「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」オンライン英会話で日本人のチャンスを増やしていく レアジョブ代表取締役社長 中村岳氏

2015.11.28

いまでは市民権を得た“オンライン英会話”。その元祖とも言えるサービスが「レアジョブ英会話」だ。昨年東証マザーズ上場を果たし、現在代表取締役社長を務める中村岳氏に取材を敢行。ネイティブレベルの英語を目指すのではなく「大切なことは、自分の伝えたいことが相手に伝わるかどうか」と話す同氏に、その想いとASEANで働くことについて伺った。

《中村 岳氏|プロフィール》
株式会社レアジョブ代表取締役社長。
2005年東京大学大学院情報理工学系研究科修了。NTTドコモ研究所を経て、2007年中学高校の同級生とともに株式会社レアジョブを設立し、 代表取締役最高技術責任者に就任。
「日本人1,000万人を英語が話せるようにする」をミッションに、Skypeを利用したオンライン英会話事業 を行う。講師はフィリピン人で約4,000人が在籍。毎日14,000レッスン以上を提供し、累積会員数は40万人以上で業界最大。2014年6月東証マザーズ上場。2015年6月代表取締役社長に就任。

 

オンライン英会話の火付け役「レアジョブ」とは?

―「オンライン英会話」という画期的なシステムは、どのように生まれたのですか?

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元々、日本の英語教育に対して問題意識を持っていました。中学生からずっと勉強しているはずなのに、文法や読み書きが中心であるため、実際に英語を話せる人が少ないという点です。大学生の時、英語力は話せば話すほど伸びていくと身をもって感じていました。だから、英語を習得するには、学習を続けること、たくさん話すことが必要なんです。

それまで、英語を話せるようになりたいと思う人の多くは、英会話教室に通っていました。しかし、英会話教室って授業料が高いですよね。にもかかわらず、話せる時間も限られているし、わざわざ教室まで通わなければいけないとなると、あまりに障壁が多すぎます。

ちょうどこのサービスを始めようと思った2007年、Skypeが世に出始めたときでした。Skypeを利用したサービスを考えれば、私自身で日本におけるこの英語の課題を解決できる可能性があると確信したことが、起業のきっかけです。

 

―最近は様々なオンライン英会話が台頭してきていますが、レアジョブならではの強みは何ですか?

まず、講師の数が圧倒的に多いことです。多ければ多いほど、あらゆるトピックスに対応できる人や、専門に特化した人を用意することが可能です。例えば、医学系の場面で英語を使うシチュエーションがある生徒さんには、その専門分野に精通している講師が対応した方が話も弾みますし、より実践的な英語を使うことがですよね。

あとは、独自のカリキュラムを用意しています。英語学習は継続しなければ意味がありませんから。そして継続のためにはモチベーションの維持も大切なので、自分の英語力が見えるよう、スピーキングテストなども、カリキュラムに組み込んでいます。英語力を上げていくためには、3000時間の学習が必要です。中学高校の時点で、すでに1000時間学習していると言われているので、残りの2000時間もしっかりと学習できれば十分な英語力を身に付けられます。

 

―その優秀な講師陣、どうやって選抜するのですか?

英語力はもちろんですが、最も重視するのは、「英語を教える熱意」ですね。その熱意さえあれば、教えるスキルはぐんぐん伸びていきます。面接をすれば、その熱意は伝わってきますからね。講師に熱意があれば、生徒さんにもそれが伝わるはずです。

 

フィリピンで起業をするということ

―なぜ、フィリピンを選んだのですか?

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フィリピンにこだわっていたというわけではありません。給与が安く、英語を話せる人が多い国ということに重きを置いていて、その条件に見合ったのがフィリピンでした。マレーシアやシンガポールも英語を使用する国ではありますが、元々イギリス英語の名残があります。インドだと、なまりが強すぎてしまいます。

日本人が親しみ深いのは、やはりアメリカ英語。フィリピンはその面で、日本人にわかりやすい英語を話します。公用語としても使われているため、英語が知れ渡っています。

今後スケールを大きくしていこうとするなら、どれだけ質の高い講師を確保できるかが最も重要です。その理由から、フィリピンが一番適していると判断しました。

 

―多くのフィリピン人とともに働くうえで、大切にしていることはありますか?

