海外インターン、就職活動、新卒経験を経て2年目でカンボジアへ。好奇心×行動力で道を切り開く|小川紗裕里さん

海外インターンや就職活動、そして新卒時代を経て社会人2年目でカンボジアへ。「やってみないと分からない」「やってみて学ぶ」ということをまさに体現し、ご自身の道を歩む小川さん。今回は新卒までの学生時代に加えて、社会人1年目を経た現在の小川さんの「想い」に迫りました。

《プロフィール|小川紗裕里さん》

国立大学計量経済学専攻在学中に、タイガーモブのインド合宿への参加やインドネシアの投資ファンドでのインターンを経験。卒業後日系の会社に入社、2018年4月からカンボジアの現地法人に駐在予定。

人生を変えたタイモブインド合宿、そして就活への道

― そもそもなぜ海外インターンに参加しようと思ったのですか?

周りが就活モードになる大学3年生の秋ごろ、自分は社会人になることが全く想像できなくて。自分がやりたいことも全然分からないという状況だったんです。就職について知りたいなと思い、国内の会社でインターンを始めるなど少しずつ動きはじめました。

国内インターンをやっていくうちに「他人と同じことをしても面白くない!」と思ったんですよ。

国内ではなく海外でできることを探した結果、海外インターン仲介会社のアジトラ(現タイガーモブ)と出会いました。

― 初めにタイガーモブ主催の「インド合宿」へ参加したということですが。

2016年末に2週間インドで行われた合宿に参加しました。この合宿は私の人生を大きく変えるような出来事でした!

合宿の内容としては「バンガロール(インドの都市)の10年後を予想しよう」という課題のもと、「1時間でインド人100人にインタビューを試みる」といったフィールドワークなど毎日さまざまなことを行いました。自分の行動が課題に適しているのかをメンターや学生から評価されたり、夜な夜なそれぞれの将来像なども語り合うなど濃い時間でしたね。

さまざまなことを考え実践することを繰り返す中で、自分の強みや苦手なことなどが徐々に分かり、やりたいことも見つかっていくという経験になりました。

最終的には「現地の人と関わりたい」「現地の人が主体的に持続的にやっていけるようなお金を稼ぐ環境づくりをしたい」という想いを抱くようになりました!

インド合宿で描いた未来予想図の発表の日の集合写真

― インドから帰国後早速動きはじめましたね。

貧困層と富裕層が入り混じるインドで過ごしたことで「不平等」というものについて考えるようになりました。本当だったらみんなにあるはずのチャンスが環境によって失われているなと。インド合宿の最後には「JICAの職員になってインフラ整備などをしたい」という未来を描きました。

インドから帰国した後、大学が募集していた「UNOSDP Youth Leadership program inTOHOKU」にサポートスタッフとして携わることになりました。「スポーツを通した開発」をテーマにディスカッションをするというプログラムだったのですが、サポートは大変でしたね。しかし英語でのコミュニケーションはもちろん、参加者にどのように主体性を持って動いてもらうかなど本当に勉強になりました!

また、スポーツ×教育という内容だったので、スポーツの力を感じるとともに日本の教育は詰込み式で生徒の考える力がつかないと思うようになりました。

そこから父が監督をやっているバレーボールチームのコーチをやり始めたり、塾の講師を始めたりもしました。どちらも「子供が意見を言う、自主的に考える」ということをやってほしくて様々な取り組みも考えました!

UNOSDP国連プログラムにサポートスタッフとして携わったときの集合写真

― さまざま経験をした後、どのような観点で就職活動をしたのでしょうか?

「現地の人と関わりたい」「現地の人が主体的に持続的にやっていけるようなお金を稼ぐ環境づくりをしてほしい」という想いはインド合宿から変わっていませんでしたね。

民間企業、NGOなど様々な組織や様々な働き方がある中で自分はどのスケールで現地の人と関わりたいかを考えました。国連やJICAの方からメガバンク(マイクロファイナンスを行っているため)の方までさまざまなお話を聞く中で、自分は現地の人の声をききたい、現地に行く環境が良いと思うようになりました。このような観点から入社を決めたベンチャー、青年海外協力隊、ジェトロ、JICAに絞りました。

社員としての立場でカンボジアに1年目から行くか、青年海外協力隊(JICAボランティア)としてネパールに行くかまでさらに絞り、「ボランティアとしてかかわるよりも、社員として現地に滞在したほうが良い」という考えから現在の会社への入社を最終的に決めました。

インターンとしてインドネシアへ渡航

― 就活も終わりインドネシアでのインターンをしていましたね。

就活が終わり大学生活でやり残したことを考えました。就職後にカンボジアに行くことを考えると英語環境での仕事をすることへの不安や、新卒の自分が海外で働いてどう役に立つのかへの疑問を解消したいという目的で海外インターンを決意しました!

「自分に負荷をかけ成長したい」という想いから裁量権の大きいところを希望していました。タイモブでマッチングしてもらい、インドネシアの投資ファンド会社へ約2か月のインターンが決まりました。

― 具体的に何をしていたのでしょうか?

