在学中の起業がきっかけでアジアに展開し、今や東南アジアをまたぐグループを創り上げた中川さん。「若者」への思いも強く、海外に飛び立ちたい若者を積極的に支援している。アジアや若者にかける思いと、その原点を聞いた。 

 

≪プロフィール―中川恭志氏≫

1986年生まれ。2009年成蹊大学法学部政治学科卒。2005年、在学中に19歳で出版制作会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任。その後、アート系PR会社に取締役として参画。新規人材事業の立ち上げや、美術大学での講師、アートを活用したPR事業を展開する。2010年株式会社アジアクリエイティブコンサルティングを創業、2011年ベトナム社会主義共和国ホーチミンにてVietnam Creative Consulting社の創業を契機に、アジアを軸としたインキュベーション事業を開始する。その後も、香港、シンガポール、ハノイ、ダナン、バンコクで複数の会社を創業する。年間200日は日本以外のアジアに滞在。現在は、10法人が所属するTouch Asia Groupの代表として、アジア5か国7都市を飛び回っている。

ホームページ
touchasiagroup.com

 

多くの人にアジアの魅力に触れてもらう機会を創造する

 

―どんな事業を行っていますか。

 Touch Asia Groupの理念は、「多くの人にアジアの魅力に触れてもらう機会を創造する」ことです。現在、Touch Asia Groupは、アジアで魅力的なビジネスマーケットを探し、その事業を創造したい・できるであろう人材を発掘すると同時に、必要な資源(資金、ソフトウェア開発、翻訳、人材、パートナー)をグループの所属企業が連携しながら提供し、事業を共同で運営するインキュベーション事業を展開しています。

インキュベーションをするにあたり、必要な資源もグループ内で完結することができるため、アジアのマーケットで可能性のある事業に迅速に投資コストを抑えながら新規事業に投資することができています。また、実際の事業はグループに所属している10社の会社が行っています。

グループ会社には、クリエイティブ企業を対象としたコンサルティング会社、ソフトウェア開発会社、PR&翻訳会社、アジア市場へのコンテンツ配信会社、ベトナムのゲームプラットフォーム運営会社、タイの不動産プラットフォーム会社など東南アジアでITを軸とした組織で構成されております。 各組織には、日本、ベトナム、香港、韓国、タイ、ロシア、フランス国籍の人材が所属しており、20%が日本国籍で、80%が日本以外の国籍保有者の仲間が働いています。

 我々のグループの軸となるのが、ソフトウェア開発を行うVietnam Creative Consulting社(以下略称VCC)です。東南アジアでITサービスを展開する時に課題となるのが、開発と翻訳です。そのため、アジアでIT関係の様々な事業に対し全てグループで支援することがきる体制を整えています。グループの中に、VCCがあることによって、アジア向けの新しいサービスを安価に開発することができます。グループ内に、PR&翻訳会社があることによって、翻訳を安価に提供することができます。また、グループの各法人に所属している若く優秀な人材が各国でしっかりとビジネスをしながら、いくつものグルー企業に所属し、横断しながら事業を進めていることとで、グループ企業同士の機能をOEMによってシェアすることができます。

例えばですが、最近タイ国内の不動産検索が不便なため、タイで多言語対応した不動産検索プラットフォームNAYOO(www.na-yoo.com)というサービスを立ち上げました。社長は26歳の日本人です。システム開発はベトナムで担当し、複数言語への翻訳は東京のグループ会社が担当しています。このような感じで、アジアで勝負したい人材がいる場合、グループで総合的な支援が可能であり、起業を総合的にサポートが可能です。

社会に対するミッションとしては、「アジアの魅力に触れてもらう機会を創造する」を軸に、アジアに住む人が笑顔で生活できるよう、アジアの発展に貢献することを意識しています。
現在、グループには日本国籍でないスタッフが80%を占めています。多くはベトナムのスタッフですが、スタッフだけでなくその家族までの生活向上が大事だと思っています。一緒に働いてくれているスタッフは「家族」。同じアジアで仲良くしたく、国籍や年齢関係なく「家族」として一緒に仕事に取り組む会社を作っています。

