新卒で、バンコク市内の飲食店店長を勤める女子大生に注目! 夜は飲食店を経営、昼はバンコクのアパレル市場をヒントに、日本人のためのオーダーメイドビジネスを始めるため奮闘中。“学生だからできない”のではない。「興味があるなら、飛び込んじゃえばいいじゃん」と語る、強気で自由な、木村氏を取材した。

≪プロフィール|木村さん≫

1992年生まれ、都内某大学家政学部に在学中。ASEANへの旅行、短期インターンの経験からASEAN市場に興味を持つ。2013年冬に就職活動をし、2014年夏からバンコクで飲食店店長として働き始める。近い将来、日本に戻り新たなアパレルビジネスを始める予定。

 

まずは “トップとして”働いてみた

 

― 大学在学中の段階で、東南アジアで就職を決断する決め手は何でしたか?

就職活動で海外を見るようになったのは、大学3年の冬なんです。被服学科ということもあり、日本のアパレル会社を色々調べましたが、全然面白そうじゃなくて。接客はこういうスタイルでやりたい、自分が好きなものを売りたい、と、ワガママしか出てこないんですよ。それなら、自分でお店やっちゃえばよくないか、と思ったんです(笑)

最初は、自分が好きなものを集めてセレクトショップを作ろうと思いました。でも、自分が住む東京には素敵なものがいっぱいあって、好きなショップもいくつかある。じゃあ、自分は何を作るのか? 自分がショップを作ったところで、需要がないじゃないですか。

そのときに、旅行で訪れた東南アジアの雑多な感じの洋服の売り方を思い出しました。カワイイものはたくさんあるのに、売り方が雑、というかきたないというか。東南アジア特有の雑多な感じはすごく好きです。でも、床にボンって置いてあったり、店員さんがお店のすみっこでご飯食べてたりするのを見ると、東南アジアっぽいとは思いますが、自分は買わないな、と思ったんです。ここに、お店を出せる市場があると思いました。自分なりの売り方で、カワイイものを売れたら面白いかな、って。

当時は、東南アジアのフィールドに興味があったので、「海外就職」「東南アジア」という感じで検索をかけました。応募フォームから面接をお願いしても、新卒なんて全然求めていないと言われたり、ビジネス英語の経験がない人は採用できませんと断られたりしました。唯一、返事を頂き、履歴書を送ったのが今勤めている会社です。それから2週間くらいで採用が決まっちゃいました。

 

― 現在はそのバンコクでの会社で、どのような仕事をしているんですか?

タイのバンコクで、日本料理店の店長をやっています。東南アジアのフィールドに出て、現地の人のトップに立つ経験をすることが目的なので、仕事としてアパレル関係のことはまだ始めていません。

 

― 店長としてタイ人と働いている経験から得るものの中で、何がこれからのアパレルの仕事につながっていくと思いますか?

日本にいても、東南アジアの人々はルーズだ、と聞きますよね。そのとおりなんですよ(笑)今まで生きていた環境から、効率良くする、ということを求めないんだろうな、とお店の従業員として働くタイ人を見て、感じます。

私のお店は日本料理を扱うので、お客様の9割が日本人です。日本人店長をわざわざ置いているのだから、日本のようなクオリティーが求められます。一方で、従業員のタイ人の感覚もわかってあげなくちゃいけない。従業員に対して、“店長の私もお客様も日本人だから”、もっと効率よく動いて、などは言えません。板挟みのような状況です。

タイ人の感覚を、日本のようなクオリティーに引き上げよう、と考えていた時期もありました。でも、彼らは別に日本人になりたいわけじゃないんですよね。彼らの文化に入っているのは自分なので、いくら日本料理店だとしても、自分の日本人的感覚を押し付けるのは違うな、と感じました。

これは、飲食からアパレルへ、ジャンルを変えたとしても意識しなければいけないことだと思っています。

 

日本人だからこそ、日本人のニーズに応えたい

 

― では飲食店の店長を勤めた後、具体的にどのようなビジネスをしようと考えているのか、具体的に教えてください。

当初やりたかったセレクトショップは、視野が狭く面白くないと気づき、さあどうしようと思って。元々東南アジアにたくさんあると聞いていた、オーダーメイドのお店に目を付けました。

いざバンコクに行ってみたら、オーダーメイドのお店って、本当にいっぱいありました。そのお客様のほとんどが、日本人と聞いたんですね。例えば、駐在員の方のご家族とか。でも、お店を経営しているのはほとんどがタイ人だったりするので、クオリティーが低かったり、お店自体がきれいじゃなかったりするんです。それをどうにか面白くできないかな、自分のクオリティーでやってみようかな、と思うようになりました。まずは、バンコクにいる日本人のお客様をターゲットにし、日本人のクオリティーのオーダーメイドのビジネスを始めようかと思っています。日本人のクオリティーにしたいから、針子(縫製の仕事をしている人。縫い手。)を日本人にしようと思い、繋がりをつくっている最中です。

 

― なぜ現地のタイ人ではなく、日本人をターゲットとしたビジネスをしようと思ったのでしょうか?

