タイのオンライン採用市場を拡大する衝撃を!成功報酬型採用サイトJobTalents CEO 越陽二郎氏

 

タイで注目されるスタートアップの一つ、完全成果報酬型の採用サイトJobTalentsを立ち上げた越陽二郎氏。「タイで日本のプレゼンスを高める」という使命を持ち起業に至るストーリーを伺った。

《プロフィール|越陽二郎氏》

1984年生まれ。2008年、東京大学卒業。2009年、株式会社日本能率協会コンサルティング入社、経営戦略コンサルタント兼アジアマーケティングチームメンバーとして従事。2011年、株式会社ノボットに入社、KDDI子会社medibaへの売却に伴い、同社の海外戦略部創設に参画。タイ拠点立ち上げリーダーとして1年の任務を終えた後、2013年3月退社。同年11月、タイ・バンコクにてTalentExを創業。

 

タイ人の採用で苦労した経験から生まれたサービス

 

―サービスの内容を教えてください。

バンコクで人材募集プラットフォームJobTalentsを運営しており、日系、タイ系、欧米系の企業に対して現地人材の採用をサポートしています。採用を行う企業側からみて、JobTalentsには大きく三つの特長があります。

1.料金体系が完全成功報酬型であること
企業の求人広告が無料で掲載でき、
良い人材が採用できない場合、企業は料金を払う必要がありません。

2.FacebookなどのSNSを利用したソーシャルリクルーティングを行っていること
タイ人はFacebook利用者が非常に多く、SNS上での拡散によって応募者や出稿企業の獲得を狙っています。

3.マッチングの精度を上げるためのスクリーニング機能
企業へ応募のあった候補者を国籍や年齢等でフィルタリングし、対象外の候補者に時間を割かずに済むよう候補者情報を選択できるようにしています。また、今後は求職者のスキルを知るためのスクリーニングも実装していきます。例えば、日本語能力を持った方には実際に日本語を話す動画をUPしてもらったり、エンジニアならコードを書いてもらったりと、企業側が求職者のことを事前に知ることで面接時のマッチング精度が高くなるような仕組みを作っています。

写真①
JobTalentsウェブサイト

 

このようなビジネスモデルを採用した背景として、タイ赴任時にタイ人の採用で苦労した経験があります。

大手企業の駐在員として赴任した当時、現地人材の採用方法として人材紹介エージェントと昔からある大手の採用サイトいくつか、という限られた手段しかありませんでした。実際に大手の採用サイトを使ってみたところ、求めている人材からの応募が全くなく、かかったコストが無駄になったことがあります。例えば、20代のタイ人でITに詳しい人を採用しようと募集をかけていたのに、50代のミャンマー人でITを全く知らない人からの応募があるなど、希望している人材が一人も採用できなかった。そういった原体験から、より良いマッチングが行える採用サイトを作りたいと思うようになりました。

求職者側からみた特長として、JobTalentsは就職が決まるとお祝い金がもらえます。これは従来の採用サイトではなかったことです。

その他には、現在スマートレジュメというスマホでレジュメ(履歴書)を作れるアプリを準備しています。

これはタイのオンライン採用市場を拡大するインパクトがあるのではないかと思っています。

オンラインで就職先を見つけるためには、まず自分の履歴書を公開しなければなりません。しかし、タイ人の方には履歴書を自分で作れない方が多いのです。日本ではアルバイトの面接などで履歴書を書く機会がありますが、タイでは学生アルバイトをすることは日本ほど一般的でなく、多くの方は履歴書に触れる機会がありません。そのため従来のほとんどの採用サイトではフォームを埋めていくと履歴書ができる機能が用意されています。

しかし、PCよりもスマートフォンの普及が著しいタイでは、モバイルを使用して簡単にレジュメが作れるようになれば、サイトを利用して仕事が見つけられるユーザーが増えるのではないか。そうするとオンライン採用の市場規模自体を拡大できる、と考えています。外国人として起業するからには既存の地場プレイヤーからパイを奪うのではなく、市場の拡大に貢献するようなことをしなければいけないと考えているためこのような取り組みを重要視しています。

登録企業は、100社ほどで日系、欧米系、タイ系がそれぞれ同じくらいの割合でいますね。IT業種を中心として日系、タイ系の大手企業の求人からスタートアップの求人まであります。

 

―タイ人の求職者を集めるためのマーケティングはどうやっていますか?