 

ベトナムホーミン市にあるVietnam Creative Consulting社の定例パーティー。

ベトナムホーミン市にあるVietnam Creative Consulting社の定例パーティー。

 

なぜ、インキュベーション事業をしているかというと、人材育成の一環で、海外に行きたい若者を支援したいことが大きいですね。志ある若者に投資して、彼らが全力で物事に取り組むと、彼らの目つきが変わります。彼らが成長していく過程は、僕らにとっても刺激になります。10万円渡してホーチミンで0から1を作った若者を例に挙げると、彼は初面接ですぐ行くと決めました。若い時は凝り固まらず、リスクなんて考えずどんどん挑戦していくことができますし、仲間同士で情報共有を行いながら考え、自分で現場から吸収して成長させています。

私たちのグループでは、アジアでの家探しから翻訳、投資、システム開発など、ビジネスを始めるのに必要なことは支援できます。ITに限らず、やりたいことがある人は応援したいですし、チャンスを与えたいと思っています。とにかくアジアに行くかどうかが大事です。若い時に海外へ行き、挑戦したいビジネスがあれば、積極的に支援をしたいですね。アジアに触れて、自分の世界を広げてほしい。そして、意識が高くて挑戦したい人は、ぜひ社長になってほしいと思っています。グループには25〜26歳でベトナムやタイの社長になり活躍している人材もいます。若くしてビジネスで自由に挑戦する環境を提供したいと考えています。

 

中川恭志さん3

 

―どんな人生を歩まれてきたのでしょう。

初めて海外に出たのが大学1年生の春休みで、カナダへ短期留学に行きました。

カナダに移民されたフィリピン人家族の家にホームステイをしながら、語学学校に行きました。韓国人が8割といった環境で英語を勉強しました。その過程で竹島などの政治問題の議題がでました。オーストラリアのクラブで飲んでた時に、イスラエル人と政治について話したこともありましたね。そこで感じたのは、生で聞く情報とメディアからの情報がもたらす印象の違いでした。そうした体験が、当時やってたカメラや情報の編集につながり、面白いと感じたのが一つの転機でした。

大学に入学し、見た目が老けていたので既存のサークルから新入生歓迎などされなかったので、なぜか写真部に入部しました。撮影のアルバイトをした後に、学生向けフリーペーパーを作る会社を立ち上げ、仲間とともに運営していました。それが楽しく、当時は就職なんて考えられなかったです(苦笑)。

その後、海外向けの雑誌制作も経験しましたが、もう雑誌作りは一区切りつけ、違うものに手を出します。
22歳の時に休学し、機会があってアート系のPR会社に取締役として参画しました。若手のクリエイターや美大生と組み、メーカーさんや商業施設さんのPRのお仕事や、人材事業の立ち上げなどをしていましたね。その関係で23歳から美大で話をする機会をいただきました。そこで感じたのは、日本のクリエイターたちが疲弊しきってしまっていて、ここで「東南アジアに出れば、もっと活気があるのではないか」と考えたのです。
そこで、24歳、2010年に今のグループの軸となる会社を日本とベトナムに立ち上げ、広告制作などクリエイティブを制作している企業の下請け仕事から始めました。また、IT分野やオフショア開発にまで手を広げましたね。自分の資金だけですべてお金を回していました。

そこで感じたのは、アジアには魅力しかなく、国籍関係なく一緒に仕事のする楽しさや、文化の違いにおける適任な役割なども感じました。日本人とベトナム人の間でも、向き不向きの仕事もあります。ベトナムではプログラミングのソースコードを書ける人材がどんどん増えていくとおもっています。その数は日本よりも伸びるのではないでしょうか。国柄のそれぞれの強みを生かすと、アジアで経営するおもしろさが見えてきます。 

 

自分の「実力」に投資し何でも挑戦する土壌を

 

 ―今後はどのように考えていらっしゃいますか。

今のように、粛々と事業を続けていければ。自分たちで稼いだお金を積み重ね、グループ会社を増やし、アジア全てに会社を設立したいと思っています。会社があると行く必要があるので、いろいろな国に行ける理由ができますし。現在は、インドネシアやミャンマーでビジネスしたい人を探しています。(笑)

