「新興国を舞台に農村アントレプレナーの創造を通じて農家を豊かにする」AGRIBUDDY CEO 北浦健伍氏 (with English version)

2017.06.13

アジアの新興国における農業の課題解決に取り組むAGRIBUDDY CEO 北浦健伍氏。同社が提供するサービスはNIKKEI FINTECH CONFERENCE 2016では最優秀賞、未来2017では最優秀賞&SMFG賞を獲得。そして直近では新経済連盟主催の新経済サミット(NEST) 2017のピッチコンテストで最優秀賞を獲得している。そんな実績をもつ北浦氏に現在の事業に至った背景、海外ビジネスのリアル、今後のビジョンについてお伺いした。

English version: “Enriching farmers through the creation of rural entrepreneurs set in emerging countries” AGRIBUDDY CEO Kengo Kitaura

《プロフィール|北浦健伍氏》

1971年大阪府生まれ・カンボジア在住。中学卒業と同時に渡米し、カリフォルニア州アナハイムのウエスタン・ハイスクールに転入。帰国後、消費者金融会社経営などを経て2010年よりカンボジアに移住。AGRIBUDDY Ltd. CEO。

新興国農業を支えるプラットフォームを提供

ー まず初めに、AGRIBUDDYとその事業内容について教えてください。

AGRIBUDDYは農村に住む人々をHappyにしようと思い、始めました。現在の世界の食糧生産の状況を見ていると、その多くが途上国の小規模農家で生産されており、その割合は約80%まで上昇することが予想されています。そして途上国の農業は小規模農家によって支えられています。

現在、5億7,000万世帯の小規模農家がいて、彼らが農業を行っていくためには、約45兆円ものファイナンスしなければならない金額が足りていません。そして彼らは、ファイナンスやマーケット情報にアクセスする手段を持っていません。

そこで彼らにきちんとお金や情報を行き届かせるために、まずはアジアの小規模農家を束ねる「バディー」、農村アントレプレナーを作っています。バディーはスマートフォンを持ち、インターネットに接続されていない現地農家を束ねたネットワークを構築し、詳細な個人データや農村データを拾い上げています。現地農家がいつどれくらいのお金を使って、どれくらいの収穫を得たのかというデータです。

それが分かると、各農家に与信を行うことができ、収穫量と収入の増加に必要な参加者を募って、彼らに資材の貸し出しなどを行うことができるのです。

(実際のサービスのアプリ写真)

Photo From TECHWAVE

こういったプラットフォームを通じて、農村に住む多くの人々にいろんなものを提供し、彼らを豊かにすることを目指しています。

 

グラミン銀行創設者ムハマド=ユヌス氏に感銘。前職の金融業の経験が現在の事業に反映

ー 現在の事業に至った背景について教えてください

海外で勝負してみたい、社会に良いことができるビジネスをしてみたい、スケール可能なビジネスをしてみたい、この3つが事業を始める上で考えていたことでした。

カンボジアは僕が来た10年くらい前は特に何もなく、そこで何かを始めれば社会に良いことができると思いました。その中で世界の大きなテーマとしては人口増加に伴う食糧不足の問題がありました。ビジネスとしては大きなチャンスがあり、うまくいけばスケール可能でした。そこでまずは農業をやってみようという話になり、始めてみました。

事業を始める前にカンボジアにいて思ったことは、現地の人はお金がなくても豊かであるということ。彼らを見ていると昼間は寝ていて、食べることに困っている様子ではありません。

そこでもしこの人たちが寝ている時間をきちんと働くことに使えば、お金持ちになることができるんじゃないかなと考えました。この世の中にはお金で解決できる問題もたくさんあります。病気になっていても病院にお金を払えば治療してもらえるし、お金を出して良い教育を受けさせれば良い職業にも就くこともできる。そういった問題は経済的に豊かになれば解決できるからこそ、私が事業を行い、彼らを豊かにしたいと思いました。

それで最初はカンボジア人に定着していなかったまともな農業を日本式で始めてみました。1000 ha、東京都中央区くらいの土地を借りて、そこにキャッサバという作物を植えました。

(カンボジアでの農作業の様子)

事業を行うからにはいろいろと現地の農業について調べます。調べてみると情報がでたらめなものばかりでした。信頼できるはずの政府の統計情報も実際の情報とは全く異なるような状況。

そうこうしているうちにカンボジアの景気が良くなり、農業を行うために雇っていたカンボジア人の賃金が上昇し、倍になりました。雇う側としては賃金が倍になると困ってしまいます。

しかし、当初、我々はカンボジアに良いことをしようと思って、ビジネスを始めました。けれどもカンボジア人の賃金が上昇して、我々が困るっていうことは本末転倒な話です。しかも彼らの賃金が倍になったからといって彼らの生活が大きく変化することはなく、相変わらずでした。