投資信託商品を日本の大企業に販売する会社での、営業ポジションのインターンでした。社員はインドネシア人が30人弱。テレアポから始まり、日本人につなげてもらうために英語でインドネシア人と話して、という毎日でした。

また、業務と並行してインドネシアに住む日本人のコミュニティにも入り、様々な方とお会いしていました。営業にもつながるし、インドネシア駐在の方にも興味があったからです。そこで他の日本人の方を紹介していただいたり、プレゼンの資料のダメ出しをしていただいたりしたこともありましたね。

2ヶ月弱のインターンだったので営業としてはやりきれなかったこともありましたが、発案して行なったことは2つありました。1つ目はインターン用のWebサイトを作ったことです。過去のインターン生にもインタビューをし、どのような業務で、何を学んだかがわかるようにまとめました。

2つ目はFacebook。現役のインターン生に加えてインターンのOB・OGや、インターンを検討している学生を集めたグループを作り投資の知識などを共有したことです。業務に関する知識はローカルスタッフが教えてくれました。社長は「インドネシアと日本の懸け橋になりたい」という思いから、積極的に日本人学生をインターンとして採用していました。一方で、現地のスタッフ視点ではインターン生を受け入れても、知識をゼロから教えなくてはいけないので、仕事を増やすだけという状況でした。そのため、事前に知識の共有ができれば、現地のスタッフの負担も減ると思い、Facebookグループの作成に至りました。

― インターン中、日本人として働くうえで大切だと感じたことはありますか?

日本人同士の信頼関係ですね。プレゼン資料作りなど自分の仕事をしながら、テレアポの返事をするのは大変でつい連絡が遅れてしまうことがありました。そこでお叱りを受けたこともあり、即レスを意識するようになりました。

インドネシアは日本人が多くありません。だからこそ、日本人同士の強いネットワークがあるので一度信用を失うと回復するのが難しいと思います。「信用されることの大切さ」をここでは学びましたね。

― タイモブ祭り@インドネシアも開催されていましたね。

タイモブから同時期にインドネシアに来ているインターン生がいたので交流できればと思い開催しました!例えば自分がローカルの社員から「インターン生が来るのは負担にもなる」と言われたときに別会社で働いているインターン生に相談したことがありました。

それまでは社員の立場で会社のために成果を出さなくてはと思っていましたが、「インターンだからそこできることがある」という気付きをもらい、のちにwebサイトやFacebookグループを作ることにつながりました。このような共有や気づきを与える機会を提供したいという想いもありました。

― 「仕事」に対する考えはインターンをすると変わるものなのでしょうか?

もともとボランティア意識が強く、利益を生まなくてはならないことにそれほど興味がありませんでした。しかし投資会社というお金に近いところで働くことによって、金融の知識が事業をやる上で大事なことを実感しました。

自分がまさか金融などに興味を持つとは思っていませんでしたが、「興味の有無に関わらず、新しい環境に飛び込む」ということはさまざまな人を理解するきっかけになるという気づきにもつながりましたね。

インドネシアでのインターン最終日の一枚

好奇心×行動力で新卒の道へ

― 小川さんの情熱はどこからくるのでしょうか?

好奇心はものすごく強いです。それに加えて怖いものしらずというか、なにかあっても大丈夫という思いもあります。インド合宿に参加する前、大学3年生くらいまでの自分は親が求める「正解」を追い求めていたと思います。

しかしインドという地で自分自身や参加者の仲間と真正面から向き合う中で、誰かのために生きるのではなく自分を大切にすることも大事だと思うようになりました!「経済的に自立した女性になりなさい」という親の願いは、自分がやりたいことを形にしていくことでも実現できると思いました。自分の本心に問いかけるようになったことが好奇心や行動力につながったと思いますね。

― 今後のお仕事に対する想いや理想はありますか??

今まで経験したことすべて、次のステップに進むためのきっかけにすぎないですが、今の会社に入社したことも同様であると思っています。仕事をしていく中で、国連やJICAの方と関わる機会もあります。自分の想いを軸にしたときに、どの組織に所属し、何をすることで現地の人にプラスになる働きをしていけるかをさらに突き詰めたいですね。また、3年後には自分が望めば選択できるような立場になれるだけの実力をつけたいです。具体的にはビジネスの経験や知識、クメール語やビジネス英語をもっと身につけたいと思っています。

― 海外インターンに行くかどうか決め切れていない学生にメッセージをお願いします!

海外インターンは行ったら楽しいですし学びになると思います。見えないものは怖いですが、実際見てみるとまた違ったり意外とすんなりできたりすることもあります。必ず得るものがあると言えるでしょう。また、知らないことを知る楽しさをもっていると何事も楽しいと思います。ぜひぜひ一歩を踏み出してみてください!

