「時間や場所を選ばずに、低価格でタイ語を学べるサービスがあればいいのに」。自身が感じた問題意識を元に、バンコクでオンラインタイ語学校を起業したTLP代表の神谷和輝氏。まだ25歳の若き起業家を突きかす原動力は何なのだろうか。

 

《プロフィール|神谷和輝氏》
1988年生まれ / 愛知県出身 大学中退後、タイへ留学。日本に帰国後はフィリピン留学事業に携わる。2013年11月にタイに移住し、2014年5月に「オンラインタイ語学校TLP」を立ち上げる。 現在は「語学を通して、日本とタイの想いを通じ合わせる」をモットーにバンコクで奮闘中。

 

低価格の授業がいつでも受講できる、オンラインタイ語学校

 

ーサービスの内容を教えてください。

ホームページ
オンラインタイ語学校TLPのウェブサイト

Skypeを通じて、タイ人の先生からマンツーマンでタイ語が学べるオンラインのタイ語学校です。授業料は50分490円からと低価格で、11時〜25時までの好きな時間にオンラインで授業を受けることができます。タイ人の先生が日本語検定2級、3級を取得しているので、タイ語や英語が全く分からない人でもゼロからタイ語を学べます。また、弊社で独自のカリキュラムを開発し、リアルなタイ語学校に行くのと変わらない質の授業を提供しています。

ーどんな方がこのサービスを利用しているのですか?

ユーザーはタイと日本にそれぞれ50%ほどの割合ですね。日本在住のユーザーは、大学生またはシニアの方が多い。大学生は、これからタイに留学する人が多いですね。シニアの方は、これからタイにロングステイしたい方、また若い頃にタイを旅されていてタイが大好きな人が多いです。タイ在住のユーザーは、現地でビジネスをしている人がほとんど。インターネットさえつながれば、場所や時間に縛られずに授業を受けられるので、忙しい駐在員や現地採用の方にも多く使っていただいています。

特に現地で働いている方にとって、タイ語を学ぶことには大変意味があると思います。バンコクには多くの外国人が在住しており、一見国際都市に見えますが、意外と英語はほとんど通じない。そのような環境では、コミュニケーション上の問題がよく起きます。日本語が流暢に話せるタイ人でも、日本人の話すスピードが速すぎ、伝わっていないことがよくあります。また、通訳を雇った場合でも、タイ人同士の会話が全く分からなければ「自分が伝えたいこと、ホントに伝えてくれてるのかな?」と不安になってしまいます。

タイ人と信頼関係の構築する上で、タイ語を話すことは重要です。タイ語で少しでも話そうとする姿勢を持っている日本人上司の元では、タイ人の部下は長く働いてくれますね。「タイ語を話そうとする姿勢」があるかどうかが、タイ人をマネージメントする上で重要だと思う。このような背景から「少しでもタイ語がわかるようになりたい」といったニーズを、現地で働いている人の多くが持っているようです。

 

ー講師の採用はどのように行っていますか?

Facebookでタイ人の日本語コミュニティに募集要項をポストしたり、タイ人向けのフリーペーパーに広告を掲載して講師を集めました。現在は50名ほどの先生が講師として登録しています。講師は厳選して採用しており、日本語が話せるか、時間を守れるかと行った点を始め、実際に疑似レッスンを行っていただき採用の可否を決定しています。これまで合計で500件ほど問い合わせがあり、多くの応募者から電話が殺到しました。在宅勤務が可能な点、時給が比較的良いといった点に魅力を感じて応募してきた人が多いようです。
TLP神谷さん②

 

「起業なんてリスクじゃん」と思ってさえいた

 

ーどのような経緯で起業されたのですか?

