本当に社会を変えたい、未来の社会起業家に向けて SEED BUSINESS FORUMイベントレポート

2016.12.29

社会の欠陥や不合理から生まれる 貧困問題、環境破壊、限界集落、人種差別、難民...。

「こういった社会問題をビジネスで解決できたら」そんな想いを持った学生と社会人が集まるイベントにアセナビとして取材してきました!

参照;入社して即社長!本当に社会を変えたい人が集うプラットフォームを初公開 【第一回SEED BUSINESS FORUM】

このイベントは社会起業家のプラットフォームである株式会社ボーダレス・ジャパンが「社会を変えるビジネスを創る人材」に向けて開催しているものです。実際に最前線で社会問題解決に向けて取り組んでいる社会起業家の話を無料で聞くことができるというとてもお得なイベントなんです!

ではプログラムの詳細を見ていきましょう!? 

 

PROGRAM1 様々なフィールドバックで活躍する社会起業家によるリーダーセッション

ボーダレスジャパン事業リーダー写真出典元:ボーダレス・ジャパン様

様々な分野で活躍している社会起業家が自らの想いやビジネスモデル、社会へのインパクト、今後のビジョンについて語るこのセッション。社会起業家の成功体験だけでなく、彼らの挫折やもどかしさをも聞くことができ、改めて社会問題を解決する難しさ、醍醐味を感じました。

スピーカーは7人で、事業は以下です。どなたも素晴らしい事業をされていてお一人ずつ丁寧にご紹介したいのですが、今回はPROGRAM2を中心にご紹介したいため、それぞれの詳しい内容を知りたい方はボーダレスジャパンのFacebookページにてライブ配信されている動画をご覧ください!

写真出典元:ボーダレス・ジャパン様

バングラデシュで革製品の販売をおこなう店舗統括をおこなう呉原祐香さん

・BORDERLESSHOUSE社長 李成一さん
【差別偏見問題×コミュニティ】”真の相互理解を促す”コミュニティハウスづくり

・AMOMA社長 曽我晴香さん
【貧困問題×EC事業】営業利益30%を実現するマーケティングの秘訣

・CORVa社長 中村将人さん
【児童労働問題×アパレル】貧困家庭に雇用を創る子供服ブランド

・Business Leather Factory EC統括 原口瑛子さん、店舗統括 呉原祐香さん
【貧困問題×雇用創出】2年間で400人の雇用を生み出したバングラデシュ工場の舞台裏

・BORDERLESS FARM社長 田崎沙綾香さん
【貧困問題×第六次産業】貧困農家を救うオーガニック食品事業

・POST&POST社長 吉田照喜さん
【環境問題×リユース】全く新しい顧客層を発掘した子供服リサイクルショップ

 

PROGRAM2 社会起業家プラットフォーム,ボーダレスジャパンの創業者セッション

写真出典元:ボーダレス・ジャパン様

田口さん(写真中央)と鈴木さん(写真右)によるトークセッション

このトークセッションの中では、ボーダレスジャパンの創業者である田口さんと鈴木さんが、なぜボーダレスジャパンを設立するに至ったのか、そして社会問題をビジネスで解決するために必要なことを2人が語ってくださいました。

<プロフィール|田口一成さん>

1980年福岡県出身。ワシントン大学留学後、2004年早稲田大学商学部を卒業。同年、株式会社ミスミ入社。2006年に前身である有限会社ボーダーレス・ジャパンを創業。2007年3月、現在の株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役社長就任。

 

 

<プロフィール|鈴木雅剛さん>

1979年山口県出身。2004年横浜国立大学大学院卒業。経営学修士(MBA)取得。同年、株式会社ミスミ入社。2006年有限会社ボーダーレス・ジャパンに参画。2007年3月、現在の株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役副社長就任。ボーダレス・ジャパンの採用に携わる。

 

 

ボーダレス・ジャパンを設立した経緯について

 

 

 


大学入って、福岡から東京に来て何か大きいことをしたいと考えていました。そんな時に貧困にまつわる映像を見たんです。貧困という問題は何百年も昔からあるのに、未だに解決されていないと感じていました。

そこで、シンプルに貧困をなくすことに自分の人生をかければ、自分の人生が意味のあるものとなると大学1年の時に思って、大学時代に色んな人の話を聞きに行きました。その中で、NGOの職員の方が貧困問題を解決したいのであれば、もっとダイナミックに、かつお金をコントロールしながら継続的にやらないといけないと教えてくれました。

そこで、ビジネスというアプローチだと思って、アメリカにビジネス留学をして、大学4年生の時に、ベンチャーキャピタルを回り資金を出してくれるところがこ見つかったので会社を立ち上げようとしたんですけど、それだと小さく終わっってしまうと思いました。

なので、2年間ある商社で修行してからボーダレス・ジャパンを設立しました。

 

 

 

 

 

