「東南アジアに一歩踏み出したいあなたへ」〜カンボジアボランティア・インターン経験者対談〜後藤さん・佐藤さん

12月15日(金)に開催されたイベント “ASEANカフェ〜初めての東南アジアを知ろう〜” に関連して、カンボジアでのボランティア・インターン経験のある2人の対談を行いました。初めは戸惑いながらもカンボジアでの挑戦をした2人が、どのように渡航を決めどんな経験をしたのか伺いました。「東南アジアでボランティアをしてみたい。」「NGOで働いてみたい。」「貧困国を自分の目で見てみたい。」そんな皆さんが最初の一歩を踏み出すきっかけにしてもらえると嬉しいです。

記事の最後にアンケートフォームがございます。2~3分で回答できますのでぜひ協力していただけますと幸いです。

カンボジアへ踏み出したきっかけは?

ー まずはお二人の自己紹介をよろしくお願いします!

後藤(写真左):早稲田大学国際教養学部3年の後藤まりなです。今年の8月から来年まで休学し、現在はカンボジア西部バッタンバン州の農村にあるNGOでインターン生として働いています。

佐藤(写真右):創価大学国際教養学部4年の佐藤由美子です。私も休学をし、シンガポールにて留学・インターンを経験しました。現在はアセナビのライターの活動もしています。

左:後藤さん、右:佐藤さん

ー ボランティア、インターンに行くことを決めたきっかけは何ですか?

後藤:去年の10月にカンボジアを訪れたのがきっかけで、持続的に貧困問題を解決する手段としてソーシャルビジネスに関心を持ちました。それから、テレビ東京の「未来世紀ジパング」という番組で、カンボジアコットンクラブが特集されていたのを見ました。生産者や環境に負荷をかけず、現地に雇用と教育の機会を生み出している活動を見て、「これこそ、持続可能で誰も傷つけない貧困解決の方法だ」と思ったんです。

Facebookを通じて代表の古澤さんとやり取りが始まり、夏休みに会計や教育、業務改善などのお手伝いさせていただくことになりました。

佐藤:私もソーシャルビジネスに興味を持ったのが最初のきっかけです。高校生のときに社会課題の解決と企業の利益を両立させるBOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスについての新聞記事を読んだり、大学1年生のときにソーシャルビジネスでノーベル賞を取ったユヌスさんに大学での講演で直接会う機会があったりして、アジアの貧困国について知りたいと考えるようになりました。そして大学2年の夏に実際にボランティア団体を通してカンボジアを訪れました。

カンボジアコットンクラブの製品の一部。地元で手に入るアボカドの種と皮、マンゴーの樹皮、アーモンドの葉、藍の葉などを使って色を染めたストール。

 現地での活動内容は?

ー インターン先ではどのような活動をしていますか?また、後藤さんはNGOでどのような方と一緒に働いているのでしょうか?

後藤:カンボジアコットンクラブでのインターンは、自分で何をするかを考えて行うか、代表や上司の方に頼まれたことをします。私のお仕事は、コスト会計、商品の製造、スタッフさんのマネジメントのお手伝い、体験プログラム、業務改善、カカオやバナナ、野菜の有機栽培のお手伝いなどです。

一緒に働いているのは、元NHKドキュメンタリー番組のテレビマンの古澤さんと、元医療関係のボランティアの日本人の方が一人、オーガニック農業が専門のベトナム人の方一人、地域に住むカンボジア人のスタッフの方が12人です。

佐藤:主体的に活動されていてすごいですね!

                                               

カンボジアコットンクラブでのお仕事の様子。左上から、業務改善やコスト会計、英語の授業風景、朝礼の様子など(後藤さん)

ー では、佐藤さんが参加されたプログラムについて詳しく教えて下さい。

佐藤:私の場合、検索して見つけたNICEを利用しました。2週間のプログラムでカンボジアのシェムリアップに行って、フリースクールで英語教育を行うというもので、メンバーは日本人だけでなくヨーロッパや韓国など様々な国から来ていて、全体で10人くらいいました。

お金はどれくらいかかる?

ー 費用はどれくらいかかりますか?

