2016.01.08

海外に対する覚悟が違う、と語る徳重氏。自信の裏付けである仕事の仕方の違い、アジアに進出することへの覚悟と、アジアに行きたい若者が増えつつある中で現代の若者に潜む問題とその解決策を聞いた。

《プロフィール|徳重徹氏》
Terra Motors株式会社代表取締役。 1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。 住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画に従事。 退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。 2010年4月に電動バイクのベンチャー企業、Terra Motors株式会社を設立。 設立2年で国内シェアNO.1を獲得し、ベトナム、バングラディシュ、インドに現地法人を設立。世界市場で勝てる、日本発のメガベンチャーの創出を志す。 世界最大の企業家コンテスト「TiE50 2013」でWinnerに。 著書に『「メイド・バイ・ジャパン」逆襲の戦略』(PHP研究所)がある。

 

イノベーション×グローバル!EVをアジア新興国へ!

起業して、なぜ二輪・三輪のEV(電気自動車)の事業を、アジア新興国で行っているのでしょうか?

徳重さん1

起業する際に「グローバル」「イノベーション」をポイントにしました。なぜかというと、大学のとき、ホンダやソニーなどといった戦後のベンチャー企業が好きで、彼らは世界を見据えて戦い、実際に世界を変えたからです。それを見て、自分の好きなテクノロジーの分野で世界を変えたいと強く思ったことが原点です。

EVは100年続いたガソリンエンジンにとって代わり、環境に良い車として自動車の業界構造が大きく変わる技術だと感じました。そのダイナミズムの中で私自身が起業家としてこのテクノロジーでどれだけ勝負できるか、身を委ねるほどの衝撃だったです。

二輪・三輪自動車の事業をやろうと決めて、そのうえで市場を見たところ、アジアに集中していたことから、アジアでこの事業をやろうと強く考えるようになりました。

FireShot Capture 37 - Xe điện số 1 Nhật Bản I Terra Motors Vietnam - http___www.terra-motors.com_vn_
企業HP。ベトナム語やクメール語も選べるサイトになっている。)

 

誰に対して、どのような価値を提供したいと考えていますか?

三輪は「政府の視点」「顧客の視点」、両方の構図があります。

顧客視点でいえば、コストが安いことにつきます。EVはイニシャル価格がガソリンエンジンよりも安く、今では徐々にタクシーで使ってもらっています。

インドやバングラデシュなどでは、決して裕福ではない人が乗っている三輪自転車タクシー(リキシャー)って労力的に大変なんです。でもタクシーやモーターなどのEVになれば、費用や労力を軽減し、収益を上げられる手助けができるのです。

また政府の視点で言えば、ゼロ・エミッションやエネルギー効率といったマクロな環境要因を配慮したうえで電動化のメリットを説くと、参入しやすくなりますね。

 

海外と一緒に仕事をする極意

海外で働くにおいて、1番大事なことはずばり何ですか?

徳重さん3

現地のニーズを満たすかどうか、これに尽きますね。ヒアリングをしつつ、日本人と現地の両視点でものを見て、作って、売ること。これには現地の人の協力が欠かせません。

例えば、EVバイクが走る上では不要な部品も、”デザイン面で受けがいい”という理由で残したほうがいいい場合があります。そういった日本人感覚では見落としがちな、細かい面を配慮する必要があるのです。同じベトナムでも、あたかも別の国のように北部のハノイと南部のホーチミンでは嗜好性が全く違います。本から知識を得られても、実際にビジネスしてみて、売れなかったら意味がありません。

日本人が苦戦している理由の一つですが、新興国では価格がとてもシビアに見られます。価格面でいえば、私が心がけているのは「15%の価格で50%の品質を」です。『リバース・イノベーション』という本からの借用ですが、日本人に比べて現地の人は品質にそこまでシビアではなく、価格には日本人以上に敏感です。バイクも日本人が乗っているようなきれいでかっこいいものである必要はなく、どれだけ安く乗りこなせるかが大事。日本では100万円くらいするものを20万円で売らなければ勝ち残れませんね。

 

