【社会起業家特集】社会問題を解決することは自分自身の問題を解決すること eFishery, Gibran Huzaifah氏

2017.03.02

社会起業家特集第8弾です!今回も現地の社会問題に取り組む社会起業家にスポットライトを当てていきます!

天ぷらは日本食として世界でも人気がありますよね。特に主役ともいえるエビは、日本食にかかせません。しかし、そのエビはインドネシアで養殖されたものが多いということをご存知でしょうか?ところが、インドネシアの養殖産業は高齢化や担い手不足、水質汚濁などの問題を抱えています。

今回は、そのような問題を解決するeFisheryを立ち上げた社会起業家,Gibran Huzaifah氏の取り組みを紹介します。

 

≪プロフィール|Gibran Huzaifah氏≫
低中所得の家族のもと、ジャカルタ近郊にあるスラム街に生まれる。バンドン工科大学にて生物学を専攻し、大学2年次に食料ビジネスを始める。3年次にはナマズの養殖を始め、自動で魚に餌を与えるeFishryのアイデアを得て2013年にeFisheryを設立。

2014年、2015年にスイスやオランダでスタ-トアップのコンテストで表彰され、2015年にケニアの世界起業家サミットで表彰される。

生産性の低い養殖産業

インドネシアのジョコ・ウィドド政権は「海洋国家構想」を掲げて海に関する事業に力を入れていますが、養殖に関しては、いくつか課題を抱えています。

非熟練労働者による過剰な餌やりの結果生まれてしまう水質汚濁。餌にかかるコストが全コストの70%~80%と高額であることに加え、高額なゆえに餌が盗まれる現状。養殖を営む方の高齢化、担い手不足。このような背景から養殖は生産性が低く、より一層担い手が減少していくのです。

こうした問題を解決しようと、Gibranさんは大学2年次に食料ビジネスを始めました。そして、その経験を活かし3年次には、なまずの養殖を始め、自動で魚に餌を与えるeFishryのアイデアを得たのです。

 

世界中のどこにいても餌やりができる

こうして、2013年に産声をあげたeFishery。インドネシアで初めて、養殖にテクノロジーを持ち込みました。ITを駆使して魚の食欲を感知し、自動的に餌やりを行っているのです。

eFishryは、漁師から水質や魚の空腹度などに関するデータを集めます。それらを分析した結果に基づいて、漁師の携帯電話に適切な量の餌を、適切な時間に投与できるようなデータを送ります。結果として漁師は遠隔操作で餌を投与することができ、水質汚濁を防いだり、生産性を高めたりできるのです。

こうした仕組みにより、2016年3月時点でeFisheryが以下の3つを社会のインパクトとして起こすことができました。

①餌量が24%減少

②1kgあたりの生産コストが16%減少

③生産性15%増

eFisheryは着実に結果を残していると言えますが、どのようなビジネスモデルで経営を行っているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

 

漁師の経済力を考慮したビジネスモデル

現地調査をもとに作成

Gibranさんは、eFisheryのビジネスモデルをFacebookのビジネスモデルと比較して説明していくださいました。

Facebookは、ユーザーの年齢や性別、好みなどの個人情報を企業に売り、お金を得ます (※もちろん広告収入などもあります) 。そのため、ユーザーは無料でサービスを利用することができるのです。

一方、eFisheryは、漁師から魚の種類や餌やりの頻度、水質などの情報を得て、それを様々な会社に売ることで対価としてのお金を得ます。Facebookとの違いは、eFisheryの機械を漁師に貸し出す、あるいは売る際にお金をとることです。

漁師が払うお金はレンタルの場合、月に20ドルから40ドル (約2,200円から約4,500円) 、購入する場合は、400ドルから700ドル (約45,000円から約79,000円) となっており、漁師が選べる形になっています。

また、そのお金も払えないという漁師に対するプランも用意しています。初期費用は取らずに、収穫後に売り上げを漁師とeFisheryで折半するという支払い方法です。給餌機本体のお金が返せるまで、漁師は売り上げの半分をeFisheryに返すのです。このように漁師の経済力を考慮した支払い方法を提案しています。

 

小さく早く始める

ここで、疑問が浮かびました。機械でイノベーションをおこしたとはいえ、生計を立てるために餌を売っていた人々のうちの何人かは職を失った、あるいは失う危険性があります。

これに対するGibranさんの答えは、eFiseryが事業を起こさないことで起こる弊害の大きさでした。

①特に田舎では仕事を見つけるのが難しい。

②労働者が起こす餌のやりすぎや餌の盗難はビジネスをダメにする。

③魚に餌をあげることは漁師の多くの仕事のなかでただの一つに過ぎない。

④漁師は高齢になっていっている。

こうした考えからeFisheryは事業を進めていくことができるのです。

eFisheryは、遠くに住んでいる漁師に機械を届けることが難しいなどの問題を抱えていますが、驚異的なスピードで事業を拡大しています。

2015年のeFisheryの機械導入総数は200台でしたが、2016年は、2,500台を目標にしていました。また、インド、ベトナム、タイ、中国、サウジアラビア、ベネズエラ、アフリカなど沢山の国で需要があるため世界中に事業の展開を計画しているのです。

目標は、養殖業や漁業におけるプラットフォームになる。そして、eFisheryの技術を農業分野に応用させること。

このようなGibranさんのモチベーションはどこから出てくるのでしょうか。

この問いに対する彼の答えは、社会の構成員としての責任でした。つまり、社会の問題を解決することは自分自身の問題を解決することであると捉えているのです。

食料供給はインドネシアだけの問題ではなく、世界中の人々が直面している課題です。さらに、田舎において魚は人々の貴重なたんぱく源となっています。だからこそ、水質汚濁を防ぎ、高齢者でも行うことができるeFisheryの持続的な漁業の仕組みが必要なのです。

最後に将来の社会起業家に向けてGibranさんからのメッセージをお届けして記事を締めたいと思います。

「どの企業も問題を解決しようとしています。だから、あなたが売りたいものにフォーカスせず、あなたが解決したい問題にフォーカスをしてください。

また、主観的になりやすいので、間違ったアプローチをしないためにも、問題に直面している人々と話し合うことが大切です。

最後に。小さく早く始めましょう。それが何よりも大事なことなのです。

 

取材後記

私は現在、大学院で国際関係学、主に紛争解決と平和構築について研究しています。学部時代は子どもの貧困の解消に興味があり、それらの問題に取り組んでいるNPOや、アフリカの児童養護施設でインターンを行いました。その過程で、非営利組織における資金確保の課題に気付かされました。ビジネスを通して経済的に自立しつつ、自国の発展に貢献しようとしているGibranさんから学ぶことは多くありました。

eFisheryは正に、IoTの応用がインドネシアの養殖業や漁師の人々を支え、給餌機本体が集めたデータを企業に提供することで利益を生み出すという、画期的な取り組みです。今後、eFisheryの技術が世界各地、そして農業の分野にも導入されることを、期待しています。

 

取材メンバー:飯干ノア・北條美紀・Suhendri Enk

執筆:飯干ノア・井上良太・北條美紀 編集:井上良太

 

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ABOUTこの記事をかいた人

井上良太

中央大学商学部経営学科卒業。大学2年の夏にカンボジアに訪れたことがきっかけでASEANや教育、国際協力に興味を抱くようになる。 3、4年次のゼミでは社会問題を事業で解決している社会的企業を専攻し、インドネシアの社会的企業とのネットワークを広げていた。 現在は株式会社パソナの社員として雇用を通じた社会貢献の方法を勉強中。 将来は国内外で社会的企業のプラットフォーム作りに関わりたいと考えている。