大学ご卒業、新卒への道へ

※ここからは新卒1年目を経た小川さんへのインタビューとなります。

― 1年間どのようなお仕事をしていたのでしょう。

入社1年目でやっていたことは主に2つあります。1つ目はカンボジアでの子会社設立のための登記の準備など事務的な仕事です。書類収集のために期限を明確化してタスクを洗い出し、スケジュールや段取りを考えて社内外に依頼をする調整業務仕事でした。2つ目はこれからの新規事業に関わる国内外部関係者とのやり取りです。プロジェクトに関わる提案書類を作成したり、プレゼンをしに行ったりしました。試行錯誤の連続でしたが、徐々に信頼関係を気づいていくことができたと思います!

―「現地と関わりたい」という想いで働き始めた小川さん。ギャップなどなかったのですか?

入社後数か月は「ビジネスの進め方」の感覚がなかなかつかめず、何も分からない状態でしたが、「現地に行きたい」という想いを忘れることはありませんでした。新卒でいきなり現地に行く選択肢もあった中、国内に在住して事務的な作業を進めている時などにふと「自分がやりたかったことやれているのか」と不安に思うことも正直ありましたね。

一方で、先を見据えて考えると、日本で1年間働いたことで仕事の全体感やビジネスの基本を理解することができ、メリットもあったと思っています。日本のビジネススタイルの中で与えられた仕事を最大限やるということ、その上で上司や外部の方からダメ出しを受けて試行錯誤を繰り返す良い機会になりました!

1年経って徐々に「出来ないことが出来るようになる感覚」というものがつかめてきて、「自分がやりたいこと」に対してもより実践的に考えることができるようになったと思います。

― 「学生インターン」として既に働いていますよね?

「インターン生」と「社員」という立場は違うということを実感しました。インターン生も社員と同じ心意気で臨むと思いますが、社員という立場の方が会社の顔として見られるということや一つひとつの行動が会社の業績に直結するなど、より責任が大きいと思いました。だからこそ、この「責任」という点は学生インターンの強みでもあると思います。

学生のうちから会社の業務に関わることができること、責任が大きすぎないことを生かしてぜひインターンに参加してほしいです!ただ「責任」や「期待」がより大きい状態でより規模の大きい仕事に関わることにおいては、社会人になってからしか分からない感覚だと実感しました。

― 4月からいよいよカンボジアに渡航ですね。今の想いをお聞かせください!

やっと行けるんだ!という想いと日本で1年仕事をすることができて良かった!という想いですね。

カンボジアでは現地スタッフのマネジメントをメインで行う予定です。所在地はカンボジアですが、現地スタッフは書類管理や期限のあるものを進めることが得意ではないので、日本企業の現地法人としてその部分を管理していくこともミッションだと思っています。また、引き続き日本でプロジェクトを一緒に進めていく外部関係者との窓口として日本とカンボジアを繋げる役目を果たしたいと思っています。

去年はビジネスを進めていく上で必要なことを学ぶ期間でした。2年目は本当に必要とされていることを形にしていくために、現地で悩みながら試しながらやっていきたいと思います。もちろん英語での商談など不安なことは沢山あります。しかし今までがそうであったように、まずは「行ってやってみる」ということを大切にして、ぶつかって学んでいきたいと思います!

― 今後の展望を教えてください。

これから2年半はカンボジア駐在予定です。その先自分自身がどのような選択をしていくかはまた2年半後に考えたいと思っています。就職活動中や入社初期は、自分が海外に行った際にそこでしか感じることのできない想いに魅かれていたので、「現地に駐在し、現地のために」ということをメインで考えていました。

しかし社員として働くうちに、自分の仕事ぶりによってもらった給料に見合う対価をどれだけ払えるか、どれだけ数字として会社に貢献できるかということも大切だと考えるようになりました。駐在をしていく中で、現地駐在と日本で働くのとでどちらの方が現地と会社双方に貢献できるのかを考えたいと思っていますね。

― 20代前半から海外で働きたい人へ一言お願いします!

「20代前半から海外に行って働く」ことの最大のメリットは、「何も知らない」ということと「守るものが少ない」ということだと思います。幸いにも私の両親は元気に生活をしており、私自身も独り身ですが、いずれは「守らなければならないもの」ができると思っています。そうなったときに、躊躇なく「守るべきもの」を守れる自分でありたい。そのために、私は20代前半である今、社会人1年目の今、海外に行って違う世界を肌で体感したいと思うのです。

いきなりしたことのないことを想像することは難しいと思いますので、まずはインターンから新しい世界に飛び込んでみるといいのではないでしょうか。きっと新しい自分に出会えると思います!

取材後記

「やりながら学ぶ」「全ての経験はステップにすぎない」ということは分かっているようで、中々実現できることではないと思います。常に行動し、考えて次につなげる小川さんの姿勢は本当にすごいと思いました。在学中に海外インターンを経験し海外との接点を持ち続けたいと思う人も多いと思います。「インターンと社会人」「日本と海外」の両軸を知っている方のリアルな想いを伺う貴重な機会でした。