ASEANとほぼ無縁だった私がラオス語に出会い、魅了された話

ສະບາຍດີ (sabāaydǐi): こんにちは”, 東京外国語大学言語文化学部ラオス語専攻2年の下間彩加です。幼少期より何かしらの形で音楽を続けている影響もあり、楽器を演奏することや大勢で何かを創作することが大好きです。特技は和洋問わず“篠笛・ピッコロ・フルート”の3種類の笛を吹けることです。両親がくれた大切な名前「他者の心に、人生に、彩り(=個性)を加えられる存在になる」より“Add my color and make others happy than ever”をモットーに日々生活しています!よろしくお願いします。

パトゥーサイ(凱旋門)からの美しい眺め

さて、一般にラオス語と聞くと「えっ、何それ。そんな言語があるの?どこで使われているの?」と思われる方が多いのではないでしょうか。簡単に説明致します。ラオス語は主にラオス人民民主共和国と隣国タイ王国の東北地方で用いられている言語であり、話者人口は約3000万人(推定)とされています。極めてマイナーな言語です。「東南アジア最後の桃源郷」、「メコン川に抱かれた珠玉」、「癒しの国」等、様々な文句で紹介されるラオスですが、他のASEAN諸国(タイやベトナム、カンボジアetc.)に比べると得られる情報量が少なく、知名度も低いのが現状です。

 

ラオス語を専攻していて必ず質問されること、それは「何故、ラオス語なのか」です。確かに気になりますよね。中国語やスペイン語、英語…、世界にはもっと話者人口の多い言語があるというのに、その中でなぜ敢えてラオス語を選択したのか。そこで、今回は私がラオス語を専攻するに至った経緯にくわえ、以下の内容をお話しします。

私がラオス語を専攻した“きっかけ”

率直に申し上げますと、大学生になるまでの私は東南アジアとほぼ無縁の女の子でした。初めてその地に降り立ったのは幼稚園の年長のとき。祖父の出張に同行する形でシンガポールを訪れました。大分昔の話なので記憶が鮮明ではありませんが、ピンク色のイルカに触って心躍ったことはよく覚えています。以来、今年の2月にラオスを訪れるまでは東南アジアに足を踏み入れることがありませんでした。

 

大学受験期、言語習得や異文化理解、国際関係に特別な関心を抱いていた私には他のどの大学でもなく東京外国語大学で学びたいという強い思いがありました。専攻したい地域や言語が定まっていないにも関わらず、直感的に私には外大しかないと思い込んでしまったんです。そんな私がラオスに興味を持ったきっかけは、予備校の担任で外大の先輩でもある堀江さんという方の勧めでした。「東京外国語大学だからこそ学ぶことのできる言語はないか」という私の質問に対する彼の答えの1つが「ラオス語」だったのです。「ラオスかぁ~。え…、因みにそれはどこの国ですか?」お恥ずかしながらこれが私のラオスに対する初めての発言です。担任にも本当に外大志望なのかと笑われてしまいました。しかし、正直に述べます。これが私とラオスとの出会いです。

 

ラオス語を専攻しているとはいえ、上記の通り、私も初めはラオスについて何も知りませんでした。地図上での位置さえもです。ですが、この日を境にラオスについて調べるようになったことが私の進路を決定づけました。社会主義国であること、多民族国家であること、東南アジアの中で雄一海のない国であること、ラオス文字という固有の文字を有すること…。全く知らない国であるという事実が逆に私を魅了しました。仕事の都合でラオスを訪れた経験のある母親が現地の人々の温厚さについて語ってくれたことも私の関心をより高めてくれました。

メコン川に沈む夕日

 

ラオス語ってこんなに面白い!!!

ラオス語はSVOを基本語順とする孤立語です。孤立語とは単語が実質的な意味のみを持ち、それらが孤立的に連続して文を構成する言語の種類のことで、名詞・動詞・形容詞に限らず語形変化を伴いません。例えばຂ້ອຍໄປໂຮງຮຽນ(私は学校に行く)という文はຂ້ອຍ(私)/ ໄປ(行く)/ ໂຮງຮຽນ(学校)という個々の単語の連続により成り立っています。

 

文字が書き慣れないものである点や多義語が極めて多い点、声調(語義を区別するための音の高低・昇降の変化)が地域により5、6つある点に難しさを感じますが、単語と基本的な語順をしっかりと学習すれば早い段階から文章を作成できるため勉強しがいがあります。また、単語を覚えれば覚えるほど会話における表現の幅が広がるので楽しいです。1年近く学んでみてラオス語の肝となる部分はやはり声調だと感じているのですが、ໝູ່(友達)の声調を一歩間違えるとໝູ(豚)になってしまう辺り、面白いと思いませんか

 

私とアセナビとの出会い

同じサークルに所属する先輩がイベントに誘ってくれたことでアセナビを知りました。ASEANとの関わり方はインターンや旅行、長期・短期留学等人それぞれであれ、メンバーもイベント参加者も全員がASEAN諸国に対する何かしら熱い想いを有していることに感化されました。こんなにも熱く語り合える関係をイベントの場だけで終わりにしたくないと強く感じたことがアセナビに入ろうと思った1番の動機です。

 

また特定の国・地域の社会問題や文化をテーマとした講演会に足を運び、拝聴した内容をまとめることが私のちょっとした趣味なのですが、アセナビの主な活動の1つであるインタビュー記事の作成を通じて、持っている力を発揮できるのではないかと考えた点も加入を決断する動機となりました。

ラオス国立大学日本語学科学生らとのご飯会

 

最後に

この記事の冒頭に少し触れた通り、2月下旬から3月上旬にかけてラオスの首都ヴィエンチャンに行って来ました。異文化をその国・地域のことばで学ぶ面白さを肌で感じた2週間でした。滞在中、大衆食堂や道端で物乞いを目の当たりにするなどラオス社会の影を感じる面があったことは事実ですが、それ以上に現地をゆったりと流れる時間美しい景観人の温かさにすっかり魅了されてしまいました。日本に帰国してからはボランティアやスタディツアー、留学等何らかの形で再びラオスに行く手立てがないかを捜す毎日です。

ラオス語を専攻し始めてから私の周辺ではラオスに興味をもってくれる友人や知人が増えています。「ラオスはどこにあるの?」「ラオス語で〇〇は何て言うの?」「ラオス料理ってどんな食べ物?」等々…。私はこうした質問すべてがラオスという国を知ってもらう絶好のチャンスだと捉えています。私自身まだまだ知識不足な点も多いですが、言語を専攻している身として、やはりその国に関心を持ってくれる人が増えることは大変嬉しいです。ラオスを全く知らない人も、多少の興味・関心がある人も全員が惹きつけられるような情報を積極的に発信し、アセナビでラオスのことといえば私だと言ってもらえるような存在になりたいです。どうぞよろしくお願いします!