リアルとWebを併用して行っています。リアルでは大学でのセミナー、イベント出展、WebではSEO、SNS、広告を中心にタイ人にサイトを知ってもらっていますね。Facebook広告やGoogleアドワーズで広告を打っていますが、今後はソーシャルからの流入をもっと増やしていきたいと思っていて、タイ語でのバズらせ方などを模索しています。また、タイはLINEが大人気で、日本に次ぐユーザー数を誇っているため、LINEスタンプを制作してマーケティングに生かす計画を進めています。

 

日本人としてタイでITをやることが使命だと思った

写真②
―どのような経緯で起業されたのですか?

2年前に大手企業の駐在員としてタイに赴任しましたが、そこから独立し、去年の3月にサービスをローンチしました。

学生時代には社会起業に興味があり、病児保育事業をやっているNPOでインターンをしたり、ボランティアで東南アジアを訪問したりしていました。そこでは、トイレを掘るワークキャンプや山奥にある学校に物資を届ける活動をしていましたね。それらにやりがいを感じる一方で、ビジネスや事業を通じて現地に貢献したいという気持ちを抱いていました。

社会人を数年経たところで、タイに赴任する機会を得ましたが、大企業の駐在員という働き方がやや肌に合わない面がありました。日本の本社の意思決定で動くのではなく、現地で考えたことをスピーディーに実行した方が貢献できることが多くあると感じました。そんな背景もあって、自分の身一つでローカルのマーケットに入り込み、事業を創りたいと思うようになりました。

また、日本人の若手としてタイで何かしなければといった使命感もありましたね。

日本のプレゼンスをタイでもっと上げていきたいと思っていました。

タイの海外からの直接投資のうち、3分の2は日本が占めており、日本はタイでそれだけ大きなプレゼンスを持っているんです。また、世界各国の在留邦人数でもバンコクがトップ5に入っていることもあり、日本にとって欠かせないパートナーとなっています。

これまで日本は製造業を中心にタイで存在感を築いてきましたが、産業の構造が変化し、今後タイでもサービス業やIT産業が重要になっていきます。成長産業がITにシフトする中で、私がタイに来た当初は欧米のIT起業家・投資家が既に活躍を始めている一方で、日本人のIT起業家やベンチャーキャピタルはまだほとんどおらず、このままでは10年、20年経った時に日本のプレゼンスが下がってしまうという危機感を抱きました。そんな背景から、これからも日本人が東南アジアで必要とされ続けるためには、ITで何かやりたいと思い起業を決意しました。

写真③(左から岩﨑氏(日)越氏(日)ジェーン氏(タイ)ナット氏(タイ)シンバ氏(米))

―今後のビジョンを教えて下さい。

まず今やっている事業の基盤を固めることが大切ですが、その先に、就職が困難な人への就職支援をしていきたいと思っています。タイでは一定の大学以下の学生は一般企業の採用の対象にならないという現状があり、そのような学生は知り合いのツテで就職先を探すなど選択の機会が限られている。しかし、そんな学生の中にも能力のある人は必ずいるので、就職の選択肢を広げる支援をしていきたいと思います。そこから、タイの山奥にあるような村で教育支援を行うなど貢献できることの幅を広げていきたい。早く、そういった部分に関っていきたいと思いますね。

 

日本とタイの良好な関係を子供達の世代にも受け継ぎたい

 

―日本の若者に何か伝えたいことはありますか?

これから、若い世代の人が仕事をする中で海外と関わることは確実に増えます。全員という必要はありませんが、興味・関心のある方は是非一度海外で働く機会を得てほしいと思います。東南アジアには日本人が働くポジションはたくさんあるので、日本人として海外で働くとはどういうことか、一度体験するだけで多くの気付きがあるはずです。海外に出て、「日本のキャリアのレールに沿わなければ」という思考の枠が外れた方が豊かな人生を送れると思いますし、何より楽しいと思います。

タイ人は親日で、日本人に良くしてくれることが多いです。その優しさに触れる度に、いかに先人が日本とタイの関係を築いてくれたかを切実に感じます。これからも自分の子供の世代に良好な関係を受け継いでいくために、東南アジアの人達に貢献し続けたいと思っています。そんな志を持った仲間が東南アジアにこれから増えてくれると嬉しいですね。

 

 

(文・インタビュアー:長屋智揮 校正:杉江美祥)

Interviewed in Aug 2014

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ABOUTこの記事をかいた人

長屋智揮

同志社大学政策学部卒。在学中に休学し、インド・バンガロールで会社の立ち上げ、事業拡大に関わる。それをきっかけに、今後急成長が見込まれるアジア各国の市場に興味を持ち、現在ASEANを周遊しながらインタビューを行う。現在は渋谷のIT系企業に就職。