「自分には日本とインドネシア両方のことがよく分かる。でも日本と比べてインドネシアにはまだ欠けているモノの方が多い。そこで自分がその穴を埋めようと思った。」日本・長野とインドネシア・スラバヤのハーフである河野氏。二国の現状がよく分かっているからこそできるビジネスを作り上げる。今回はビジネスの内容と起業のきっかけ、今後の目標などについてお話をきき、河野氏の根本にある考え方を探ってきた。

 
《プロフィール| バスメレ河野力樹氏》

OMIYAGE Inc. Indonesia代表。インドネシア人の父と日本人の母との間に生まれ、幼少時代は日本で過ごす。幼稚園と小学校の半分は日本、小学生の残り半分と中学校はインドネシア、高校はシンガポール、大学はオーストラリアで過ごすなど、海外経験が豊富。現在はジャカルタにオフィスを置き、事業を行なっている。座右の銘は「仕事は遊び、遊びは仕事」。

*文中では、親しみを込めてニックネームの「リッキー」さんで統一します。

 

おみやげカルチャーを作り上げる

2月に「OMIYAGE Inc. Indonesia」という会社を立ち上げました。名前が「おみやげ」なので分かりやすい話なんですけど、お菓子の製造と小売りがメインですね。特にインドネシアにある伝統的なお菓子を発掘・リブランディグしたり、日本のお菓子をインドネシアで製造販売したりする、ということをやりたくて、その会社を立ち上げました。

ーどういうきっかけでこの事業を始められたのですか?

「日本にあってインドネシアにないものは何か?」ということを最初に考えました。そこで思いついたのが「おみやげ」です。日本では古くから、どこか訪問するときには手土産を持っていく習慣があって、大きい駅や空港にはお土産屋さんがいくつも並んでますよね。それに比べてインドネシアでは、おみやげ文化はあっても人が集まる場所などではほとんど売っているお店がありません。また、お店があっても、日本のように細部までこだわった商品もあまり見かけません。

インドネシアは島国です。つまり陸続きではないので、国内中を移動するだけでも飛行機に乗ることが多いです。だから、空港は人がすごく集まりやすい場所なんですよね。

例えば、インドネシアの首都ジャカルタにあるスカルノ=ハッタ空港は世界第10位内に入る大きな空港です。それなのに、そういうお土産屋さんがなくて、ある意味もったいないんですね。ニーズはあるのにお店がないということで、特に食品に焦点をあてて、この小売業を始めようと思いました。

ーなるほど。具体的な事業内容は何ですか?

おみやげ・ギフトにも使っていただけるお菓子をを中心に、原材料の調達、製造、物流など、全ての面において 携わっています。でも会社を立ち上げるには、自分ひとりでは何もできないんですよね。たまたま日本で和菓子から洋菓子まで幅広い用途のお菓子を作っている会社とご縁があって、ここまで1年ぐらい試行錯誤しながら準備してきました。自分たちで現地の人と交渉しながらキッチンまわりを全て揃え、インドネシアでもお菓子作りができるような生産拠点を作っています。

材料に関しては、問屋や農家さんから直接取り寄せてそれを加工して売れる状態にし、自分たちで直接お客さんにお届けしようと考えています。

 日本側からはお菓子を作るノウハウや技術を提供していただこうと思っています。自分はアイディアを出して全部を取りまとめる役。そして、インドネシアにいるパートナーは物流や小売り、または他の事業に展開するためのネットワークだったりを提供してくれています。

 やっぱり、日本人が海外で事業をやる時に気を付けなければいけないのは、「日本人である価値」とか「その人が持っているノウハウ」を存分に活かせるマーケティング方法ですよね。自分たちが持っているノウハウを最大限に活かし、本当においしいものを目指したらある程度の価格帯にはなります。ですので、最初は富裕層向けで売り出して、そこから中間層へも波及していけたらいいな、と思っています。

ー具体的にどのようなお菓子を作っていらっしゃるのですか?

 もちろん、現地の特産品を使ったお菓子を作るっていうのは考えてるんですけど、そうではなくて、本当に純粋においしいと思えるものであったり、「インドネシアにはこんなにもステキなものがあったんだよ!」と、ストーリーを語れるようなお菓子例えば「東京ばな奈」って、別に東京でバナナが有名なわけではないじゃないですか(笑)。でも、日本人の間ではとても有名。そういったものを、インドネシアで展開できたらと思っています。

 何の商品かっていうよりも、商品を選んだ理由づけだったり、どういったコンセプトでやりますか?というところをベースにいろんな商品開発をしていきたいなと考えています。

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インドネシアの架け橋になる、というかならなくちゃいけない

 ーどうしてインドネシアでの事業を行おうと思ったんでしょう?

