自分を活かす選択肢として海外就職を! 海外就職研究家 森山たつを氏

 

「海外就職」と聞くと、「飛び抜けて優秀なグローバル人材にしか無理!」というイメージがないだろうか?そうではなく、自分を活かすための「海外」という選択肢を多くの人に持ってほしいという海外就職研究家の森山さん(通称もりぞおさん)に、その理由を伺った。

【プロフィール|森山たつを氏】
1999年早稲田大学理工学部経営システム工学科卒業。日本オラクル株式会社、日産自動車株式会社にてIT事業を担当。その後、世界一周旅行などを経て海外就職活動を開始する。現在は、その経験を活かして海外就職に関する執筆活動を行う。

 

もりぞおさんが海外就職研究家になったワケ。 

 

−海外就職研究家とは?

その名の通り、海外で働くにはどうしたらいいかについて調べて、本や記事といった形で伝えていくということをしています。

 

—どういった経緯で海外就職研究家になられたのですか?

もともと、新卒で日本オラクルに入社して製造業向けソフトウェアの開発を担当していました。その後日産自動車株式会社に転職、グローバル物流コストの削減プロジェクトなどを担当していました。世界一周旅行なども経験して、2010年あたりから海外で働こうかなと思ったんですね。というのも、前職で製造業相手のIT関係の仕事をしていましたが、もうそろそろ日本国内で製造業の仕事をやっていたら仕事がなくなると感じたんですよね。中国や東南アジアにどんどん工場が出始めた時期でした。じゃあ、ぼく自身が海外で働こうと思い海外就職活動を始めたんです。

アメリカやヨーロッパは当時景気が悪く、日本人が働く余地は全くありませんでした。じゃあアジアに目を向けようということで、香港、シンガポールで製造業やIT関連の仕事を探したんですね。結構仕事がたくさんあり内定も多くもらうことができて、せっかくだからインドネシアやタイなど他の国でも仕事を探してみました。

たくさん仕事はあったのですが、そうした国々が求めるのは25~30歳くらいの若い人で、逆に香港やシンガポールは僕くらいの年齢のマネージャークラスが欲しいみたいなんですね。国によって求める人材が違うということなど、海外就職活動をする中で面白い発見がたくさんありました。それらをブログで発信しているとたくさんの反響があり、海外就職に関する本を書いてみないかというオファーを受けたんです。当時は就職先を決めていたのですが、本の執筆にチャレンジしてみたかったので本を書き始めました。そこから海外就職研究家が始まった、ということですかね。

 

−現在の海外就職事情について教えてください。

情報が充実してきたため挑戦する人が増えてきている印象はありますね。ネットで多くの情報を簡単に手に入れられますし、海外就職を取り扱う日系の人材会社も増えています。しかしビザが少し厳しくなってきているので、ある程度職歴や英語力がないと就職しにくくなっています。海外就職が身近に感じられるようになった一方、ライバルも増えているため今までほどブルーオーシャンではないと思います。

 

自分を活かせる場所の1つとして海外を

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—どのような思いで海外就職について発信していらっしゃるのでしょうか?

これから少子化で国内市場が狭まってゆくなか、日本国内だけで仕事することは大変になっていくと思うんですよね。そんな中で国内にしか選択肢がないのはしんどいなあと思います。下りエスカレーターを思いっきり全力疾走で駆け上がれる人もいれば、全力疾走しても下がっしまう人もいる。だけど、世の中には上りエスカレーターもたくさんあるわけで、そうしたところに目を向けてみるのも1つの良い選択肢だと思うんです。海外就職という選択肢もあるよ、ということを皆さんに知ってもらえれば、という思いでやってます。

しかし、新卒で無理に行く必要はないと思います。海外で新卒入社するのは案外簡単なことも多いのですが、生き残れるかは別問題です。海外では日本の新卒採用のようには手取り足取り教えてくれませんし、何のスキルもない段階で行くのはハードルが高いですね。

 

−海外で生き残っていくために重要なことは何ですか?

日本人であることを活かすことだと思います。

現地で、現地の人と戦っていく場合、現地語や現地文化への造詣に関しては絶対勝てない。しかし、日本人に対しては、日本人らしいお客さんのもてなし方や、日本人に信頼してもらえるようなプレゼンを行うなど、日本人だからこそのサービスクオリティを提供できるわけですよね。海外ではこのスキルはとても重宝されます。将来的には、仕事そのもののクオリティで勝負できるようになればベストですが、最初のうちは日本人であることを最大限に活かしていったほうが有利に戦えると思います。

 

−グローバル人材という言葉が流行っていますが、どのようにお考えですか?

