2016.02.03

大学時代の就職活動で一度立ち止まり、一番苦手な英語に挑戦することを決意した渡辺さん。フィリピンへの語学留学でTOEICを250点から705点に上げ、その経験を生かしてシンガポールのドイツ系企業に就職。現在は昇進され、2年目にして多国籍の部下を率いるマネージャーをされている。自分でも予想していなかったという今までのご経験を、詳しく伺った。新卒海外就職特集

《プロフィール|渡辺成明》
1990年千葉県生まれ。
大学在学時に就職活動をするも失敗。大学卒業後、英語が全くできない状態(TOEIC250点)から7ヵ月間フィリピンで語学留学をし、TOEIC455点UP。その後、新卒でドイツIT企業のシンガポールオフィスにて勤務。マニラオフィス立ち上げ業務等を経て、現在は最年少Supervisorとして多国籍のチームを束ねる。在シンガポール暦約二年。
趣味は旅行。東南アジアに魅了され、年間10回ほど旅行をし各地を訪れて現地の様子や人、食と触れ合うのが好き。

 

フィリピンからシンガポールへ!海外就活の方法とは。

—なぜ海外就職をしようと思ったのですか?そのきっかけを教えてください。

写真③

大学3年の時、なんとなく周りと一緒に就職活動をしたんです。ただ、学生時代に特別なことをしたわけでもありませんでしたし、自分が何をやりたいか、何が得意なのかもよくわかりませんでした。

「かっこよさそう」というだけで、ITの広告会社の面接を受けてみたんですけど、全然上手くいかなくて。その時に一回立ち止まって、このまま就活していてもだめだなあと。

じゃあ何をしようかと考えた時に、挑戦しようと思ったのが英語の勉強でした。その時、英語が一番嫌いで苦手なものでしたが、あえてチャレンジしてみようと思って。自分の強みになるだろうし、就職にも有利だろうし。

大学を卒業してから、そのままフィリピンのセブへ語学留学しに行きました。セブに行く前は全く英語ができず、TOEIC250点だったのですが、7ヶ月勉強して、705点まで上がりました。

 

ー苦手意識が無くなったんですね。

留学が終わり就職のことを考えた時、滞在する中でフィリピンの勢いを肌で感じたこともあり、「海外、特にアジアで働きたい」と思いました。でも新卒だったので、いずれ行くにせよまずは日本の企業で働くのが一番なのかなと。

どうしようかなと悩んでいた時に、知り合いがたまたまSNS上で今の仕事の募集を見つけ、紹介してくれたのです。

仲介している人材紹介会社に連絡すると、シンガポールのドイツ企業でのオフィス業務とのことでした。

その時思ったのは、「いずれ海外で働きたいなら今働いてみるのもありだな、そして単純に面白そうだな」ということ。それに、新卒からシンガポールで働いている日本人って今まで聞いたことがない。一番の決め手は、今自分が行けば面白い人材になれるんじゃないかな」とも思いました。

シンガポールには旅行で一泊したことがあるくらいでしたが、新しい環境が好きですし、決めたら突き進むタイプなので、ワクワク感の方が大きかったです。

写真② スタッフたちと(スタッフたちと)

—応募から採用まではどのような流れでしたか?

まず、人材会社経由で応募をし、日本語と英語でレジュメを用意しました。書類審査を通った後、筆記試験がメールで送られてきます。性格診断と、業務処理のスピードを図るテスト、また英語のメールに対して英語と日本語でどう返信するかというテストがありました。

筆記試験を通り、面接はすべてスカイプで3回行いました。日本語で日本人の人事、日本人のマネージャーとの面接、その後日本人以外のマネージャーとの英語面接です。この3回の面接は、1日でいっぺんに行われました。筆記試験、面接を合わせても2時間くらいですね。

応募したのが3月頭くらいで、2日後には面接、3日後くらいには合格通知がきました。

求人を知ってから1週間以内に決まりましたね。そこからビザの手続きなどがあり、4月の頭に現地に行き、働き始めたのは4月14日からでした。

 

—すごいスピード感ですね!何か対策はされていましたか?

語学学校の先生にレジュメの添削をしてもらったくらいで、対策は特にしていませんでした。英語面接があるということは聞いていなかったんです。ただ、経験の無さをカバーするために、セブで語学学習したことを話しました。7ヶ月で何時間勉強して、何点上がり、それを仕事にどう活かすことができるかということを説明しましたね。

例えば、目標に対して逆算し、達成できる点をアピールしました。決められた期間に対して目標設定をする。自分の現状を見て、何が自分に足りていないのかをしっかりと認識する。そしてそれに対して、限られた時間から逆算し目標を達成する語学学習の中で実践したことを仕事においても活かすことができると話したら、評価されました。

実は今、僕は面接する側になったんです。エントリーポジション(特にスキルが要求されないポジション)を募集する立場にいるのですが、外資はポジションによって求人が決まるんですよ。だから僕が見ているのは、その人がそのポジションにどれだけ適正があるか、貢献できるかという点。

これから就職活動をする人に知ってほしいことですね。

 

海外の外資系企業での働き方とは?