日本人としての私は、タイ人が求めているものはまだ理解できないと思ったからです。売り方をもっと面白くしたい、と思っていました。でも、それは私が今まで日本できれいに売られていたものばかり見てたからであって、タイではそのスタイルが当たり前です。その感覚が私にはまだないので、タイ人が求めているものは、まだ作れないと思いましたね。

それなら、日本人としてバンコクのアパレル市場を見たときに気づいたものを大事にしようと思いました。オーダーメイドのお店がこんなにたくさんある、さらに日本人女性の顧客をつかんでいる。じゃあ、なぜ日本にはオーダーメイドのお店がないのか? と考えたんです。日本にない、それなら私が日本でやっちゃおうと思ったんですよね。

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バンコクだから見つけられた、日本人のニーズ

 

バンコクに住む日本人のお客様は、普段着もオーダーメイドしちゃうらしいんです。ワンピースも、スカートも。でも、日本で普段着をオーダーメイドする人なんていないじゃないですか。ファストファッションのように、良いもので安い服も沢山ありますから。将来的に、日本では、ウェディングドレスのような、“大きいモノ”をターゲットにしようと考えています。

バンコクにドレスのオーダーメイドのお店はたくさんあります。でも、それは現地の人向けだと思うんですよ。バンコクにいる日本人はいっぱいいますが、結婚式をバンコクで挙げる人はそんなに多くありません。日本のウェディング市場を調べてみてわかったのですが、日本のドレスはレンタルのものでも、ものすごく高価です。ドレス1着、数時間借りるために20~30万円以上。ドレス自体の生地以外にも、広告費、ドレスを綺麗に見せるための店内設備や電気代、人件費などに、費用がものすごくかかるためです。それで値段が跳ね上がっています。高すぎますよね、私はそんなに払いたくないと思っちゃいました(笑)

 

日本人って中流階級がほとんどですよね。日本人の視点って、その中流階級の視点に限られてしまうんです。でも、ウェディングドレスのオーダーメイドって、お金を持っている層のニーズなんですよね。今は富裕層が求めているものを、どうにかして、中流階級、日本人の多くの人の手に届くようにできたら面白いなと思っています。

コストを抑えるために、ドレスの生地の調達も生産もアジアで、という方向を最初は探してたんです。でも、生地などは良いモノが日本でも手に入りそうだとわかりました。では針子をどうしよう、となったときに、私ひとりで、何も持っていない状況で始めるビジネスについてきてくれる針子を探すのは、かなりキツイと感じたんです。それで日本に目を向けました。大企業がどんどん東南アジアに縫製工場を移しているから、今日本があいている。空洞化のような状況で、針子が困っているという情報を知りました。それなら、日本製にしてみようと思ったんですよね。東南アジアでのビジネスを最初は考えていましたが、出てみないと日本の現状はわからなかったので、結果的に面白いと前向きに捉えてます。

 

とりあえず今年1年間、私はバンコクにいます。私はバンコクで受注を行ない、日本にいる針子に縫ってもらいます。それをバンコクに輸入する形を取るつもりです。日本人がここまで介入しているオーダーメイドのビジネスは、バンコクにはまだないと思います。そこに参入して顧客をつかめるのなら、私が来年日本に戻った後も、私にお願いしたいと思っていただけるように頑張り、繋がりを継続させたいです。東南アジアでのビジネスにこだわる、とは思っていません。ただ、バンコクに住む日本人女性にオーダーメイド需要があるから、ここにいたいと思っているだけです。

バンコクで働き始めたからこそ、日本人にもオーダーメイド需要があることに気づきました。次は日本のウェディング市場の中で、オーダーメイドのビジネスをやってみようと思うようになりました。これが来年から始めたい、日本でのビジネスです。針子も、受注者の私も日本にいる状態で、ウェディングドレスのオーダーメイドのビジネスをやろうかと考えています。布や装飾の手配については、日本も東南アジアも検討中です。

 

失うものがない、学生だからこそできること

 

― バンコクでの生活を通して、日本人の需要が発見できたということですね。東南アジアをフィールドとしてビジネスを行なってみることのメリットは何だと考えていますか?

日本にいるだけではわからない、知らない部分を見ることができます。また、逆に東南アジアにいて、日本から離れたからこそ日本に足りないものに気づくこともできます。東南アジアと、日本の両方のことを知ることができるのが面白いと思いますね。例えば、私なら、“バンコクに住む日本人にオーダーメイドが好きな人は多いのに、なんで日本ではしないの?” ということに気付けました。

 

― 東南アジアへ飛び出してみよう、ビジネスをやってみよう、と挑戦を考えている人に、最後にメッセージをお願いします!

私、今捨てるものが無いんですよ。失敗したら失敗したで、まぁいっか、って(笑) ゆっくりやろう、と思える環境に自分がいるから、挑戦できるんだと思います。失敗して、ノコノコと日本に戻りアルバイトをしていたら、正直ダサい。でも、ダサいだけじゃないですか。それで失うものもないって思ったら、何も怖くないって思うんですよね。

失敗したら日本に帰ればいいんだから、東南アジアへ出てみたいなら出ればいいんじゃない?って思います。試してみたら、出てみたら、考えていたことと全然違うってことがあるはずです。日本で知ることができる情報は限られているんだから、興味があるなら出てみちゃう方が、いいんじゃないかなって。