世界最大のムスリム人口・インドネシアにある、世界最大の“仏教”遺跡「ボロブドゥール寺院」がスゴい


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今回は、インドネシアにある有名な世界遺産「ボロブドゥール寺院」 (Candi Borobudur) について、宗教と歴史の面からお伝えします。春休みの旅行先がまだ決まっていない方は必見です。

Candi BorobudurPhoto by http://critcrot.blogspot.jp/

ボロブドゥール寺院は、中部ジャワ・ジョグジャカルタから北西に約42kmの所にあります。日本から観光で行くなら、まずはジャカルタまで行って、そこから国内線でジョグジャカルタ。その先はタクシーでボロブドゥール寺院まで約1時間で着きます。

なぜジャカルタ(東ジャワ)から離れた所にあるんでしょうか?その答えは当時、中部ジャワで勢力を持っていたシャイレンドラ王国にあります。

 

世界一イスラム教徒が多い国なのに、世界最大の“仏教寺院”という不思議

8世紀半ばから中部ジャワで勢力を発揮したシャイレンドラ王国は、大乗仏教を信仰していました。(※インドネシアへイスラム教が流入してくるのは13世紀末なので、それ以前は存在していた王国によって、信仰された宗教は異なります。)

そんなシャイレンドラ王国は、大乗仏教を保護する目的でボロブドゥール寺院を建てました。780年頃から建立が始まり、792年には完成したとされています。 

寺院には壁画として、上段にはお釈迦様の一生、下段には因果応報のたとえが彫刻されています。

現在インドネシアの約86%はイスラム教徒ですが、このボロブドゥール寺院は、仏教の遺跡です。そして、世界最大の仏教寺院でもあるんです!仏教の祝日にあたる日には、世界各国から仏教徒が集まって、共にお祈りをする場でもあります。

fadjfopPhoto by thetravellust.com

 

この写真は、Vesak(ワイサック)というブッダの誕生日を祝う行事がボロブドゥール寺院で行われた時の様子です。ここに写っている方たちは、インドから来たお坊さんたちなのです。

borobudur-vesak-3Photo by thetravellust.com

豆知識①

インドネシアでは、古くから左手は「不浄の手」とされています。インドネシアに行った時、相手に物を渡す場合や握手する場合は、右手を使うようにしましょう!

 

隠されて直されて壊されて…世界遺産に至るまでの険しい道のり

実は、ボロブドゥール寺院、発見されたのは約200年前のことなのです。では、後の時代にどのようにして発見されたのでしょうか?

中部ジャワにあるムラピ山 (Gunung Merapi)という山を知っていますか?ボロブドゥール寺院から北東の方向にある、インドネシアで最も活動的な山です。

この山は1548年以降計68回も噴火を起こしていて、ボロブドゥール寺院は、その火山灰をかぶり続けていました。同時に、ボロブドゥール寺院を建立したシャイレンドラ王国も衰退し、辺りは密林状態に。ボロブドゥール寺院は姿を隠し、人々から忘れ去られていた時代を過ごします。

※ボロブドゥール寺院が姿を隠した原因として2つの説があります。1つ目は、ムラピ山の火山灰と密林によって、隠された説。2つ目は、13世紀末に流入し一気に広まったイスラム教から、この仏教寺院を守るために人々が埋めた説。しかし現在では、1つ目の説の方が有力だとされています。

ボロブドゥール2筆者撮影(2013)

時代が過ぎ、19世紀半ばのこと。この時代のインドネシアは既にオランダによって植民地支配されていました。

その中、当時ジャワ副知事に任命されたイギリス人トーマス・ラッフルズは、1814年、オランダ人技師のコルネリウスと共に密林の中に埋もれていたボロブドゥール寺院を見つけ出すのです!

それ以降、何度も調査と復元が行われ、現在私たちが見る姿となります。この修復には、日本を始め約27ヵ国からの資金援助があり、日本は技術協力も行ないました。

1984年2月22日、当時のスハルト大統領は国家的行事としてボロブドゥール寺院の修復完成記念式典を行ないました。しかしながら1985年、イスラーム教徒の過激派たちがボロブドゥール寺院に侵入、円形壇にあるストゥーパ(塔)9基を破壊する事件が起きたのです。

IMG_1942筆者撮影(2013)

1991年、ボロブドゥール寺院は周辺地域にある他の寺院と共に、「ボロブドゥール寺院遺跡群」としてユネスコ世界文化遺産に登録されました。

その記念として作られた石碑がこちらです。

世界遺産筆者撮影(2011)

豆知識②

インドネシアでは古くから、アニミズム信仰によって、子どもたちの頭には精霊が宿り、子どもたちが無事に成長するように守ってくれているとされています。頭のてっぺんに触れると、その精霊がどこかへ飛んで行ってしまい、戻ってきません。よって、子どもたちの頭をなでたりすることはタブーとされています。このことは、インドネシアだけではなくタイなどでも信じられているようなので、気を付けましょうね。

参照:http://goodboone.com/izime/life777/post-21.html

 

ボロブドゥールに見る、インドネシアの多様性

今回、ボロブドゥール寺院について宗教と歴史の面からお伝えしました。きっと、世界史の中で名前は聞いたことがあっても、細かい歴史については初めて知った、という方が多いのではないでしょうか?

インドネシア人口の86%がイスラム教徒である現在でも、ボロブドゥール寺院のような世界級の仏教寺院が保存されているということ自体、インドネシアの「多様化の中の統一」または「多宗教国家」と定めていることに原点があると考えられますよね。

インドネシアにいる仏教徒の割合は1%以下です。そう考えると、ボロブドゥール寺院自体の偉大さだけではなく、さまざまな宗教を抱えながらもそれぞれを大切に守っているインドネシアという国の寛容さも感じずにはいられませんね。

ちなみに、ボロブドゥール寺院の正面の階段を上って最初に目に入るストゥーパのうち、右側のストゥーパの中にいる仏像は、「触れると幸せになれる仏像」として知られています。女性は仏像の右足、男性は仏像の右手に触ると、幸せになれるんだそうです。

みなさんもボロブドゥール寺院へ行ったら、試してみてはいかがでしょうか。

Terima kasih banyak dan selamat siang!

(どうもありがとうございました)




ABOUTこの記事をかいた人

角銅ふみ

東京外国語大学大学博士課程前期1年。インドネシアの首都・ジャカルタの北部を中心に貧困層の子供たちへの道徳教育について研究しています!さまざまな面からインドネシアについてお話していきます♪