「この5年、東京が1番面白い。」シンガポールのゴールドマン・サックス・トリップアドバイザーを経て、日本で起業。インバウンド業界をクラウドソーシングで支える 株式会社SQUEEZE代表 舘林真一氏

2016.02.23

民泊(ホームシェア)をご存知だろうか?
Airbnbに代表される民泊(ホームシェア)は、自宅の空き部屋など部屋を利用しない期間中、旅行者などの第三者に貸し出すサービスのことで、家主は旅行者とのふれあいや利益を、旅行者は既存のホテルでは味わえない暮らすような宿泊体験を得られることで、世界中で人気が高まっている。
日本では規制などまだまだ課題が残る中で、民泊(ホームシェア)に可能性を抱き、新しい仕組みを作ろうとする若き起業家に話を聞いた。舘林真一氏である。舘林氏は、新卒でゴールドマン・サックス証券シンガポール支社に就職。その後、トリップアドバイザー株式会社シンガポール支社に転職をし、現在の会社を起業している。
同氏に、現在運営している事業内容や日本の民泊市場のこと、そして「ASEANで働くこと」についてインタビューをした。

《プロフィール|舘林真一氏》
東海大学政治経済学部卒業後、ゴールド・マンサックス証券シンガポール支社に勤務。その後、トリップアドバイザー株式会社シンガポール支社にてディスプレイ広告の運用を担当。2014年9月、株式会社SQUEEZEを創業し代表取締役CEOに就任。

インバウンドで発生する業務を分業化し、クラウドソーシングで運用!

—事業内容、ミスタースイートについて教えてください。

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法人向け民泊(ホームシェア)運用サポートサービス「Mister Suite(ミスタースイート)」を展開しています。運用に必要な予約管理を独自開発していて、現在国内外で200件以上のサポート実績を誇っています。

インバウンド需要が高まる中、訪日外国人を受け入れる上で発生する業務がたくさんありますよね。Airbnbに代表される民泊運用には、例えば、旅行者からの問い合わせ対応や物件の写真撮影・サイトへの掲載、チェックインサポートやハウスキーピングのスケジューリングなどがあります。運用に付随して発生する細かい業務を分業体制に落とし込み、クラウドソーシングで管理しているのが、サービスの特徴です。

例えば、問い合わせ対応のオペレーション業務の場合。

弊社では、7カ国25名のリモートオペレーターがそれぞれの地で勤務しています。日本、タイ、台湾、ニュージーランド、ドイツ、イギリス、そしてアメリカです。時差を利用し、日本が深夜の場合でも対応できるように24時間体制を実現しています。

即座に応対できる体制を整えることによって、予約率の向上にもつながるからです。主に、日本人駐在員の奥様など、在宅勤務可能な方々が中心となって、クラウドソーシングで仕事を割り振っています。

 

—民泊の受け入れにおいて発生する業務を細分化しているのですね。ホストとなっているのは、どんな方がいらっしゃるのでしょう?

不動産管理会社や別荘管理会社など、現在は法人利用がメインです。

長期で貸し出す賃貸という既存のやり方だけではなく、短期間でも貸し出せる民泊のやり方によって、空室対策にもなりますし、結果として利回りがよくなるのです。

 

—民泊の話題の際、よく議論されるのは既存のホテル業界との兼ね合いだと思いますが、そこについてはどのように考えられていますか?

ホテルに宿泊するお客様と、Airbnbなど民泊を利用して宿泊するお客様は、層が違うと思っています。

例えば、ビジネスホテルであれば、出張者がメインだと思いますが、Airbnbなど民泊で宿泊する場合は、家族や友人との旅行の場合が多い。

8378723325_2f61aca3cc_hPhoto from EFFIE YANG on flickr

そういったことよりも、ホテルが無くて宿泊の予約ができないことによる経済損失のほうが大きいと感じていますね。民泊のような宿泊場所が増えると、価格下がるから反対されるかもしれませんが、そもそも日本人すら宿泊予約ができないほどホテルが取れない、ということも起きています。

2020年には、約4万室が不足するというデータもあるので、既存のホテル業界よりかは、日本の旅行を活性化させるためには、宿泊施設をきちんと整備する必要があると思うのです。

 

Airbnbの運用で感じた、業務の煩雑さ。それを仕組みで解消していく

—ここからは舘林さんのこれまでについてお聞きしたいです。シンガポールで働くに至るまでの経緯を教えてください!

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高校の修学旅行で初海外であるハワイを訪れました。拙い英語でしたが現地の人と話したのがすごく楽しくて。英語を話せたら世界が広がるんじゃないかと思って、大学では英語だったり海外と関わる活動だったりに専念しました。

ニューヨーク州に留学していたのですが、ダイバーシティの高い環境でみんながやりたいことに挑戦しているのを見て、大きな刺激を受けたんです。それで、卒業後は海外で働きたいと決めていて。

就活を経てゴールドマン・サックスから内定をもらい、シンガポールの支社からオファーを受けたので、卒業後はシンガポールで働き始めました。香港やシンガポールで働きたいと思っていたので、良い巡り合わせでしたね。

 

ニューヨークのダイバーシティのある環境に影響を受けたのに、どうして香港やシンガポールなどのアジアで働きたいと思われていたのでしょうか?