社会人の方手を挙げてください。その中で、今日もやってやるぞ!という気持ちで毎日働いている方だけ手を挙げてください。

会場からはあまり手が挙がらず

私が問題視したのはここだったんです。社会人がいきいきと働いていないということです。

学生の時に塾のアルバイトをしていました。塾の先生は子どもの人生を預かっている気持ちで、子供たち一人一人に寄り添って教材を作ったり、進路指導をしなければならないはずなんですが、そういう人がいませんでした。みんなお金を稼ぐという目的のもとで、なんとなく仕事をしていて違和感がありました。

平日の満員電車で、浮かない顔をしている社会人がいます。「働く」ってことをお金を稼ぐという目的だけで、毎日いやな思いをしながら働くのは最悪だと思います。もっとチャレンジしながら楽しんで働きたいと、大学3年の時に思いました。

そこで、既存の塾の組織改革を社員の方に提案したり、自分で塾も経営したりしました。けれどうまくいかず、自分の力量不足を感じて。働く人がもっといきいきと楽しく働ける環境を創りたいのに創れませんでした。

そのため、田口と同じ「経営者集まれ!」というような商社に入って2年半修行したんです。その中で新規事業の立ち上げを経験させてもらいました。田口とは会社に入る前から会社を創ろうと話していたので、しかるべき時に会社を立ち上げました。

 

社会問題を解決するビジネスを創るために必要なスキルや環境について

 

 

 


やっぱり
「志」が一番大切だと思います。私たちも決してプロの集団ではないと思っています。でも、みんな事業社長として、一定のソーシャルインパクトを出しているし、僕らも完全にこれから伸びる会社なので、今はその途上だけれども、やっぱりが違うんだと思います。

があれば、あとは、それを取り巻く環境かなと思います。事業戦略を計画してきたマーケティングなど沢山の分野のスペシャリストが、そのを持った人間の横について、一緒に事業を創っていけば、ソーシャルビジネスを創れると思います。

 

ソーシャルビジネスならではの難しさ

 

 

 


普通のビジネスは成長マーケットに入ることが鉄則です。業界が伸びている場合、パイがどんどん増えていくから、プレーヤーがいくら参入しても、取り分があります。

でも、私たちの場合は、マーケットが伸びているかどうかでビジネスが決まるのではなくて、本当にこの人が困っているとか、ある不条理な社会があるとか、そういった中でビジネスを創っていきます。

ミャンマーの事業でいえば、たばこを主な産業としている農家さんが農薬で健康被害を受けているからどうにかしたいけど、水が豊富なわけではないです。その中で育つ作物はハーブ。そのハーブはどうやって売るのか。ここには成長マーケットは存在しないから、新たな切り口からマーケットを創るしかありません。ハーブは授乳期のママに効果があります。マーケットリサーチをすると、授乳期ママの70%が母乳不足で困っていることを知りました。では、それを高付加価値をつけて売ってみては?といった流れです。

こうしたところが、普通のビジネスと違うところであり、醍醐味でもあるかなと思います。

 

社会起業家と普通のビジネスマンの違いとは?

 

 

 


田口が言ったこととほとんど同じです。ずっと採用に携わってきた中で一番重視したことが、「絶対に解決します!」という
「志」、言い換えれば、強い意志を持った人です。

自分の強い想いを実現するために、あらゆる手段を使って、一番早く、一番大きなインパクトを残すために自分の人生をドライブしてきた人が普通のビジネスマンと違うと思いますし、私はそういう人を追い求めてきて、いい仲間に巡り会えたと思います。

 

ビジネスで社会問題を解決する中で難しいところ

 

 

 


そもそも児童労働は、‘'絶対にダメ‘'といいますが、そんな言葉だけで簡単に片づけられる問題ではありません。子どもたちは学校行くべきだけれども、親も病気やケガなど何らかの理由で働けないとなると、家計を支えるのは子ども。その子どもたちに働くなと言ったら、その家庭はどうなるのでしょうか。

また、別の事業で牛の皮を使って財布などの製品をつくっていますが、「牛を殺して皮の製品を作るんじゃない」とかクレームがくることがあります。私たちは、製品を作るために牛を殺しているのではなくて、現地の方が牛を食べるときに余った皮を使って製品を作っています。その皮を捨てるくらいなら、それを使って製品を作りましょうという想いがあるように、現場に行って実際に事業を行わないとわからないことがたくさんあります。

 

 

 

 


児童労働は絶対にアウトだという論理は教育などの社会福祉が確立した先進諸国で成り立つものだと思います。それをバングラデシュなどの途上国で考えたときに、ストリートにいる子どもたちはそういった制度に守られていますか?と考えたときにないわけです。

