「途上国の課題を解決するビジネスリーダーになりたい」電通、リクルート、P&GのOBがシンガポールで起業したワケ


シンガポールで採用報酬型の求人サイト「JOB Forward」 を運営する家田氏。大学時代の恩師がきっかけとなり、発展途上国の社会問題をビジネスで解決したいという志を持つ。新卒で入った大手企業を辞めて起業し、その後リクルートやP&Gでキャリアを積む。自身のミッションを貪欲に追い続け、「東南アジアの労働生産性の向上」というテーマに取り組む同氏を取材した。

《プロフィール|家田 佳明氏》
1980年生まれ。2003年、名古屋大学卒業、株式会社電通入社。2004年に友人とともに起業し、転職情報サイトを開発・運営。2007年、株式会社リクルートに入社、新規事業開発担当としてフリーマガジンやアドテク事業の立ち上げに参画。2011年、P&Gシンガポールに入社。高級化粧品のマーケティング担当として世界7カ国のチームと世界展開を推進する。2014年1月からシンガポールにてソーシャル・リクルーティング・プラットフォームを提供するJOB Forwardを創業。

 

社員に近いネットワークから人材を採用できる「JOB Forward」

 

―事業内容を教えてください。

今年の1月から、ソーシャルリクルーティングプラットフォーム「JOB Forward」を運営しています。ソーシャルメディアを活用して、企業と求職者をマッチングするサービスです。特徴としてFacebookを使用し、自社の社員が持つネットワークに近しいところから求職者を探すことができ、精度の高いマッチングを生み出すことができます。

JOB Forwardスクリーンショット

マッチングが生まれると、入社が決まった本人を始め、SNS上で求人情報をシェアした人全員に報奨金が入る仕組みになっています。企業側の求人広告掲載料は基本的に無料で、採用報酬型の料金体系をとっています。広告の掲載企業はローカルの企業がメインで、ネット系のスタートアップが多いですね。ターゲットとなる応募者は20代後半〜30台前半である程度のキャリアを持った人としています。

―サービスの競合優位性はどのようなところにありますか?

クリエイティブに力を入れ、求職者を集めようと考えています。会社や社員の写真やインタビューを掲載し、掲載企業の雰囲気が分かりやすいようなコンテンツを作っています。企業の応募要項のみではなく、ビジュアルを使うことで人目を引き、ソーシャルメディア上で拡散されやすいものにしています。

今のところ、ソーシャルリクルーティング領域における競合はいませんが、マレーシアの人材最大手JobStreetのような求人サイトが、シンガポールの人材市場でも大きなシェアを持っています。そのようなサービスは、文章のみで求人情報が掲載されており簡素なものが多い。しかし弊社では、CEOや従業員のインタビュー、写真などのビジュアルを掲載して、ワクワクしながら仕事探しができるサイトにしようとしています。

 

―どのようなメンバーでサービスを運営していますか?

チームは全員で6人おり、シンガポールにいるのは私だけです。エンジニアの責任者はインドにおり、WEBデザイナーはネパール、プログラマーはベトナムにいるなど、それぞれ国籍も住んでいる場所もバラバラですね。メンバーの採用は、LinkedInで直接候補者にメッセージを送ったり、知り合いから紹介してもらったりして行いました。

 

電通を辞め、キャリアのレールから外れた時に見えたこと

 

―家田さんのキャリアを教えてください。

大学生の時にフランスのMBAで教鞭をとっている恩師の元で、「持続可能な社会に向けて人類が取り組むべきこと」というテーマを学んでいました。例えば、水の問題や資源の問題など、人類が取り組んでいくべき問題について勉強していました。その中で漠然と、将来的には途上国の課題をビジネスで解決したいと思うようになりました。国際機関からのアプローチもありましたが、継続的に利益を生み、国境のしがらみを超えていけるビジネスサイドのアプローチに興味がありましたね。大学を卒業後は「アイデアを広く伝える」ということを学びたいと、大手広告代理店の電通に入社しました。電通では媒体局に所属し、テレビCMの買い付けなどを行う仕事をしていましたが、「もっとビジネス全体に関わりたい」と思うようになりました。電通では、コミュニケーション領域の解決策を提供することはできましたが、もっと全体観を持って事業に関わりたいと思いました。ちょうどそう考えている時に、友人から一緒に起業しないかと誘われ、電通を辞めて24歳で転職情報サイトを起業しました。それまで電通にいたので、大手企業のキャリアのレールから外れて生きていくと覚悟し、自分が本当に情熱を持てると思うことをやっていきたいと考えました。その中で、改めて「途上国の課題を解決するビジネスリーダーになりたい」と強く思うようになりました。