我々はその人たちに対して、炎天下の中で、働かせているわけです。賃金はもちろん払っているけれども、このようなやり方のままでは彼らを豊かにすることができないと気付き、そこでそもそも情報が分かっていなくて、散々な状況を何とかしたいと思いました。

私のもともとの職歴が金融業であり、金融業っていうのは相手のことが分からないとお金を貸すことが出来ません。例えば、日本でしたら○○大学に出ていて、○○商事に勤めている。そして年収は○○万円で住所は東京の○○区ですっていう情報が分かっていたら、この人にお金を貸しても大丈夫という信用ができて、お金を貸すことができます。

一方、途上国の農家は信用できません。なぜなら彼らの情報が全く分からないからです。そのため誰にも相手にされず、本来必要なお金を借りることが出来ません。そういった悪循環があるから、とりあえず今見えないものを可視化することが我々にできることだと思い、現在の事業に至ったわけです。

 

ー 先ほどの話の中で、海外で勝負してみたい、社会に良いことができるビジネスをしたい、スケール可能なビジネスをしたいという3つの軸があったのですが、こういう風に考えるようになったきっかけを教えてください。

海外で勝負してみたいと思うようになったのはアメリカの学校を中退したときの後悔の体験からかなと思っています。

中学を卒業後アメリカの高校に行って、そこで結局アメリカの高校を中退してしまいました。いまだに私は学校を中退してアメリカから日本に帰ってきたことを後悔しています。日本で自分のビジネスをしているときも、いつか海外で勝負してみたいなと思いながら過ごしていました。ずっと抱いていたアメリカから日本に逃げ帰ってきた後悔が海外で勝負しようと思ったきっかけになります。

社会に良いことができるビジネスをしたいと思ったのは前職の金融業が常にバッドエンドであったためです。

金融業の利益は金利です。金利なしにはビジネスをやっていくことができません。顧客が友達でももちろん金利をつけてお金を貸します。けれども貸したお金が返ってこなかったら、これまでの友人関係が終わってしまいます。

せっかく縁を持った人たちでも最後はお金のもめごとで縁が切れてしまうようなことがありました。もちろん金融業をやっていて儲かりましたが、とはいえお金貸しというビジネスは嫌だなと思っていました。

そうこうしているうちに金融業というビジネスができなくなってしまって、その時に同じ金融業でもノーベル賞を獲った人がいました。グラミン銀行を創設したムハマド=ユヌスという方です。あの人を見たときに何が違うのかなと考えました。彼の方が我々が貸している相手よりめちゃくちゃ貧しいにも関わらず、お金を貸して、きちんと金利もとっている。

そこでいろいろ考えた結果、相手にどういう風にお金を使ってもらって、どうなってほしいかという思いが大事だという結論に至りました。

我々はパチンコをしにいくお金のような消えることが分かっている人にお金を貸していました。それでも自分が金利を獲って儲かるからお金を貸していたのです。でもユヌスさんたちにはこの人たちが貸したお金を使うことによって、生活がよくなってほしいという思いがありました。その時、結局貸す側の思いによって同じような金融業でもこれだけ変わるんだなと感じました。

次にもし自分で何か事業を起こす機会があったら、何かハッピーエンドを目指してできるものをやりたいなと思ったわけです。

スケール可能なビジネスをしたいという話はやるからにはそういう思いはあるよねという話ですが、ビジネスで目指せることは2つあります。

1つ目は職人さんになって誰にもできない素晴らしいものを作る。自分はすごく職人さんを尊敬しているけれども、自分は何か1つのものを突き詰めることができるタイプではありません。それゆえ、残念ながら諦めるしかありませんでした。

2つ目はスケールすることです。1つ目がタイプ的にできなかったから、対外的にスケールするビジネスをしようと思いました。

 

海外ビジネスのリアル。コミュニケーションは何度も繰り返すことが重要

ー 実際にカンボジアでビジネスを始めてみて、難しいと思う点は何ですか?

コミュニケーションの取り方が難しいと思います。別に語学がという問題ではないです。彼らは英語をぺらぺら話すことができるから。何が問題かというと彼らは因果関係が分からない。彼らとコミュニケーションをとっているとこっちが酔っ払ってくることがしばしばあります。

彼らになんで、誰が、どうしてというのをずっと言い続けても、何度も同じ場所に行ったり、来たりしてしまいます。きちんと会話が通じません。何を根拠にものを話しているんだと思うことがよくありました。

そこを理解することがかなり難しいです。だからたぶん向こうは僕らがいくらロジカルに話しても通じていない。当然会社のオペレーションなどは全てロジカルに作られています。Aをやったら、Bをする。BをやったらCをするみたいなルールがありますが、たぶんこれは彼らには全く通じていません。

 

ー そのような状況の中、どのようにコミュニケーションの取り方を工夫されていますか?