大学1年の時にタイを訪問した際、クーデターで空港封鎖に巻き込まれました。政治に興味があったこともあり、「なぜタイではこのようなことが起きるのだろう?」とタイに興味を持ち始めた。その後タイで1年間の留学を経験し、その後はフィリピン留学関係の仕事を2年間していました。しかしタイへの想いが忘れられず、「何かしたいなあ」と再びタイを訪問。その当時は全く起業家志向なんてなく、むしろ「起業なんてリスクじゃん」とすら思っていました。(笑)

そんな僕が起業に至った経緯として、日本でタイ語を勉強していた時の問題意識がありました。既存のタイ語学校は授業料が高く、受講できる時間が限られている。そんな現状に不満を抱き「時間や場所を選ばずに、低価格でタイ語を学べるサービスがあればいいのに」と思うようになり、オンラインタイ語学校のアイデアを思いつきました。同じようにタイ語を学ぶ友人にヒヤリングし、ニーズがあることを確かめ、サービスを立ち上げたいと思うようになりました。「やりたいこと」がベースにあって、それを実現するための手段が起業だったという発想ですね。

タイに滞在中、起業に至る直接のきっかけとなった出来事がありました。僕の先輩がたまたまタイを訪問し、会って話している時に「お前何がやりたいの?」と聞かれました。そこで、先輩にアイデアを話すためにオンラインタイ語学校のアイデアを1日で資料にまとめプレゼンしました。すると、なんと「それやってみよう!」とそのアイデアに出資していただくことが決まり、タイで起業することが決まった。先輩からの出資が決まった翌月の2月には法人を設立し、タイ人の講師を採用した後、5月に正式にサービスをリリースしました。

 

ーサービスを通じて、どのような価値を世の中に提供したいですか?

僕たちは「 語学を通して、日本とタイの想いを通じ合わせる 」という想いを持ってサービスを運営しています。タイと日本の関係は深く、多くの日本企業がタイに進出したりと二国間の「架け橋」は既にあると思う。その「架け橋」を崩さないようにするのが僕たちの役割だと思っています。

少し前まで、中級ホテルのテレビはほとんどソニーやパナソニックでしたが、最近はLGなどの韓国メーカーに競り負けています。その理由は韓国人駐在員のタイ語レベルにあると思う。彼らのレベルはかなり高く、タイ語を使いこなして営業を行い、あっという間に現地に入り込んで契約を取ってくる。日本人駐在員が3,4年で日本に帰ってしまうのに対して、韓国人駐在員は「一度タイに来たら10年くらいは現地にいる」という覚悟でタイ語をマスターするようです。

このように日本の製品が他国のものに取って代わられると、僕らの先輩方が築いてきた日本とタイの架け橋が崩れてしまうので、タイが好きな者としてそれは止めたいと思う。このような背景から、このサービスを通じてタイ語を話す日本人を増やし、日本とタイの関係を維持していきたいと思います。
TLP神谷さん③

ー今後のビジョンを聞かせてください

ユーザーに最も支持されるタイ語学校にしたいと思います。価格や授業の質、ユーザーへのフォローで、既存のタイ語学校に負けないサービスを提供したい。それに加え、今後日本語を学びたいアジアのユーザーに、日本語を教えるサービスも提供したいと考えています。先生として登録しているタイ人が、日本語を学習したいアジアのユーザーに日本語を教えるという事業も今後行う予定です。

 

「世界を変えるサービス」だけが正解ではない

 

ー最後に一言お願いします

最近よくスタートアップ業界で「資金調達何十億」「世界を変えるサービス」といったスケールの大きな話をよく聞き、その度に「スゲーな」と感じます。しかし僕のように、「ニッチな市場にイノベーションを起こしていく」という発想を持っている人がいてもいいんじゃないかと思う。既存のタイ語学校の仕組みを変えるという自分の身近なところに目を向け、その市場に「オンライン学校」という新しい選択肢を提供することもイノベーションじゃないでしょうか。そこで事業を起こし、成功体験を積んだ上でスケールの大きな事業を起こすというのもありなのかなと思います。

 

(文・インタビュアー:長屋智揮 校正:杉江美祥)

 

《神谷氏関連情報》

■オンラインタイ語学校TLP
http://tlp-school.com/

■Facebook
https://www.facebook.com/kazuki.kamiya.102

■twitter
https://twitter.com/kazujpn1988

Interviewed in Aug 2014