—具体的な仕事内容を教えてください。

渡辺さん①

弊社はアウトソーシングの事業を行っていて、IT企業・政府機関や教育機関向けのライセンスの管理をしています。

基本的にはバックエンドのオフィス業務で、1日オフィスで働いています。部署は日本の市場向けなので、契約の締結処理や、受注をしています。

例えばライセンスを学校が使いたい場合、代理店に申請をして契約書を作成、弊社で受領し、弊社で社内のライセンス登録を管理するアプリケーションを使って登録を進めていくといった具合です。

オフィスは全体300人くらいで、日本人は5、60人いますね。台湾人、マレーシア人、韓国人の日本語スピーカーもいます。弊社はアジア全体の市場をカバーしており、日本のマーケットは大きく特殊なので、日本語スピーカーを雇う必要があるのです。

社内コミュニケーションは基本英語ですね。マレーシア人、台湾人、韓国人、フィリピン人、インドネシア人、インド人など様々な国籍の人がいるので、ミーティングも、社内のメールも全て英語です。

 

—本当に多国籍なんですね。雰囲気はどのようなものでしょう?

風通しは良いですが、弊社は人間関係がすごくドライです。仕事が終わって飲みにいくこともなければ、朝来て挨拶もないです。

国によって気質の違いはありますが、色々な国から来ているので、お互いに譲り合っています。日本だったら外国人の方が圧倒的に少ないので外国人が日本人に合わせると思いますが、弊社は多国籍なのでそれぞれが合わせていますね。

シンガポール人は、就業時間になった瞬間にパソコンを閉じて席を立ちます。日本人は残っている人が多いです。

会社によって残業代が出る、出ないはありますね。弊社の場合シフト制なので、仕事が伸びた分が次の月の休みになります。外資の場合、その辺もシステマチックになっていると思います。

写真④シンガポールオフィスにて(シンガポールオフィスにて)

 

—日本の同年代の友達と話していて、働き方に違いを感じることはありますか?

友達と会って話を聞くと、生産性のないような仕事をしているなと思ったことはあります。目標設定しない会議だったり、営業といっても、事務処理などの仕事が広範囲に渡っていたり。

外資はシステム化されていて、個人のポジションの仕事しかありません。以前フィリピンの語学学校で驚いたことがあるのですが、英語の先生は「先生」だから、教室を掃除しないんです。あくまで先生だから先生の仕事しかしない、という考え方ですね。同じように、外資ではそのポジションの仕事のみ。

ただ、同じポジションで長く働くと、狭い範囲の仕事を長く続けることになります。

また、日本はちゃんと評価されるのが難しいと感じます。勤続年数が高い人が有利ですよね。この面では日本企業と大きく異なっているため、なんでそんな昇進できたの?と日本の友達にはよく聞かれます。

僕は効率がいいと思ったやり方を考え抜き、どんどん上司に提案していました。でも、日本の友達にそれを言うと「上司に言っても、今までのやりかたでやれって言われるだけだよ。」と。

まだ日本市場は大きいので給与も守られていますが、他の国との差は今後、縮まってくるでしょう。社内の外国人日本語スピーカーを見ていて思います。

写真⑤ヨーロッパ・アメリカオフィスから集まった社員たちと(ヨーロッパ・アメリカオフィスから集まった社員たちと)

—ビザや、お金のこと、現地での生活について教えてください。

会社がビザを用意してくれますが、会社の人事にはビザが取れない場合もあると言われていました。シンガポールの場合、ホワイトカラーの職種は大学を卒業していないとビザは出ません。

シンガポールの日本人の最低賃金は結構高くて、ビザがとれさえすれば日本の新卒より稼ぐことができます。

それにシンガポールはほぼ税金がないんですよ。税金は1年に1回払いますが、誤差と言っていいくらい低い割合です。だから、月々は額の100%もらえる。お金は貯まりますね。

ただ、家賃は高いですね。現地採用の場合は家賃補助が出ないので、自分で払わなければいけません。シンガポールでは、一家族用のマンションをオーナーが買って、空いている部屋を貸すということが多いです。僕はトイレとシャワーつきの部屋を一部屋借りていますが、リビングなどは普段オーナーがいるので別に使うこともありません。それでも、日本円で9万円くらいしますね。

 

安いものもあります。ローカルのご飯は日本円で320円くらいですし、電車やタクシーなどの交通費は安い。でも、贅沢をすると高いですよ。日本食だと、ラーメンと替え玉を頼んだら2000円くらいします!

シンガポールは、何もすることがないんですよ。暇です。(笑)シンガポールにいる日本人はみんなそう言いますね。とういうのも、狭いのと、新しい国なのでカルチャーが育っているわけでもないからです。

趣味は、ジムに行くこと、英語の勉強、カフェに行って本を読むことですね。ちょっと前はサイクリングもしていました。どこも道がきれいで明るいので良いですね。

あと、三連休になると必ず海外に行きます。僕の所属しているチームは日本の市場向けなので、日本のカレンダーに従っていて、日本と同じだけ休日があります。

外資なこともあり「有給を使い切れ」と言われるので、休みをとって行くこともあります。先週末もマレーシアに行きました。今年だけで10回ぐらい海外に行っていて、旅行するには便利な場所だと思います。

 

予測できない未来を、つき進んでいく。

—海外就職して良かったと思うこと、メリットはありますか?