後藤:カンボジアは物価が安いので、あまりかかっていません。ビザの費用(3,300~3,850円/月)、食費(3,000~6,000円/月)、家賃(16,500円/月)、海外旅行保険(7700円/月)です。10月下旬からは、代表のご厚意で職場に泊まらせていただいているので宿泊費はかかっていません。

佐藤:お金をあまりかけずに生活できているのですね。私は飛行機をギリギリまで予約しておらず、渡航費が6万円ほどかかってしまいました。

そして、日本と現地のボランティア団体に支払うお金が合計6万円で、現地での生活費には2, 3万円使いました。なので2週間で15万円以下でした。かなり安くなるので飛行機は早めにとるのがおすすめです(笑)。

 不安だったこと・気をつけたことは?

ー 最初にカンボジアに来る時、不安はありませんでしたか?

後藤:治安の面で少し心配していました。過去に一度、カンボジアコットンクラブには強盗が入ったからです。しかし実際に来てみると、アメリカ式の厳重な警備体制がひかれていて、身の危険を感じたことはありません。田舎で18時に日が沈んでからは辺りは真っ暗なので、出歩かないようにしています。

ー 佐藤さんはどうですか?

佐藤:夜遅くに外に出ないことやスマートフォンをポケットに入れたままにしないことなど、基本的な注意事項を一つ一つ気を付けていました。でもシェムリアップはショッピングモールがあったりと予想以上に栄えていてそこまで怖い思いはしませんでした。

もちろん油断は禁物です。私の親はかなり放任主義だったのですが、一応何かあったときのために自分の連絡先と、ボランティア団体の連絡先を伝えておきました。

現地の方はこのような家に住んでいました(佐藤さん)

カンボジアの第一印象は?

ーはじめてカンボジアに来たときの印象を教えてください。生活状況や食べ物についてお聞きしたいです。

後藤:初めてカンボジアに行った時は、アンコールワットとトレンサップ湖の水上集落を観に行きました。魚や野菜の料理も美味しく、現地の人たちもとっても優しくていい思い出になりました。

佐藤:恵まれない生活をしている人々にもその時出会ったのでしょうか?

後藤:はい。アンコールワットの前で、苦しそうな顔で必死にハガキを売っている子供に会いました。その子からハガキ10枚セットを1ドルで買いました。ところがホテルに戻ってから路上の物売りの子の生活について調べてみると、その子たちが売り上げたお金は、必ずしもその子やその子の家族のためになっているとは限らず、組織的に裏で彼らを操っている大人がいる可能性があることを知りました。

その時に初めて、貧困問題の闇の深さを感じ、どうにかしたいと思いました

佐藤:カンボジアに来る前は、かなり危ないイメージを持っていました。しかし、シェムリアップを訪れて、映画館やカフェ、ナイトマーケットなどがあり、自分の想像以上に栄えていました

トイレやシャワー環境に日本との違いを感じる一方、カンボジア人が最新のスマートフォンを使いこなしていたのは面白かったですし、最初は衝撃でした(笑)。

ー 東南アジアあるあるですね(笑)。

仕事を通じた教育により、製造業の基本「トヨタの5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」が徹底されている。(後藤さん)

移動手段は?

ー お二人はどのような交通手段を使っていましたか?

後藤:カンボジアでは交通事故が多く、事故による死亡率も高いので、バイクではなくなるべくトゥクトゥクか車に乗るようにしています。トゥクトゥクは、オープンカーのように前が空いているので、風がとっても心地良くていいんです。一番好きな乗り物です。日本でもあったらなと思います(笑)。

佐藤:初めてカンボジアに来たときに、「トゥクトゥクは高い。バイクの方が良いよ。」とバイクタクシーのおじさんに言われてバイクを利用しましたが、後藤さんがおっしゃったように、やはり危ないので、その後はトゥクトゥクで移動しました。バイクはバイクで開放感があり、私は好きだったんですけど(笑)。

トゥクトゥク(東南アジアで普及している3輪タクシー)

 インターン・ボランティアでのコミュニケーションは?

ー 後藤さんは職場のコミュニケーションは英語でしているのですか?

後藤:主に身振り手振り、表情、絵、簡単な英語、意味を含んだ沈黙などでコミュニケーションをします(笑)。みんなジェスチャーが上手なので、だいたい通じます。

半年前に英語を勉強し始めたスタッフさんは、首に英単語帳をぶら下げて常に英語を覚えようとし、毎朝勤務時間より一時間早く職場に来て、英語の授業を受けています。アルファベットから習い始め最近では英語で話せることがだいぶ増えてきました。彼らの楽しみながら勉強している姿を見ると、とても嬉しくなります。

ー佐藤さんはフリースクールでのコミュニケーションをどうしていましたか?

