若さを生かして海外にトビダセ!ベトナムホーチミンにて日本語教育の改革に燃える吉川俊三氏

定年退職後ホーチミンで活躍する中、若い人にもっと海外生活を経験してほしいと熱く語る吉川氏。国内外問わずあらゆるフィールドでご活躍されてきた日本語教育のスペシャリストに、これからの海外での日本語教育と海外に飛び出す若者についてインタビューし、「若くして海外で働く」という選択肢をもつことの重要性を伺った。

《プロフィール|吉川俊三氏》

大阪府出身。日本で小学校教師を務め、定年退職後すぐにベトナムに飛び出しいくつかの教育現場を経て現在はホーチミンのHUTECH大学にて日本語学部の専任講師を務める。日本語と日本語指導法の教育に取り組んでいる。

幼いころから海外志向

―いつごろから海外に興味を持つようになりましたか。

小さなころから海外に憧れのようなものがありました。

小学生のころはラジオ制作に夢中でラジオをよく聞いていたのですが、ラジオから流れてくる聞いたこともない言語を聞くたびに、世界地図を広げてどの国の言葉だろうと推測するような少年だったんです。高校時代には世界中を飛び回ることのできるパイロットになろうと試みましたが、身体能力的に不可能であることを知りました。

何とか海外で働くことのできる職を考えていた時に、電気系の技術職に就いて海外で働こうと考え、大学では工学・電気工学を専攻しました。

 

 海外の「リアル」な日本語教育現場!

―ホーチミンではどのようなことをされてきましたか。

ホーチミンでは6年間働いていて、あるゆる現場で日本語教育に携わっていました。はじめのころは、社会人の方に仕事で使う実用的な日本語を指導していました。時には、恋人へのラブレターの代筆を頼まれることもありました(笑)。

その後は日本語教育に加え、大学で将来日本語教師を目指す学生に教授法を指導するようになり、より体系的な日本語教育を行うようになりました。

 

―ベトナムをはじめ東南アジアでの日本語熱が盛んになっているとよく聞くのですが、なにか現場で感じることはありますか

はい、現在勤務しているHUTECH大学では、日本語を受講する生徒が以前の160人程度から400人と倍以上になっています。将来日本語をつかって仕事をしたいと志す生徒が多くなった印象です。

 

―どのような生徒さんたちですか。

生徒たちはとてもまじめでいい子が多いです。しかし、いい子が多くて授業の後に理解度を確かめてもみんな私に気をつかってか「よく理解できました」といいます(笑)。もう少し、正直になってもいいかなと感じます。

   (生徒たちに囲まれた誕生会にて)

―その中で日本語教育全般における課題等はありますか。

ベトナムでは日本語熱が盛んであるにもかかわらず、しっかりとした教育法が整備されていない状況です。特に、会話のコミュニケ―ションに苦戦する生徒が多いです。読解や書きはよくできるのですが、会話がなかなかうまくできないために日本語能力試験や日系の会社での面接で実力を発揮できない場合が多くみられます。そのため、授業では会話の重要性を意識しつつ日本語運用ロールプレイを授業に取り入れるようにしています。

 

―ベトナム・ホーチミンでの生活はいかがですか。

都市の印象は、日本とあまり変わらないです。ショッピングモールには人が集まって買い物を楽しんでいます。一方で、少し郊外へ向かうとそこには昔の日本のような風景が広がっていて、昼からお酒を飲んでいる人やボードゲームをしている人がおり、ゆっくりと生活している印象です。

特にホーチミンには、多くの日本人がいて、中には若いうちに起業して成功を収めている方も多いので同世代の若い日本人にはとても刺激的な都市だと思います。

 

今、求められている人材とは!?