「フィリピン人だから」ということは特にないですが、信頼関係を築くことが大切だと考えています。これは、日本にいても同じことですよね。信頼関係を築くためには、互いに約束をきっちり守る。これはどこの国にいたって通ずること。

例えば、我々もどんな状況でもしっかりと講師に対して給与を支払うこと、間違えたときには真摯に対応すること、当たり前のことかもしれないですが、それをしていくことが大事なのです。それと、信頼できる人を採用して、いい関係を築いていけるように意識しています。

それでもやはり、文化の違いというのは難しいですね。例えば、面接は100人のアポイントをとっても、実際に来るのは50人だったりすることもあります。あと、どんなに信頼できる人を選んでいても、やはり遅刻や欠勤、途中で来なくなってしまう人がいるのも事実。そういったことはある程度前提とし、対応していける仕組みを作っています。そういう意味でも手厚い講師陣をそろえ、いつでも日本では起こりそうにない事態にバックアップできるようにしています。あらかじめ前提だと思っておけば、事前に対策をとることができるので、やはり文化の理解は大切ですね。

加えて、文化の重きがどこにあるのかを意識することも必要です。フィリピンにはカトリックの方が多いです。生活に宗教が根付いていることを理解し、会社としてクリスマスパーティーを開いたりしています。自分たちが外国にいく以上、現地の文化に合わせることは当たり前のことですね。

 

レアジョブが目指す英語教育とは?創設者の思いは如何に・・・。

―サービスミッション“日本人1000万人を英語が話せるようにする”というのが達成された場合、具体的にどのような可能性が日本人に広がりますか?

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まずは個人として外国人に色んなことを発信できるようになり、日本のこと、自分のことを知ってもらうことができると同時に、色んなことを吸収できるようになります。例えば、外国に行った際に、現地の人とコミュニケーションをとれるようになるだけで、もっと奥深いことを知ることができるかもしれません。

そして企業にとってのメリットとしては、国際競争力が上がることです。企業内で英語が通じるようになれば、外国から優秀な人材を採用することができます。海外には優秀なエンジニアもたくさんいたりしますしね。このように多様な人材を持つことで、日本の企業が海外展開をしようとするときに、より専門に特化した人を連れていくことができ、企業にとっても可能性が広がります。

 

―「英語が話せる=ネイティブスピーカーのような流暢な英語を使いこなす」というイメージがあるのですが・・・

そのレベルを求める必要はありません。一般的なビジネスマンであれば、日本人独特の発音でもいいのです。

大切なことは、自分の伝えたいことが相手に伝わるかどうか。言いたいこと、伝えたいことがしっかりあることがビジネスマンとして大事なことです。それは、日本にいても同じことですよね。まずは、一対一の対話からはじめ、徐々に一歩ずつ段階を踏んでいければいいのです。だからこそ、最初に一歩を踏み出す勇気が肝心でしょう。

 

今、わたしたちにできること。

―ASEANでビジネスを始めようとしている人へのメッセージをお願いします!

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アジアと絡めた仕事をすることはとても面白いです。新興国をはじめ、経済成長が著しい国は、成長につれてどんどん物価が高くなっていきますよね。

例えば、日本でお金を貯めても将来的にあまり価値は変わりませんが、フィリピンの場合、貯めてもお金の価値が下がっていくだけです。だからこそどんどん使っていかないと、という考え方で動いています。考え方に違いがある中で、激しい変化に対応していくことは、楽しいことです。

 

―学生のうちにやるべきことは何だと考えますか?

第一に、「海外に出ること」です。これは視野を広げることに役立ちます。色んな世界があることを時間があるうちに見ておくことで、物事を多角的に見られるようになるでしょう。

第二に、「英語を勉強すること」です。(ぜひ、レアジョブ英会話を利用してみましょう!)先ほども述べたように、完璧な英語を求める必要はないけれど、自分の意見を伝えられる英語力はこれから必ず必要となります。アジアでビジネスをする場合、どこの国も第一言語が英語なわけではないのです。だからこそ、ネイティブのように喋れるようにならなきゃと気負いする必要はありません。

そして最後に、「エンジニアリングスキル」を身に付けておきましょう。例えば、今の時代ならホームページは、簡単に作り、アレンジすることができます。基本的なプログラミングくらいは、自分でできるようになることはこれからの時代、必要とされるスキルだと思います。

 




ABOUTこの記事をかいた人

島田 楓

アセナビイベント担当。北海道札幌市出身。青山学院大学経営学部マーケティング専攻2年。大のアジア嫌いだったが、今後必ず発展する東南アジアを食わず嫌いしてはいけないと、マレーシア、シンガポール、カンボジアを訪問。その中で発展の渦中にある国々熱気とエネルギーの魅せられ、自分のように東南アジアの魅力に気が付く人を増やしたいと感じ、アセナビにジョイン。