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その後、事業開発のエキスパートと一緒に仕事がしたいと思い、2007年にリクルートに入り新規事業の開発を行っていました。そこではnanapi社長の古川氏、KAIZEN platformの須藤氏、ジーニーの工藤氏など現在業界で活躍している仲間と一緒に仕事をしていました。リクルートでは、フリーマガジンのR25、L25の事業部に2年間おり、その後はアドオプティマイゼーション事業部という、クライアントが抱えるデジタルマーケティングの課題に対し、主にアドテク観点からソリューション提供を行う部署にいました。

リクルートに4年いた後は、学生時代から抱いていた自分の理想に近づくために、ヨーロッパでMBAを取得しようと考えていました。それを目指して勉強している時に、P&Gのシンガポールでマーケティング職の採用を行っていることを知りました。P&Gのマーケティングは、業界の中ではMBAと同等の価値があります。そこで、二つを天秤にかけたときに、海外で働くという目的が早く達成できるP&Gを選び、入社しました。そこでは高級化粧品SK-Ⅱのマーケティング戦略の立案と、その目標に向けた広告コミュニケーションの開発を行っていました。

 

日本人であることの優位性なんてないと思った方がいい

 

―その後どのような経緯で起業することになったのですか?

去年の夏くらいに、「シンガポールで事業をやるなら何をするか」ということを個人的にブレインストーミングしていました。その際に、東南アジアの人材領域に関してまだ改善の余地があると考えました。リクルートにいたこともあり、人材ビジネスの構造が分かっていたので、実際にシンガポールで事業を行うイメージができていました。ちょうどテクノロジー面でのサポートを知人から受けることもでき、試しに今の事業の元となるプロトタイプを作ったところ、それなりに結果が出ました。スタートアップが成功する条件として、大きくて伸びている市場があること、解決するべき大きな問題があること、チームがあること。これら全ての条件がそろっていたので、いまやらなければ、これ以上のタイミングはないと思いました。途上国におけるビジネスリーダー目指すために、よりよい求人サービスをつくり、東南アジアに貢献したいというビジョンを掲げて起業しました。

 

―今後のビジョンを教えてください。

シンガポールでプロダクトを磨いた後、東南アジアの他の地域にも展開し、ソーシャルリクルーティング領域で東南アジアNo.1になりたいと思っています。弊社のサービスを通じて、人とのつながりをうまく活用しながら仕事探しをすると、良いマッチングが増えると思います。そうすると、高いロイヤリティを持って、その会社でイキイキ働く人が増え、結果的に国全体の労働生産性の向上につながっていくと思います。

 

―これから東南アジアで勝負しようと考えている人にメッセージをお願いします。

アジアには優秀な人がたくさんいます。日本人であることの優位性なんてないと思った方がいい。日本人向けのサービスを行うなら話は別ですが、例えばインドネシア人やマレーシア人などローカルの人に向けたビジネスをやるうえで、日本人であることのメリットはほぼない。それくらいの気持ちを持っていた方がいいと思います。日本人的な仕事の進め方では役に立たないことも多いです。その代表的なものは、細部にこだわりすぎるということですね。日本人はやるべきことが10個あれば、10個全てを完璧にしようとするので時として効率が悪い。しかし、海外ではやるべきことが10個あれば、最も大切な3個で確実に実行する。残りの7個は赤点でもよいなど、一番大事なことにフォーカスして効率的に成果を上げることが一般的です。多国籍チームをリードし、グローバルな課題解決をリードできる人材を目指して、チャレンジして欲しいです。

Interviewed in Sep 2014

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ABOUTこの記事をかいた人

長屋智揮

同志社大学政策学部卒。在学中に休学し、インド・バンガロールで会社の立ち上げ、事業拡大に関わる。それをきっかけに、今後急成長が見込まれるアジア各国の市場に興味を持ち、現在ASEANを周遊しながらインタビューを行う。現在は渋谷のIT系企業に就職。