2017.06.24

2017年3月29・30日に開催された、テック系スタートアップの祭典“Slush Tokyo 2017”(イベントレポート)。そこで出会ったスタートアップ界の豪傑5名へのインタビューを掲載するのが、本連載「アジアで活躍する欧米人の頭の中」です!

第4回は、クラウドサービス(※)などの提供をするIT企業・株式会社テラスカイのグローバルアライアンス部部長ジェイソン・ダニエルソン氏。芸人の厚切りジェイソンとして超売れっ子でありながら、IT専門家・投資家としてのキャリアも歩む同氏は、日本人が世界で活躍するための働き方に警鐘を鳴らします。同氏が提唱する、挑戦の方法と条件とは?

(※)ユーザーが必要な機能を、必要なときに、必要な分だけサービス として利用できるようにしたソフトウェア。

《プロフィールジェイソン・ダニエルソン氏》
1986年生まれ、アメリカ出身。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校・大学院卒業。ミシガン州立大学在学中に1年間来日し、旭化成勤務。アメリカ帰国後、GEヘルスケアにてエンジニア職を務めたのち、ソフトウェア会社BigMachinesの日本法人立ち上げに参画するため、2011年から日本に定住。現在はクラウドインテグレーション・コンサルティングを提供する株式会社テラスカイのグローバルアライアンス部部長。2015年、2016年のR-1グランプリファイナリスト。

 

基盤を残しつつ、できるだけ早く人前でやろう

ー ジェイソンさんが日本に定住を始められた2011年頃と比べて、日本のスタートアップはどう変化していますか?

スタートアップは最近多くなった気がするけどそこまでメディアに出ないし、あまり普及していない印象。去年のSlushも日本開催だったのに、台湾の会社など他のアジアの国から来た人々が多かった。日本より他の国の方がグローバルを目指したスタートアップが多いです。

 

ー グローバルを目指すスタートアップをつくっていくために、日本人に必要なことは何ですか?

基盤を残して、リスクを小さくするビジネスのやり方です。全ての可能性を1つにかけるのではなく、これもやってみる、あれもやってみるというように、スモールスタートでやっていくと、どれがうまくいきそうなのかがわかります。グローバルでも日本だけでも、サービスをできるだけ早く人前でやり、ターゲットに早く人に使ってもらうと、大きな失敗しないはず。

日本のスタートアップは慎重すぎる。全ての要件をカバーしようとしすぎてて、結局人前に出すのが遅れています。その間に既にユーザーがたくさんいる海外の会社に負けてしまう。

 

ー 日本人は海外進出を大げさに考えすぎてしまっているんですね。

日本人は最初から全て完璧にやろうとしてしまっており、その背景には失敗が許されない文化があるのでしょう。リスクを最小化し、危険な挑戦は避けるべきですが、ちょっとした失敗はいっぱいした方がいいです。それを繰り返すことによって、何がうまくいくのかもわかるはず。そのやり方はリーンスタートアップといって、アメリカで流行っています。

日本にはまだ、創業から上場まで四半期ベースで1回も赤字を出すべきではないと考えているスタートアップがいっぱいありますよね。でもそれだと、あまり投資ができず、可能性が限られてしまうと思うわけです。

 

全世界を対象にして戦わない企業は、全世界を制覇しようとする企業に負ける

ー ジェイソンさんが現在グローバルアライアンス部部長を務められるテラスカイは、日本とアメリカを中心に事業を展開されていますが、東南アジアとは関わりがありますか?

ほとんど日本で、グローバルはアメリカとヨーロッパです。Salesforceの画面開発を簡単にできるSaaSツールのSkyVisualEditorは全世界で販売していて、シンガポールで1社使っていただいています。

 

ー SaaSビジネスとして東南アジアマーケットはどう捉えられていますか?

テラスカイの方針として、日本で成功した製品は、グローバルに出す前にまずアメリカで成功するべきとしています。そうしないと、シンガポールや他の東南アジアの国々で成功したとしても、ゆくゆくはアメリカでたくさんの資本を調達した会社に負けるんじゃないかとということです。アメリカでたくさん事例をつくれば、それも乗り越えられます。

世界に出ている企業はたくさんありますが、その中でも全世界を対象にして戦わない企業は、全世界を制覇しようとする企業に負けるのではないかという考え方です。アメリカで成功しているからこそ全世界に広がりやすい。

 

ー 2015年にテラスカイさんがIPOを果たして、それをきっかけとして働き方が変わったなどあれば、ぜひ教えていただきたいです。

上場してから、テラスカイは色々な企業に投資を始め、シナジーが生まれる会社にお金を入れて、アライアンスを組むことが増えています。このように新しい部門や方針がたくさん決まりましたが、僕自身の働き方は特に変わっていないです。

(ラクスル代表松本氏と“The Future of Work Styles”を議論する、Petli Antila撮影)

 

芸人としても、“よりよいリスク”をとる働き方を

ー ではここで、ジェイソンさんに芸人としてのお考えも伺いたいです。最近はCOWCOWさんがインドネシアで活躍し、吉本興業さんが東南アジア各国に若手芸人を送っていますが、ジェイソンさんが芸人として他の国で仕事をすることは考えていないのでしょうか?

私はこれからも日本にいます。日本の芸人市場が面白いから日本で芸人をやっているわけではなく、日本には家族などの深い縁があるからです。国の面白さよりも周りの縁が大事です。

これはビジネスの話とも通じるのですが、全部捨てて他の国に行くのは、さっき話した、やってはいけない危険な挑戦です。基盤を残すために、日本からは離れない。他の国よりも日本で新しいことをやった方が当然成功しやすいんですよね。

常に考えて“よりよりリスク”をとる。リスクを最小かつ、リターンを最大にする選択をするべきです。

 

ー そもそもジェイソンさんが日本に来ることはリスクが高いことではなかったんですか?

私は超リスクが小さい方法で日本に来たんですよ。アメリカの会社の日本法人立ち上げを任されたので、渡航に必要な費用は会社が全部負担してくれて、法人がダメになったとしても本社に戻るだけの話なので、リスクはゼロでした。

 

ー 素敵な働き方ですね。日本のスタートアップも見習うべきところがありそうですね。

芸人としてもそうですよ。会社を辞めて、単身で吉本に入るとか、1年間働かないだとか、そういう人が多いですが、それはリスクがとても高く、成功する確率が低い。

その一方で私は会社で働きながら芸人をやったので、リスクはゼロ。もし芸人として売れなくても、会社にいるから何も変わらない。基盤をつくれば、そこから挑戦する自由が生まれる。

 

ー ジェイソンさんのように二足のわらじを履きながら、タイムマネジメントやコミットメントの量を維持できる人は少ないと思うのですが、何かアドバイスはありますか?

やっていることは、受験勉強と部活を両立している高校生と同じです。それと同じように働けば、みんなできるはずですよ!

 

編集後記

Slush Tokyo連載記事の第4弾は、日本とアメリカで豊富な経験を持つジェイソン氏。「全世界を対象にして戦わない企業は、全世界を制覇しようとする企業に負ける」「スモールスタートで、早くより良い“リスク”をとる」という力強い言葉で、“縁のある”日本に激励を飛ばしてくれた。本連載を通して、日本のアジアでの戦い方を示してくれたジェイソン氏に感謝したい。