大学時代に、30カ国くらいバックパッカーとして周っていて、その中でも東南アジアの勢いや若さに圧倒されて。これからどんどん面白くなりそうだ、というアジアのエネルギーを感じたんですよ。

東南アジアって狭いので、域内のどこかにいれば、すぐに他の国にも行ける地域。そこで、東南アジアの中でもグローバルな雰囲気があり、かつ発展している国で働きたいと思い、シンガポールを選んでいました。

8012780130_9635041bda_kPhoto from Dimitry B. on flickr

—「アジアの勢い」とか「若さ」ってよく言われることだと思いますが、どんなときに感じられましたか?

どこにいても、常にその感覚はあったのですが、現地の人たちコミュニケーションを取るときに強く感じていました。現地の人たちは、新しいものへの飽くなき興味というか、喰らいついてくるんですよね。そんな迫ってくる勢いを肌で感じていました。

 

—なるほど。シンガポールで働かれていて、いろんな国籍の人がいる中で、個人として、日本人として価値を出せたと思ったことはありましたか?

ゴールドマン・サックスでは、700名ほど社員がいる中で、日本人は70名ほどいました。だから、日本人として価値を出せるということよりも、仕事を早く覚えて、それをいかにより良くできるかということを考えて働いていましたね。

トリップアドバイザーに転職した当時、シンガポールにいるのは80名ほどだったのですが、日本人は私がはじめてでした。

トリップアドバイザーって、海外だとものすごく有名ですが日本だとまだまだ知らない人も多い。だから、日系企業への営業や広告運用など、多くの仕事を頼られていました。

 

—そして、起業されたんですよね。どういうきっかけだったのでしょう?

実家が空室に困っているという相談を母から受け、Airbnbのホストになることを提案しました。

しかし、やり方がわからなくて困っていたので、物件の写真や情報を送ってもらい、シンガポールから遠隔で運用することに。旭川なので、外国人からの問い合わせも激増し、家賃の3倍の売上を得られるようになったんです。

これってすごいなと思って、物件があったら民泊で運用ができるということがわかりました。学生時代に旅行していたときにゲストとして使用していたけれど、ホストにとっても有益なツールになり得るんだなと。

調べてみると、東京だけでも100万室の空室があることがわかって。これは、6部屋につき1部屋は空室であるという計算になります。

民泊のマーケットは伸びる、そう思いました。

ただ、実際にAirbnbを運用していたとき、とにかく煩雑だったんですよ。問い合わせ対応からスケジュール調整、清掃会社とのやりとりなど、これはホスト側大変だなと。

だったら、これを仕組み化して、しっかりと運用すればニーズありそうだし、ビジネスとしても成り立つんじゃないかと思って。

シンガポールで出会った投資家から出資の話も重なったこともあり、起業を決意したのです。

 

ーインバウンドマーケットの大きさのわりに、空室が活用されていないというギャップに着目されたんですね。

そうですね。インバウンドは、人口縮小していく日本には欠かせないです。海外から人を呼び込んで、短期滞在を長期滞在にしていくことが必要になってくるはずで。

海外好きなので海外で働いていたいと思うのですが、インバウンドが盛んになる東京って、この5年が1番面白いんじゃないかと思っています。

だから、いま東京で働かないと、おそらく戻ってこないんじゃないかなっていう感覚がありますね。

 

機会がないのなら、自分で作り出せばいい

—舘林さんは卒業後すぐにシンガポールで働かれたんですよね。新卒で海外就職すると、しっかりとしたビジネスマナーが身につかないという点があると思います。新卒海外就職によるデメリットってありましたか?

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全く無いですね。

日本にいるから必ずしもビジネスマナーが学べるわけじゃないし、たとえ日本人と会う機会がなくても、自分で機会を作ればいい話。

日本で働いたからビジネスマナーが身につくのではなく、興味を持って自ら学ぼうと吸収する姿勢を持つこと。それは、日本にいようがいまいが関係ありません。

だから、海外で働いたことのデメリットは一切ないですね。

 

—これからの展開を教えてください。

ミスタースイートをどれだけ大きくするかに注力したいですね。そのためには人材採用にも力を入れていきたいと思っています。

民泊だけに限らず、ホテル業界全体も含め、インバウンドをサポートしていきます。

ビジョンとしては、新しいインフラを作りたいです。

「1つのサービスを作る」というよりは、インバウンドで発生する業務を、分業化体制に落とし込んで、多くの仕事を創出したいと思っていますね。

 

—さいごに、海外で働きたいと思っている人へ向けてメッセージをお願いします!

海外では、日本にないたくさんの刺激があると思いますし、ダイバーシティの高い環境で色々な人と出会うことで、新しい価値観に触れられますし、新しいアイデアもどんどん生まれてきます。

そういった環境にどんどん自分を放り込み、経験を積めれば、他の人にはない強みを持てるはず。

迷っている時間はもったいないと思うので、どんどん行動に移して、パワーアップして、日本のために、世界のためにがんばっていけるような人材になってほしいなと思います。

ぼくもがんばりますので、がんばってください。

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