同じことを言い続けていくしか方法はないと思っています。僕らの周囲には同じことを小さいころから言い続けてくれる大人がいたからこそ、人が言ったことをある程度は理解できるように育てられました。

しかしながら彼らはその過程を経ることなく、育ってきています、見た目は大きいけれども、結局物事を理解することになると小さい子供と一緒な状況です。だから僕らが10年くらいかけて行ったことを彼らの場合はすでに大人になってしまっているから10年以上かかってしまいます。僕らと同じような過程を経ることが重要です。

(現地ミーティングの様子)

後は何とかなりそうな人と何とかならなさそうな人がいて、残念ながら何とかならない人に関して、我々は見捨てるしかないと思っています。それは日本的な冷たい話かもしれないですが、例えば世の中のルールが急に変わってしまって、今日からボクシングが強い奴だけが一番偉いみたいな世界になったとしましょう。ボクシングの仕方とかいきなりボクシングをやったことがない人に教えても今更どうにもならないでしょう。やはり人それぞれ向きと不向きがあって、だからこそそれらを見極めることが非常に重要になってきます。

 

ー海外でビジネスをしていて、大変なことばかりだと思うのですが、なぜ続けることが出来るのでしょうか?

とにかく自分がやってみたくて始めたことだったから辞めることができませんでした。

例えばポーンと海に飛び込んで、「泳ぐことができません。」って言って泳ぐことをやめたら死んでしまうでしょう。だから泳ぎ続けなければなりません。それでせっかく泳ぐことに決めたのだったら、楽しく泳ぎ続けたいです。そして泳いでいるうちに島が見えてきたら、その島まで行ってみようと思うし。

だから大変だけれども、やりたいと思って始めたわけですし、目指すところに向かうことが楽しいから続けられていると思います。

 

ー そうなんですね。次に海外で働くことの醍醐味について教えてください。

もはや海外という感覚がありません。例えば今回、日本に帰国してからまた半年間くらいインドに住むことになるけれども、それでそのままインドが良ければすっとインドにいるし、カンボジアはカンボジアで事業を行っているため、二度とカンボジアに帰らないわけでもありません。

そんな感覚だから、その「海外」というのは日本以外という意味だと思うのですが、日本を含めて別にどこでもいいんじゃないかなと思います。その時の自分の行動パターンにあっていればです。それだから別に“海外で働く”は場所が変わっただけで、仕事内容は変わりません。海外だからという醍醐味は特に感じていませんでした。

 

2030年までに100万人の農村アントレプレナーを創る

ー これからのビジョンについて教えてください。

2030年までに100万人の農村アントレプレナーを創りたいです。

途上国の農家は厳密にいうと農家ではありません。土地を持っている無職の人たちです。ただ毎日を生きなければなりません。彼らは空き地がたくさんある状況を使って、そこに自分たちの食べ物を育てています。そこで収穫した自分たちの食べ物以上を何とかお金に換えて、お金でしか買えないようなものを購入しているのです。

彼らは別に農家になりたくてなっているわけではありません。できることならば農家をやめたい。でも農家が儲かる職業であるならば続けていければいいと思っています。彼らにとっての選択肢はどちらが儲かるかなのです。

そこで我々は農家に対して、儲けるために農業以外の選択肢を掲げることもあるし、もちろん農業でいかに儲けることができるかも考えて、彼らの生活を豊かにしたいです。

(現地農家とコミュニケーションをとっている北浦氏の様子)

もう一つは儲かったとしても、何もないという状況をどうにかしたいと思って活動しています。現地にはスーパーマーケットもないし、電気も来ていないし、水道もない。そういった暮らしを少なくとも変えていきたいと思っています。

村で電気が使えるようにするための発電所を作りたいといった時に、村の収支が分からなければお金を借りることが出来ず、作ることが出来ません。それでは生活を豊かにすることができません。

僕たちはまず、彼らの収支情報を集めて、その人たちにお金を渡すことによって、収入が膨らむような仕組みを作り続けたいと思っています。

 

ー 最後にこれから海外でのビジネスに挑戦しようとしているアセナビ読者に一言をお願いします!

何をもって人はすごくなるのか?それは常に数ある選択肢の中で、少数派を選んだ人がすごい人になれます。どの方向性であれ、この人しかいないといった人がすごい人であるわけで、だからこそ常に少数派を選ぶことを恐れないことが重要です。

常に少数派を選ぶことを喜びにしましょう。だれもやっていないことがすごくかっこいいみたいな感じでどんどん挑戦をしていけるといいと思います!

 

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