2015.11.22
神さま、仏さま、GPSさま。道に迷う度にお世話になっています。
GPS(Global Positioning System)は、宇宙にある人工衛星から信号を受信して、今自分がどこにいるのか突きとめている役割を果たしています。このように、場所や時間を特定することを「衛星測位」といいます。
ASEAN各国では、災害が多い地域の異常をいち早く察知し、防災・減災に役立てようと、衛星が打ち上げられているのです!
衛星会議 in ブルネイ!
あなたは「ブルネイ・ダルサラーム国」を知っていますか?
ASEAN加盟国で、マレーシアの南東の島に位置します。なかなか行ったことのある方はいないのではないでしょうか?
ここブルネイで、「第7回目マルチ*GNSSアジアカンファレンス」が、2015年の12月に開催されます。
*GNSS (Global Navigation Satellite System)・・・複数の航法衛星から地上に向けて送信される電波を受信することで位置や速度方位の算出および高精度な時刻の取得ができ、かつ、世界中で利用できる衛星システムです。” (引用:古野電機)
つまりGNSSという大きな枠組みのなかに、各国のさまざまな衛星測位システムが含まれており、GPSはアメリカが開発した衛星測位システムの一つ。ほかにもロシア、欧州や中国などが自分たちの人工衛星を運用中、あるいは運用予定です。
そして「マルチGNSS」はこれらのGNSSを同時に使って、より精度の高いデータを集めようという取り組み。
捕捉衛星数の比較 (左:マルチGNSS受信機、右:GPS受信機)
(引用:古野電機)
左の円が、マルチGNSSが捉える人口衛星の数を、
右の円が、主にGPSだけが捉える人工衛星の数を表しています。
両者のちがいが一目瞭然ですね!
なぜ、ブルネイで開催されるの?
マルチGNSSは、アジア・オセアニア地域での利用が見込まれています。なぜなら、世界の災害のおよそ4割がこの地域で起きており、アジア・オセアニア地域での犠牲者は、世界の過半数を優に上回っているから。
ほかの地域なら助かったかもしれない人が命を落としていると思うと、とても悲しいですね。
GNSSを導入することで、地殻変動を短時間で観測できたり、災害時の被害状況を把握したりすることに役立つことが期待されています。
カンファレンスの開催地は2010年の第1回目から順に、タイ(バンコク)、オーストラリア、韓国、マレーシア、ベトナム、タイ(プーケット)そして、今回のブルネイです。
ブルネイはASEAN加盟国のなかでも、ちょうど真ん中に位置するという点で、地理的に重要な国。「石油」と「天然ガス」を産出するため、高い経済水準で安定している国でもあります。
2013年のデータでは、なんとブルネイの最大貿易相手国は、日本!こんなに関係が深いとは、知りませんでした。 日本はブルネイから、石油と天然ガスを輸入しています。
(参照:ASEANで最も影の薄い国?!ブルネイ・ダルサラームに行ってみたら分かったコト)
ASEAN防災ネットワーク構築構想で、災害に立ち向かう。
The Glory mission is designed to make measurements of both the sun and the Earth.
Credit: NASA
2011年、日・ASEAN外相会議で「ASEAN防災ネットワーク構築構想」が提案されました。日本とASEANが協力して、防災対策能力を強化しようという構想です。洪水、台風、地震の被害が後を絶たないASEANを救う手立てになるかもしれません。
そのために日本が貢献できることの一つは、これまで紹介してきた「人工衛星」です。ASEANに複数の人工衛星を先導的に整備することで、これまで以上に災害に対応できるようになります。人材育成も行うことで「産業を生みだす」という狙いもあるのです。
まさに、日本の宇宙産業を世界に広めると同時に、災害対策が迫られているASEANの力にもなれる分野ですね。
GPSをはじめインターネットやテレビを通して、私たちは宇宙といつでも、どこにいても繋がっているのだと気付かされました。目に見えないものに感謝することはむずかしいですが、宇宙でがんばる人工衛星とそれを運用する方々に、ありがとうございますと言いたいです!
《参考URL》
・マルチGNSSアジア(http://www.multignss.asia/jp/index.html)
・宙の会:宇宙防災と国際協力(http://www.soranokai.jp/pages/uchuubousai_hosiyama.html)