正直、グローバル人材になるのは相当難しいことです。海外に出れば何ヶ国語も話せる、信じられないくらい優秀な人がたくさんいます。そんな中でグローバル人材になりたい人は挑戦すればいいと思いますが、海外就職=グローバル人材になるということではないと思います。日本人としての自分を活かす場所として海外という選択肢もあることを知ってほしいです。

メシャーリーグに行きたい人は行けばいい。ただ、世の中にはメジャーリーグしか野球をする場所がないわけではありません。日本のプロ野球や社会人野球、それこそドミニカのウインターリーグなどでも良い。周囲に合わせて一様にグローバル人材を目指すのではなく、自分に合う場所を見つけることが重要だと思います。

 

サムライカレープロジェクト


—しかし、結局海外就職するかどうかは向き不向きの問題に行き着くのかなとも思います。

そうなんですよね、結局はやってみないと自分が海外就職に向いているかどうかはわからないと思います。異国の地で、全く違う文化、生活習慣、言語のなか働くことなんてできるのか。そこで海外でビジネスをやってみる機会を作ったのがサムライカレープロジェクトです。

サムライカレープロジェクトとは、インターン型の海外起業体験プログラムで、カンボジアのカレー屋「サムライカレー」を自由に経営してもらいます。

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お店の利益を目的に作ったわけではなく、人の成長をお手伝いする場として作ったので参加してくれた方々の自主性を尊重しており、マーケティングや広報、価格設定や新メニューの開発などやってみたいことは何でも挑戦してもらいます。発展途上で新しい文化が芽吹きつつあるカンボジアで、あまり新しいものに挑戦したがらないカンボジアの人々に、いかに日本人が経営するカレー屋に興味を持ってもらうか。とても難しいですがとてもやりがいのあることです。

研修生の人たちはその困難に立ち向かう、新しい提案をしてもらうのですが、たとえ利益が見込めないであろう企画でも、GOを出します。そして案の定失敗しても、その失敗から何か学び改善案を生み出すことを重要視しています。そうすることで、異国の地で自分たちでビジネスをやってみることの感覚が何となくつかめるし、自分の力で行動する力がつくと思うのです。

 

自分がやりたいことを実現するための方法を考える


−もりぞおさんの就活観はどういったものですか?

何の仕事をやりたいかということにフォーカスすべきで、国内就職とか海外就職とか無理に分ける必要はないと思います。外国で働きたいとすると、海外就職しなくたって、海外に飛ばしてくれそうな日本の会社に就職すればいいわけです。

例えば、海外で働きたい場合、日本の地方の中小企業で、海外進出を視野に入れている会社に就職するのがベストだったりします。インドネシアで働きたいのであれば、インドネシアに進出しそうな企業をピックアップして、インドネシア語を今から習得したり、インドネシアを訪れてみたりする。自分が何をやりたいかわかっていて、そのための一歩くらいは踏み出せているのであれば就活で大苦戦することはないと思います。

国内就職や海外就職というカテゴリー分けや、企業名やその知名度から自分の就職先を考えるのではなく、自分が何をやりたいのかを最初に据えて、それを実現するための方法を考えることが本当に納得のいく就職のために重要だと思います。

 

−それでも大手有名企業に学生が集中するのはプライドの問題でしょうか?

プライドの問題というよりも、単にそれ以外の選択肢を知らないのではないでしょうか。他にも自分のやりたいことが実現できる会社がたくさんあるのに、有名でないばかりにそうした可能性を見過ごしてしまっているのではと思います。そのためにも好きなことをやるための方法や選択肢をできるだけ多く持っておくべきです。

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−最後にアセナビ読者に向けてメッセージをお願いします。

自分が今楽しいと思えることをやることが実は一番幸せになれる道なんじゃないかな、と思います。そのために自分が何ができるのかということの選択肢を増やさないと、何が楽しいと思うかわからないと思うんですよ。だからいろんな国を経験したり、いろんな仕事をやってみたりして選択肢を増やすべきだと思います。

日本ではまだ海外で働くことが主流ではなく、競争率はまだ低いのでぜひチャレンジしてみることをお勧めします。最後までやり遂げなければ!と思うと大変ですが、若いうちはヤバくなったら帰ればいいというくらいの気持ちで何でもやってみればいいと思いますよ。

 

−ありがとうございました。

*サムライカレープロジェクトが気になる方は、コチラ

Capture - サムライカレープロジェクト カンボジア インターン型起業体験 - http___samuraicurry.com_

 




ABOUTこの記事をかいた人

新多可奈子

東京大学文学部3年。初めての海外経験がマレーシアだったことから東南アジアに興味を持つ。シンガポールに半年間の滞在経験あり。観光地や有名どころに行くのも良いが、現地の人々と触れ合うのが好き。モットーは「心の声に耳を傾ける」。皆さんがワクワクするような記事を提供できたらと思ってます。