写真⑧

まず、一年目から海外出張に行けたことです。

マニラに3ヶ月行って、新部署の立ち上げをしました。出張ではマネージャーとして働き、日本人は一人でしたね。ヨーロッパやアメリカなど、他の国の支部から来た人たちと一緒にプロジェクトを進めていきました。

最初の1ヶ月は、フィリピン人に仕事を教えていました。その後のマニラオフィスへ仕事の移行のための支援を行うという形で。

あと、こちらには煩わしい人間関係が全くないんですよ。年上の人に気をつかったり、会社の飲み会だったり、日本では色々あると思いますが、今仕事上で人間関係のストレスがないんです。

また、2015年11月に昇進し、入社して約1年半で、10人弱のチームのマネージャーになりました。しかも部下はほとんどが年上で、多国籍です。この早さでこの年でのこういった経験は日本で働いていたら絶対にできないと思います。今までは自分の結果を出せれば良かったのですが、価値観が違う人たちを同じ方向に導かなければいけないという難しさはありますね。

写真⑦マニラオフィスにて(マニラオフィスにて)

—大抜擢ですね!マニラのプロジェクトには、どのようにして選ばれたのでしょう?

上司には、経験は劣るが、ポテンシャルがすごくあると言われました。なぜ上司がそう思ったかというと、僕は何かある度にいつも手を挙げていたんですよ。その中で結果を出してやってきていたということがあります。新しいことをやるとき、マネージャーが人を募るのですが、結構みんな嫌がるんですよ。その中で一人手を挙げていましたね。

 

—苦労した点はありますか?

前述のマニラのプロジェクトは、本当に大変でした。特に英語の面ですね。アイルランドやアメリカオフィスから同じプロジェクトで来た英語ネイティブを相手に、会話をしなければいけない。

また、週2回skypeでのミーティングがあるんですが、シンガポールオフィスから参加するのは僕だけ、唯一のアジア人、という場面が何度もありました。

ヨーロッパやアメリカオフィスから僕にガンガン質問が来て、それに答えなければならない。ネイティブ相手に僕しか答える相手がいないという状況は死ぬほど大変で、寝付けないときもありました。

でも、辛くても自分しかいないので、やるしかない。僕はあんまりネガティブに考えないんですよ。

海外就職すると全部が新しいことなので大変ですが、僕は新しいことを楽しんでいます。全部自分が選択したことで、それによって今がある。常に「やるしかない」と思っています。

 

—描いている今後のキャリアを教えてください。

写真⑥

予測できないですね…。

僕は、ここ3年ぐらい未来を予測できない人生を歩んでいるんですよ。就職活動を急に辞めて語学留学、急に英語ができるようになり、その後急にシンガポールに就職。マニラに行き、マネージャーにもなった。自分でも予想できない変化ばかりです。

僕はシンガポールでエントリーポジションで入って、ひたすら仕事を頑張ってチャンスを狙っていたんです。それが運良く先日達成できた。だから、今後の目標は模索中です。まず、マネージャーとしてうまく仕事を回せるようになりたいですね。

このまま経験を積んでいけば、1、2年後には人材として評価されると思うので、転職するにしても昇進するにしても、今以上にチャンスは広がっていると思います。

 

—海外就職に興味があるけれど、迷っている人に対してメッセージをお願いします。

僕は、実は新卒で海外就職は勧めないです。

理由は一番に、海外で新卒から働いたからといってその後、日本で評価されるかどうかは正直わからないからです。まだ事例が少なく不透明ですね。

二番目は、海外と日本とは環境が全然違うので、人によって向き不向きがあるから。向いていないと思って2ヶ月で帰ってしまったら日本で仕事を探すのも大変になると思うんですよね。

日本だったら相談する友達がいて普段と同じ生活ができますが、海外だと全くそうはいかず、ストレスがたまりやすいです。また日本は年功序列だけど、外資は実力主義で、数字で評価が決まります。挑戦してみるのは一つの手ですが、向き不向きは考えたほうが良いですね。

ただ、興味があって、自分が向いていると思うなら、チャレンジしてみるのは面白いと思います。憧れとか勢いだけではなく、しっかり自分で考える必要があるのではないでしょうか。

 

【編集後記】
渡辺さんがおっしゃるように、新卒で海外就職するということは、先行きが不透明であることは否めない。しかし、渡辺さんは海外の外資系企業という環境で、着実に結果を残されている。自分で決めたことに対する覚悟を持ち、前向きに果敢に挑戦していける人にとっては、むしろ日本国外の方がのびのびと働ける場所なのかもしれないと思った。

 

新卒海外就職特集とは?
本当に納得できる道を選び、前に進んでいくために、従来のいわゆる「就職」だけではない様々なキャリアの形があり、その中の一つとして海外就職や起業という形があるということをお伝えできればと思っています。

参照:【新卒海外就職特集】新卒で”ASEANで働く“方々のインタビュー特集、はじめます。