―徳重さんは「4倍速で働く」という感覚を大事にされていると聞きました。

昔、ある雑誌に「言われた内容の二倍の量を半分の時間でやるようにしていた」と書かれていたのを目にしました。要求された仕事に対し、2倍の成果を半分の時間で行うということで、4倍速になりますよね。弊社の仕事もそうでなければならず、一般の仕事とは全く違います。シリコンバレーに行った時も事業のスピードが早く、「ドッグイヤー」(犬の1年は人間の6~7年に相当することから、6~7倍速を意味する)とたとえられていました。そうでなくても、1ヶ月だと思われる量を1週間でやったら、およそ4倍速ですよね。そうした濃い内容で週に1回営業会議をするのですが、たまたま見学に来た商社の人がその報告の量に驚いていました。

スピードが遅くなる原因として、無駄な書類が多いと感じることが度々あります。経営者としてお金の動きや手間をどうしても考えますが、スピードを犠牲にするほど割に合ったものではないように感じていて。そうした無駄や減点法などの評価システムによって、日本から新しいチャレンジ精神やダイナミズムが失われることが本当に怖いです。

 

新規の国に行く時に、心がけていることはありますか?

ビジネスをする際の問題を俯瞰的に見て調査することです。市場があるのか。顧客はだれで、競合はどこか、パートナーとしてどこを選ぶか、ライセンスや政府の規制など障害になるものは何か。そのような問題をいっぺんに見ています。

また、スピードも重視しています。Linkedinを使用してインドのTATA投資部門の社長にアポイントを取り、会って話して、次にどうするのか?やるならやるで、パートナーとして組むのか?を、どこよりも早いスピードで決定し、二歩目を早く動かしています。だからバングラデシュでヤマハみたいな会社とジョイントベンチャー(合同出資会社)を作り、テラモーターズが51%の持ち株比率で事業を行えると思っていて。語学は大きな問題ではなく、ちゃんと納得させて一緒にビジネスできるかが重要なのです。

 

海外から見た「日本」の立ち位置とチャレンジ

「日本」という大枠で語ることが多いと感じましたが、その視点はいつからなのでしょうか?

徳重さん4

アメリカのシリコンバレーに出てからです。そこで仕事をしていくうちに、日本人のすごいところ、ダメなところを同時に感じました。すごいと思ったのは、ちゃんとやること、謙虚であること、思いやりにあふれていること。まだまだだなと思ったのは、蛮勇さにかけていること、アグレッシブでないことです。これから日本人として負けたくないから、もっとがつがつ海外に出て挑戦してほしいと思います。

 

日本人として、海外でビジネスを行っていくことに対し、どのような印象を受けていますか?

日本人はよく”NATO”と言われるそうです。”No Action Talk Only”の頭文字を取った造語で、口ばかりで行動(=ビジネス)に移さない、と揶揄されています。も

っとも、私からすればTalkすらせずにResearchのみで、帰国して報告書を書いて終わり、という印象を受けます。

現地を訪問し、1回目で何かするかしないかが勝負です。特に日本の大企業だと、意思決定が遅く、実行に移したとしても時間がかかってしまいます。そんな相手なんか、受け入れて話をきいてくれた企業からしたら、迷惑でしかありません。そんな日本の企業イメージの中でぼくらが来た。コミットメントを見てくれた現地企業からは、すごく嬉しがられました。

 

「本気」を支えるサムライたち

御社が求める人材とは?

徳重さん2

いわゆるグローバル人材としての人材はよくわかりませんが、「コミュニケーション能力」「ダイバーシティ(多様性)への許容」「不確実性への許容」が挙げられると思います。

しかし何よりも重要なのがメンタルです。新興国に行くと孤独になり、どうしても不安になってメンタルがやられがちですが、それでもあきらめずやっていく継続力が必要です。海外に出張している駐在員、日本企業でいう課長レベルの人には週末にゴルフをするなどかなり気楽な生活を送っている人もいますが、私らはそんな人ではなく本気でコミットして戦える人がほしいです。彼らのように、アジアに出てくる人にもそうなのですが、今の日本には「本気」のレベルが欠陥しているように思えます。韓国企業の勢いがすごいのはコミットメントが密で、海外に出たら10年はいると聞いたことがあります。片道切符のようなもので、「海外に行くこと」に対する「覚悟」が違います。当然現地語もペラペラになって帰ってきます。ベトナム語、すごく難しくてそこで骨を埋めるくらいでないと習得できませんよ。(笑)

よく「アジアで働きたい」と言っている人がいますが、いきなり行っても無理があります。日本で無理なのに、海外じゃ絶対に成功しません。そういうわけで、私らの会社ではまずは1年くらい日本でインターンをしてもらい、フルに仕事をしてもらっています。日本で下積みを施した後、インターン経由で私らの会社に就職したうちの4人くらい卒業と同時か、卒業前に海外に行っています。直近でいうと、中央大学法学部の学生は9月で単位取れたから、インドの田舎に行ってすでに仕事を始めています。

 

今の若い人に思うことはなんでしょう?