彼らが人間として正しく生きていく状態を作れるか。それを常に考えています。となるとあくまで、ビジネスはツールなんです。

私たちは、一番速く大きなインパクトを出すためにソーシャルビジネスを用いますが、今、田口が言ったように、子どもだけの話であったり、体が動かないお年寄りの方や重度の障害を抱えた方に対して、ビジネスでやるべきか、支援という形か、それとも行政を巻き込んでインパクトを出すかというツールを持ってくるかは、結局、困っている人たちが誇りを持って、生き生きとした生活を送れるようにするための方法論でしかありません。

 

社会問題を解決したい人に向けてのアドバイス

 

 

 


ボーダレス・ジャパンに来ればいいと思います(笑)。あくまで選択肢の一つとしてです。私も最初、会社に入って、事業を行ったときにはうまくいっていたので力がついたと思っていました。でも、いざ自分でビジネスを立ち上げたときに全くうまくいかなかったんです。でも、私はお金儲けをしたい人はこけてもいいと思うんですが、私と同じように社会問題をビジネスで解決したい人がこけると社会的損失だと思うんです。

なので、会社に入って力をつけてから社会問題を解決するというのもいいと思いますが、事業を最初から自分で行うというのは、畑が違うので、ボーダレスみたいな組織でいきなり事業を始めて、何が必要かっていうのを考えるのもいいと思います。

ボーダレス・ジャパンというと、起業家一本って捉えられがちですが、あらゆる分野のスペシャリストの存在がとても大きいんです。志は同じだけど、役割が違う。皆が起業家であるわけではないです。

その事業が成功するのにはもちろん、志を持って皆を引っ張っていく起業家も必要だけど、それを横で支えるスペシャリストの存在が不可欠だということが最近わかってきたことです。その体制を確立するために、私たちはSEEDという形を作りました。

 

社会起業家創出プログラムSEED,SEED Youth

ボーダレス・ジャパンが10年目にしてたどり着いた社会起業家のプラットフォームの形。その名もSEED

具体的にSEEDで何ができるのでしょうか?

SEED

最大の特徴が、社会起業家がソーシャルビジネスの立ち上げに専念できる環境を整えていることです。

例えば、会計やマーケティングなどの会社経営には不可欠なプロフェッショナルの力を無料で借りることができ、最大3000万円の資金援助を受けられるなど手厚い支援を行っています!

 

SEED YOUTH

29歳以下の若手が応募できる社会起業家創出制度です。

入社して2年以内にソーシャルビジネスを創ることを目指すこの制度。2年間、ボーダレス・ジャパンの社会起業家と共に事業を行い、徹底的にビジネススキルを磨きます。そして、SEED ACADEMYで田口さんを始めとするボーダレス・ジャパンの経営陣とビジネスプランを磨いていく魅力的な制度です。

「このプログラムを説明すると、メディアにはお金のことを強調されるけど、一番大切なのは、事業を支えてくれるプロフェッショナルの存在」と田口さんは強調しました。

「起業をするとなると、最初にぶち当たるのが資金調達と仲間。例えば、ウェブページを創る時に15万円か200万円で外注するとする。お金がないがために、15万円のにするとやっぱり魅力がなく、他社に埋もれてしまって好スタートが切れない。かといって200万円で外注する資金がない。SEEDとしてボーダレス・ジャパンに入れば、ウェブに限らず、各分野のプロフェッショナルの力を、資金を心配することなく借りることができる。」

社会問題を解決するために起業したいと思う人々にとって、必見のプログラムですね!

 

おわりに

私も来年4月からいよいよ社会人となり仕事を始めますが、その中で楽しいこともあれば、辛いこともあるでしょう。しかし、そこでふと思い出すのが、私が今まで見てきた国内外で見た不条理な社会、そして人々の笑顔なんだと思います。

今回、一生かけて社会問題を解決しようとする社会起業家の強い意志を感じました。大学で社会的企業について学び、「社会起業家になりたい!社会起業家を支えたい!」そんな想いを漠然と持っていた私とは覚悟の度合がかけ離れており、自分自身の甘さや弱さを知りましたし、私は本当に社会問題を解決したいと思っているのか、改めて考えさせていただきました。

でも、やっぱり、社会問題を解決したいという想いは変わりません。将来はどんな切り口から社会問題を解決していくかはわかりませんが、最初のステップとして社会起業家の存在を日本に広めたいという想いが芽生えました。そこで、アセナビとして社会起業家 in Indonesia特集を組むことにしました。1月からリリースするので皆さん、是非読んでくださいね ?

 

アイキャッチ写真出典元:ボーダレス・ジャパン様




ABOUTこの記事をかいた人

井上良太

中央大学商学部経営学科卒業。大学2年の夏にカンボジアに訪れたことがきっかけでASEANや教育、国際協力に興味を抱くようになる。 3、4年次のゼミでは社会問題を事業で解決している社会的企業を専攻し、インドネシアの社会的企業とのネットワークを広げていた。 現在は株式会社パソナの社員として雇用を通じた社会貢献の方法を勉強中。 将来は国内外で社会的企業のプラットフォーム作りに関わりたいと考えている。