていても、その違いを当たり前のものとして捉え、同じ人間として過ごす、そんな姿を見ることが出来ます。
しかしそこには“違い”が存在する、それも紛れもない事実でしょう。
あるとき、チャイニーズの友達と遊んだ時、私が一人、タクシーで寮まで帰ることがありました。運転手はマレー系のおじさんで、友人たちはわたしに「気を付けるんだよ、口をきかなくていいからね、着いたらすぐに電話をして」と念を押しながら言いました。わたしはいつもタクシーなどを使うとき、マレー系の気さくなおじさんとの会話を楽しむことが多かったので、そんな風に言われたことに驚きました。彼らは、マレー系の人を信用していないのだと思いました。
逆にマレー系の友人と遊んだ時、割と仲が良かったので、思い切ってその部分について聞いてみました。「彼らはわたしたちを見下しているから、特別仲の良い友達になることはできないよ」そんな風に話していました。そこにはやはり、宗教や種族の違いによる生きづらさもあるように見えました。
感じることは多くありますが、異文化の共存というものはとても面白いものだ、ということが2ヶ月経ち、強く感じることです。もちろん、たった2ヶ月では分かりきれないことだらけです。まだまだ、留学生活は続きますので、また何か面白い発見をした際には記事を書きたいと思っています。
留学するということ
私が所属する国際総合学類は、国際という名がつくように、国際思考の人が多く集まり、プログラムも豊富にあり、多くの人が留学を選択します。なにかのチラシで「留学が当たり前になってきた」というようなフレーズを見かけました。たしかに、大学のみならず、国などの政府機関も留学をサポートする体制が整い始め、留学というものが多くの学生にとって身近であることでしょう。
しかし、私が思うことは留学というものが自分自身にもたらす、ことの大きさは絶大であるということです。
それは決して当たり前に手に入れられるものではないはずです。自分の今までの生活とかけ離れた、“有り得ない”ことだらけの中で生活することは容易ではありません。私自身も慣れない生活に、苦しみももちろんたくさんありました。しかし、そこで目にするものはいつも新しく、未知の世界が広がっていて、自分が生きてきた世界がちっぽけであることを思い知らされます。
飛行機で8時間のその先には、同じように学び、笑い、泣き、友や家族と自分の人生を歩む、大勢の人たちがいます。世の中には知らないことが死ぬほどあり、人の数だけ生き方があります。当たり前のことですが、それを実感として感じられたことは、留学してよかったと思う大きな点のひとつです。
なんだか、留学のまとめのような感じになってきてしまいましたが、私のペナン島での生活はまだまだこれからです。まだまだ未知の世界がここにある、そう思うとわくわくしますね。
時がたつのは本当に早いです。駆け抜けるような毎日の中で、全身でたくさんのことを吸収していきたいと思います。特にこのASEANという国々は、これからの日本にとっても世界にとっても重要な地域として活躍していくと思います。そんな地にいられる貴重な時間を大切にしたいです。
知られざるペナンの魅力、文化、現地にいるからこそ分かる魅力をガンガン発信していけたらいいな、と思っています。どうぞお楽しみに!