 ぼくは、インドネシアでただのおみやげ菓子ではなく、おみやげ文化を創りたいと思っているんです。だってお土産って自分のためじゃなくて、家族や友人の友人のために買うでしょう?商品自体の味がおいしいだけではなく、エモーショナルな付加価値、つまり文化を創り出したいです。

ぼくたちは、それを象徴する固有名詞として”Umaii”(旨イイ)という言葉を伝えていきたいと思っています。おいしくて、しかもそこに込められた思いが詰まっている言葉。

 僕の場合は、インドネシアで事業を行うことは全然特別なことではなくて、必然です。インドネシアと日本のハーフとして生まれて、インドネシアという経済成長が著しい国で、両親は自営業をやっているんです。このような環境に生まれ、育ってきたということは、ある意味「運命」ですよね。親から与えられたチャンスだと思っています。あとは、ハーフだからといっていじめてくる友達が学校にいなかったことも挙げられると思います。小学校から大学まで、とても恵まれた環境でした。

 現在やっている事業に直接つながる経験といえば、シンガポールでの高校時代の話を思い出します。寮に住んでいたのですが、寮母さんが新しいメニューを作ったときには、必ず僕が試食係をやっていました。(笑)

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 ー日本とインドネシアの違いについて思うことはありますか?

 日本にいると、すごく便利だなあと感じます。例えば、日本では「歩きスマホをやめよう!」とよく言われていますが、インドネシアでは考えられないことです。なぜなら、道がでこぼこしていたり、穴が開いていたり、よそ見しながら歩くなんて危ない。日本だったら、1000円かければかなり満足したものを食べることができます。一方でインドネシアでは日本人の味覚を満足させるレベルのものを探すのが難しいように思えます。

こうやって、両国の違いを目の当たりにしています。日本では当たり前でも、インドネシアではまだなことが多い。また、その逆も然りです。そういう両国の違いを常に気にかけることは大切だし、日本とインドネシアの隙間には様々なチャンスがあるとも言えますね。

 今振り返ると、そういう小さいこと一つ一つが今に繋がっているんだなと思いますし、自分の今持っているものをフル活用しなければいけないと感じます。

こういう環境に生まれ育ったのもあって、インドネシアと日本の架け橋になりたいと思っています。

 ーインドネシアと日本の架け橋について、色々な人が色々な文脈で「架け橋になりたい」という表現をしていると思います。どうして「架け橋になりたい」と思ったのでしょうか?リッキーさんが思う「架け橋」について教えてください。

原体験といえば、2011年の津波ですね。被害に遭われた日本の人々のために自分が何かしなきゃと思ったんです。チャリティーイベントに参加して「自分hは日本人だな」と思えたのと同時に、インドネシア人が心配してくれたりとか、インドネシアと日本の愛情物語に感情的になってしまうんですよね。そういう時に、僕の中では「架け橋になる」というより「架け橋にならなくちゃいけない」と思うんですよね。恵まれた環境で生まれ育ってきて、活かすべきことが多いことに気づいて、それらを活かしていかないといけないと感じます。

 最終的には、「日本でインドネシアのことといったらリッキーいるじゃん」。また逆に「インドネシアで日本のことといったらリッキー」みたいに、インドネシアと日本の人々を繋げる人、その国を身近に感じるためのツールになりたいですね。日本人にインドネシアのことをたくさん知ってほしいし、インドネシア人にも日本のことを知ってほしい。それが僕なりの「架け橋」です。 

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飛び込んでみることの大切さ

 ーこれから海外で活躍したいと思っている若者へ向けてメッセージをお願いします!

 今自分が持っているものを活かすこと、これが一番大切なのではないでしょうか。ぼくの場合、国籍やバックグラウンド、若者という立場、色々あります。スキルを身につけることも確かに重要ですが、自分が持っているものを活かすことの方がもっと重要だと思います。

そして、それらをいつどこで活かすのかを考えるのが重要で、ASEAN内で働くのにも言えることだと思います。海外にいても日本人たちと一緒にいれば “One of them” で終わってしまうのに対し、様々な人がいる中での日本人だったら “The only Japanese”ですよね。 

 ーそれはどうやって見極めるんですか?

 これは見極めるというよりも、飛び込んでからわかることじゃないでしょうか。見極めなんてできる人は少ないんですよ。ただ「意識」の問題で、日ごろから見て感じることだと思います。アンテナを貼ることですね。

 ーでもその当たり前が難しいんですよね。

 そうですね。だから、行動することに目的を持っちゃいけないだと思います。行動することによって何が得られるのか、そこが重要です。

だから、まずは近くのコンビニに行く、くらいの気持ちでASEANに飛び込んでみてください。一歩を踏み出してから見える世界がある、そう思います。

《他にもインドネシアと日本のハーフであることを活かしておられる方が!》

インドネシアのゴミ問題を通して人々の意識を改革し、より良い社会を築く!ジャカルタお掃除クラブ代表 芦田洸氏 【前編】

インドネシアのゴミ問題を通して人々の意識を改革し、より良い社会を築く!ジャカルタお掃除クラブ代表、芦田洸氏 【後編】