佐藤:私がいたシェムリアップは観光地だったので、かなり小さい子でも簡単な英語は話せるんですよね。私たちも英語を教えていたので、コミュニケーションはどうにかなりました。困ったのはカンボジア人のおばあちゃんおじいちゃんと暮らしたホームステイの方で、ジェスチャーをしたり、簡単なクメール語を覚えたりしながら乗り切りました。

佐藤さんがボランティアをしていたフリースクール

現地を訪れたからこそ学べたことは?

ー 後藤さんが今インターンをしている中で、「日本にいたら学べなかった、カンボジアに来たからこそ学べた」と思うことは何かありますか?

後藤日本で出会ったことのない価値観の方々と一緒に働く中で、その人にあったコミュニケーションの取り方を試行錯誤するようになりました。例えば、なかなか約束の時間に来てくれない業者の方にどうやって頼めば早く来てもらえるかなどです。また代表から、汚職が多く郵便システムがうまく機能していない中で、どうビジネスを進めるかなどを学びました。現在では郵便システムはだいぶ機能しているようです。

ー佐藤さんは、2週間のボランティアで何を学ぶことができましたか?

佐藤:実際にカンボジアに行き、学校を訪問して現地の生徒たちのリアルな生活状況を大学2年生の時に見ることができたのは大きな学びでした。この経験が東南アジア1か国目で、発展途上国がこれから成長していくところにワクワクする自分を発見し、その後東南アジアに興味を持ち、留学するきっかけにもなりました。

カンボジアでお世話になった家族と(佐藤さん)

これからカンボジアで挑戦する人へのメッセージ

ーこれからカンボジアへボランティアに行く方へメッセージをお願いします。

後藤:カンボジア人の方は、人懐っこくて、心が温かいです。彼らに出会えただけでも大きな財産だなと思います。

ある時、団体の代表が「毎日朝起きたらラッキーだと思い、寝る時には、人生最後の日だと思うようにしています。意外とこれがうまく生きるコツかもです」とおっしゃっていました。1日1日を悔いのないように生きている代表は、どんなに不安なことや困難があってもイキイキしているように見えます。いつ、命が終わるか分かりませんから、どんなに不安でも、飛び込んでみてみるといいかなと思います。

シェムリアップやバッタンバンにお立ち寄りの際は、ぜひ、カンボジアコットンクラブにもいらしてください。

佐藤:2週間のボランティアは、こちらがなにか発展途上国に貢献するというよりかは、学びを与えてもらった経験だったと痛感しました。15万もあれば寄付をした方が国に貢献できるかもしれません。その中でわざわざボランティアに行くのは、そこでしか学べない経験ができ、それが自分の将来の選択を変えるきっかけになるからだと思います。必ず良い経験になると思うので、ぜひ挑戦してみてください。

ー ありがとうございました!

カンボジアコットンクラブの、有害化学物質を一切使わないコットンを栽培し始めてから、貧しい生活から抜け出し生活が安定した農家さん。2年前、旦那さんのクルタさんは、「辛いことばかりの人生だったけれど、綿を作ってからは幸せな人生だった」と家族に伝え、亡くなった。(後藤さん)

編集後記

「実際に国際協力の現場を自分の目で見てみたい」と実際に訪れたカンボジアでの学びをきっかけに、精力的に活動するお二人とお話をして、私自身も興味がある国や土地を訪れたいという気持ちが強くなりました。今回の記事が、東南アジアに足を踏み入れるか悩んでいる学生の方が、行動を起こすきっかけになれば嬉しいです。

最後に:アンケートへの回答を募集中

この記事を読んだ感想をこちらのアンケートフォームから募集しています。
アンケートの対象は以下の方々です。

・国際協力に関心があるけど、まだ途上国に足を踏み入れたことがない人
・これからボランティアやインターンをしたいと思っている人
・国際協力系のNGOで働いてみたい人
・途上国を自分の目で見てみたい人
・とりあえず最初のいっぽ踏み出すのに不安がある人

2~3分で回答できますのでぜひともご協力よろしくお願いします。