若者が東南アジアで事業をやるときに、やりたければ形態は何でもいです。やりたいことは夢中になってやれるものなので、やりたいことを事業にすればいいと思っています。我々は、グループ全体でお金を稼げばいいと思っていて、グループ全体の成長に貢献できればいいと思っています。今ある事業体として、それぞれの会社、それぞれのスタッフがやりたいことを行える環境がここにあります。将来的には「アジアといえばTouch Asia Group」といわれるようになりたいですね。

 

―ASEANの魅力を教えてください。

はじめは「投資コストが安い」くらいしか考えていなかったです。あとは暖かいこととか、ご飯がおいしいとか…(笑)。まぁ、僕はベトナム料理が一番好きですが。ただ、そこで会社経営をしていくうちに、気が付いたんですよ。縁もゆかりもない国の人たちが一緒に働いてくれているということは、実は本当にありがたいことなんだなと。彼らに感謝してもしきれないです。それが、魅力ですね。

そこから彼らとその家族、ひいてはアジア全体に対して貢献したいと考えるようになりました。商売としてではなく、そこで働いてくれている社員の生活の向上という形で還元したいですね!

 

―若い学生向けにメッセージをお願いします。

「今後自分がアジアでどのようなポジションを取るのか」に尽きます。そして、考えたポジションを軸として、自分が今何を勉強すべきなのかしっかり考えてみてください。少なくとも東南アジアからは成長していますし、魅力しかありません。正直アジアに進出しない手はないでしょ(笑)。市場環境も見つつ、5年、10年先の計画と目標を立て、行動を起こすことが非常に重要です。

イベントを開いたり交流会に参加したりするのも良いでしょう。けど、長期の貧乏旅行や、死ぬほど勉強したり本を読んだり…ってことは、学生時代にしか絶対できませんよね。勉強なども含め、自分の「実力」と呼ばれる物にはばんばん投資しちゃってください。自分の物差しを伸ばし、広く経験してその上で自分の適性などを見定め、勝負する分野を決めてください。何でも挑戦する土壌を自らの中に持ってほしいですね。

そのためには、遊びながら勉強することが一番。ある意味、思い切り遊ぶのも学生時代にしかできませんよ。好奇心を大切にしてください。特に、恋愛経験は絶対大事。アジアでは、コミュニケーションにしようする言語はみんな母国語でないことが多いです。その時に、言葉が通じなくても人に信用され好かれる魅力がとても大事です。素直で笑顔が素敵なことはとても大事ですね。

 

―学生が持つべき重要な姿勢とは。

決断力素直さ。決断力のある人は、海外でビジネスができる見込みがあります。行きたいと思っていて、行く機会があったらとにかく行ってみることです。やりたいことがあるならある意味感情に任せて素直にやればいいと思います。がむしゃらでいいんです。それを、妙な理由をつけてやらない日本人が多すぎますね。実際海外に行っても、一部では「日本人は口だけの人」と思われちゃっているところもありますので、ぜひ行動に移してほしいです。また、間違っていたら素直に反省できる人も伸びます。そうした人はやはり経営者としても信頼できますしね。

同時に、全員が海外に行くべきだとは思いません。日本には素晴らしいものがたくさんあります。どんな理由でもいいので一度海外に出てみて、いろいろ体験してください。楽しければ働けばいいと思います。仕事をやる以上は成果を出し、顧客に価値を与えるのは当然ですが、その上でやりたいことをやる人生を送ったほうが、絶対楽しいですよね!

 

日本法人に勤務するスタッフ。 左から日本法人の代表取締役の岩根さん、中川さん、スイスの大学を卒業して新卒入社の葛西さん、香港出身Melieさん、ベトナム出身の Tramさん、ロシア出身のAlexさん。国際色なチーム。

日本法人に勤務するスタッフ。
左から日本法人の代表取締役の岩根さん、中川さん、スイスの大学を卒業して新卒入社の葛西さん、香港出身Melieさん、ベトナム出身の Tramさん、ロシア出身のAlexさん。国際色なチーム。