エッジが利いていると思います。昔に比べてやる気のある若者は減りましたが、その変革者たちは英語ができて、本も読み、ロジカルシンキングも身についているなど、とても優秀だなと感じます。

しかし就職先である大企業の就職先人気ランキングは昔からずっと変わっていません。大企業に行くのが、ほんとうにいいのかどうか、みんながいいと言うのは本当に自分にとっていいのか、もう一度考えてみてください。そうした大企業にずっと勤め上げ、45歳くらいの人でハッピーな人はあまりいないように感じます。もっと自分のやりたいことに対してコミットしてほしいです。自分が大切にする軸を持ってください。私の場合は「グローバル」と「イノベーション」の2つです。それを持って、それを自分のやりたいこととして仕事できる会社に行くことを考えてみてください。そういう意味でも、ファーストキャリアはすごく重要です。大事に選んでください。仕事をする上での「基準」がその会社の色になります。先輩などを使ってうまく情報収集をしてください。

 

就職ランキングだけを見て会社を選ぶことは、確かに視野が狭いことだと思います。でも一方で、「一旦は大企業に入っておいたほうがいい」ということもよく言われています。そのことについて、どのようにお考えですか?

就活で大切なのは、自分の軸を持って、その軸に当てはまる会社を選ぶことです。自分が納得するのなら大企業に入ってもいいと思いますが、軸によっては大企業だと自分のやりたいことが叶わず、時間が無駄になる可能性もあります。

アセナビの読者の皆さんなら、なるべく早くアジアへ行きたいという軸を持っている方もいらっしゃるでしょう。そうであれば、大企業ではなくベンチャーや現地法人に行く方が自分の思いを叶えやすいです。自分の軸をしっかりと持ってください。

ビジネスマンとしての「常識」は新卒に入った会社の色で形作られます。いったん形作られると、矯正するのは難しいです。私たちのところだと、自分の持てる力を120%出し切って、成長したいという軸がないとマッチしないでしょうね。

 

そのために今、ぼくらができること。

どうしたら自分の軸を持つことができるでしょうか?

徳重さん6

海外に行くと、「あなたは何者ですか?」と聞かれることが多いです。欧米の子供は「自分は何を大事にするのか」ということを日常から考える機会を多く設けられていますが、残念ながら日本人の子供にはそういう機会は多くない。でも考えるきっかけは周りにいくらでもあります。諦めずに考え続けてください。

そして、そこで出た結論をもとにそれに近いことをチャレンジしていく。チャレンジしないと自分は何が好きなのかわからないです。やってみて、違かったら考えて行き先を変えて、またチャレンジする、まさにPDCAサイクルを回していくのが一番大事です。

たとえば、仕事よりもプライベートが大事ということを掲げた生き方でもいいんです。その場合は転勤が無い会社や、地元の大手企業に就職して安定した生活を送る選択がベストでしょう。何を大事にするか考えて、行動に移してください。

 

アジアに目を向けている若者に対してのメッセージをお願いします!

ビジネスでも私生活でもそうですが、60%OKだったらGOしてください。日本人で60%くらいのものだと、同じものでアメリカ人は70%、アジア人は80%くらいOKだと判断するほど、日本はグローバル標準とずれているのです。感覚的にずれがあることを含めると40%くらいでGOしてもいいくらいです。戦後や明治時代に生きて日本を変えた立役者や今のソニーを創業した盛田さん(現:経団連代表)もそのくらいの感覚で進み、やりながら考え、学んでいったように思います。そういう意味で古き良き時代(特に明治時代や戦後の人)の古典や伝記を読み、考えていくべきでしょう。

彼らみたいな、戦っているひとだからこそ、わかることがあります。戦っている人の言葉は重いものがあります。そのころの日本の気持ちを忘れず、蛮勇を以てアジアに臨んでください。