―日本語教師の魅力をお聞かせください。

現場では日本と異なる文化を持つ生徒に指導しますので、ときには日本の常識が通じない空間となります。その空間で自分が指導していく中で、自然と異文化を感じることができます。

日本について新たな発見をすることもしばしばあります。商業都市であるホーチミンの学生を見ていると、忙しそうにしている方もいればのんびりしている方も多くて、地元の大阪のような温かな人間味を感じることができます。

授業においてこちらから一方的に指導するとともに生徒たちから学ぶことも多いため、まさに「共育」をすることができます。また、指導した生徒の日本語が上達していくのを見ることはとてもうれしいですし、それが大きなやりがいにもなります。

 

―日本語教師としてどのような日本人が現場に必要ですか。

日本語教師の特徴として高齢の方が多いことが一つありますので、特に「若い」人を求めています。特に、20代前半の方は考え方も柔軟で、海外生活の中で人の営みとしての感性を磨くことができると思います。授業の準備を怠らず、自分なりの指導方法をいろいろと試してみてほしいですね。

 

―その若さが、時に不利益に働くということはないのでしょうか。

もちろんあると思います。教育現場においては「経験の不足」が不利益に働くことでしょう。しかし、失敗しながらでも改善していく姿勢が最も重要なのです。

た、この若さというのは、必ずしも年齢の若さを指すわけではありません。教育に対する熱意や教師として生徒の将来をしっかりと考えられる、そんなフレッシュな心をもつ人に最も向いている職が、日本語教師です。

 

―アセナビの特集に「新卒海外特集」があり、新卒でアジアで働くモデルに注目していますが、それについてどうお考えですか。

参照:新卒海外就職特集

「新卒は少なくとも3年間日本で働くべき」という日本社会のセオリーのようなものがあり、新卒海外は敬遠されがちという事実があると思います。確かに日本の方が新卒の教育が海外に比べてしっかりしているし、生活面の困難も少ないでしょう。

それでも新卒海外は強い意志があればやってみてもいいのではないかと思います。長期間住むことで、短期間の観光では感じ取れない、異なる文化・考え方を経験してほしいです。

異文化に直面するときその文化を受け入れることは必要とされますが、むしろそのあと彼らとどのようにうまく仕事や生活を共にしていくかを考えることが重要なのです。「新卒」の方は特に異文化に柔軟に対応しやすいのではないでしょうか。

反対に、私のように年のとったものは、ある程度の「あたりまえ」や経験が身についており、なかなか新たな考えが身に付きにくいです。つまりこれまで培った経験が現場の指導の際に弊害になる場合もあります。それゆえに、頭が柔らかいうちに海外に出て一定期間仕事と生活をすることをお勧めします。

また、近年海外インターンという形で海外に出る方も多いようですが、無給である場合やあまり業務をさせてもらえなかったという声もちらほら耳にします。それより、私はやはりしっかり働くという形で給料をもらい社会人の一人として生活をすることをお勧めしたいです。

自分で稼いだお金でやりくりし、慣れない生活様式に苦労しながら生活を送り、現地社会の一員となって2・3年生活をするのは素晴らしい経験です。そしてその経験はその後の長い人生に良い影響を与えつづけるでしょう。

(異文化を感じ考えることはとても貴重な経験となる。写真は日本文化フェスティバルでの一枚。)

「エネルギッシュ」な人材を求む!

―将来のビジョンについてお聞かせください。

ベトナムの日本語教育全般の改善につとめていくつもりです。特に学校機関での日本語の会話を中心とした指導法を改善していく予定です。指導法を改善することで将来ベトナム人の先生が生徒にしっかりとした日本語教育を行うことを期待しています。

また、日本人ネイティブの指導者が不足しているので日本人の指導者を増やすことにも取り掛かっています。特にエネルギッシュな若者世代に期待しております。ぜひ海外に飛び出してみてください!

 

編集後記

今回のインタビュー中、吉川氏が日本語教育へかける熱心な思いをお話されていたことが特に印象的だった。そして時折みせる温厚な表情が、ホーチミンでの生活の充実度をあらわしていたように思う。

私は、吉川氏からASEAN×日本語教師の魅力を伺い、将来の新たな選択肢が増えた。また、若いうちに(新卒で)ASEANで日本語教師として働くという選択も斬新でとても勉強になった。どの道に進んでもメリット・デメリットはある。だからこそ、大事な選択の際には自分の腑に落ちるくらい考えたうえで答えを出したいと思うようになった。ご多忙の中、取材に快諾してくださった吉川氏に感謝したい。

ABOUTこの記事をかいた人

眞木 直樹

長崎大学多文化社会学部3年。ASEANデビューはマレーシア。その後タイ・ラオス・ベトナムを訪れました。ベトナムでは日本語パートナーズ短期派遣事業に参加し日本文化の紹介を行いました。2018年4月からフィリピンに留学予定です。アセナビでは、九州×ASEANを発信していきます!!