2017.02.17

社会起業家特集第6弾。特集も折り返しとなりました。後半は前半以上にわくわくする記事を届けていきます!

東南アジアを旅していると、森の美しさに魅了されます。つい先日もミャンマーのチャイティーヨに行った際に、森に癒されてきました。

一方で、インドネシアに行った際に、ところどころ森がはげている光景を多く目にしました。インドネシア人の友人に聞くと、焼畑農業や違法伐採 (ばっさい) をしているせいだと言います。

今回は、持続可能でない違法伐採解決に取り組むTelapak代表を務める社会企業家,Silverius O. Unggul氏の取り組みを紹介します。

《プロフィール|Silverius O. Unggul氏》
1971年6月20日、南東スラウェシ島のKendari生まれ。Haluoleo大学在学中に友人と環境保護活動を始める。違法伐採問題に取り組む非営利組織、Yascitaを立ち上げる。1991年、違法伐採を伝えるメディアがないことから、自身のラジオ番組をスタートさせる。
2003年にはテレビ番組を始め、地域のさまざまな問題を取り上げる。また、2002年にはJAUHを立ち上げ、住民を巻き込んだ森林伐採に取り組み始める。
2006年、社会問題の根本となる社会構造の変革をしているチェンジメーカーたちが集うAshoka Fellowに参加。
現在、Telapak代表であり、森林や木材に関する問題の専門家である。

10年間でなくなるインドネシアの森林面積は?

アジア最大規模の低地熱帯雨林を有するインドネシアにおいて、年間約121万haもの森林が失われています。インドネシア全体の森林は、9,443万haと国土の半分を占めるため、それに比べたら年間121万haは小さい数字に見えますよね。

しかし、日本の森林が約1,200万haであることを考えると、今のままでは約10年後に、日本にある森林と同程度の森林がインドネシアで失われる計算になるのです。

いったいどうしてこんなに多くもの森林がなくなっているのでしょうか?

森林火災、皆伐、いろいろな原因が考えられますが、1番大きな原因は違法伐採です。インドネシアで伐採された木材の約70%は違法伐採と推定されており、森林の減少に大きく関わっているのです。このような持続的でない違法伐採をなくそうと、取り締まりを行う団体がいくつかあります。

第三者団体の手で合法的に伐採されたものを証明する、FSC認証やPEFC認証というマークがあります。今回ご紹介するTelapakは、こうした認証を利用しながらユニークな方法で違法伐採を解決しようとする団体なのです。

違法伐採・・・正規の許可を受けていない伐採(許可された量・サイズ以外の伐採を含む)、伐採禁止地域における伐採、伐採が禁止されている樹種の伐採等が挙げられます。

引用元:林野庁/違法伐採対策とは

地元住民が、わざわざ違法伐採を選ぶ理由

出典:Telapak HP

Telapakはインドネシアの森林減少の実態を調査、メディアを通じた告知、政府への提言やキャンペーンなどの活動を、1995年ごろから開始した組織です。

Telapakのミッションは3つ。

①対話を通して公共政策に影響を与えること

②資源マネジメントを運営するコミュニティを設立すること

③かつてないほどの割合で進行する生態系の破壊に歯止めをかけること

こうしたミッションを達成すべく現在農家や法律家、団体のリーダーなど、様々な300のメンバーがインドネシアの19の拠点で活動しています。

Telapak代表のSilverius O. Unggul氏は「違法伐採に関わるのは、企業と森林を所有する人々、そして資本家である」と言います。資本家の出資する企業は、パーム油となるアブラヤシや紙パルプの原料であるアカシアのプランテーション、そして安い木材を求めて皆伐を行うのです。

しかし、企業は地元住民を雇っているに過ぎず、実際に違法伐採をしているのは地元住民。違法伐採は、普通に伐採するより多くの賃金を得られるため、違法でも手を出してしまうようです。

森林に変わってアブラヤシやアカシアが植えられるプランテーションには、近くに加工工場を必要とするので、植林も行われずに森林が失われてしまう。さらに、企業は賃金の安い外国人労働者を雇うことになり、地元住民を追い出すことになってしまっています。違法伐採で不利なのは地元住民と森林なのです。

 

持続可能な森林開発へ

現地調査をもとに作成

こうした持続可能でない森林伐採を変えるため、Telapakは2002年頃からは新たな事業をはじめ、違法伐採に独自の方法で取り組んでいます。それがビジネスで違法伐採を解決する、community logging なのです。

community loggingは、地元住民が不利にならず十分な収入を得られ、かつ持続的な森林開発を行うことに意義があります。まず、community loggingの重要な点は、資本家のみが企業に出資するのではなく、企業とTelapak、地元住民の三者が企業に出資することです。

地元住民も企業に出資することで、企業の業績が良くなるごとに配当が受け取れます。つまり、それまで収入の少なかった人々が、企業の配当を受け取れるようになったことで、収入が増えるのです。違法伐採をするよりも断然こちらのほうが収入が増えます。

しかし、もともと収入が無いような地元住民が、どのように出資するお金を用意するのでしょうか?

そこで考えられたのが、地元住民同士で集まり、コミュニティをつくるということでした。彼らが出資する一人一人の金額は小さいかもしれませんが、コミュニティをつくることによって出資を可能にしたのです。

また、出資するだけでなくその企業のもとで働きます。配当を受け取るには企業の業績を上げなくてはならず、また、企業の業績を持続的に上げるためには、長く将来にわたって森林開発を行う環境がなくてはなりません。そうです、持続的な森林開発がおのずと必要となってくるのです。

地元住民はそれまでの一時的な皆伐を行うインセンティブが無くなり、持続的な伐採を行うことのほうがメリットになります。地元住民・企業・Telapakの三者が恩恵を受け、さらには持続可能な森林開発を実現するこのビジネスの仕組みこそ、まさに社会起業家の仕事と言えるのです。

 

お金がないならやるだけだ

Telapakの事業が功を奏し、ここ数十年の間に1,500万の木を植えられるほどの土地が回復しました。持続可能な森林伐採の道を歩みだしたのです。

Silverius Oscar Unggul氏は、community loggingで重要なことに「協力」という言葉を挙げてくださいました。国際協力で「押し付け」には気をつけなければいけないということは皆さんも聞いたことがあるかと思います。

Telapakも事業を開始した当初は、地元の人が、なかなか話を聞いてくれなかったり、事業を受け入れてくれなかったりしたそうです。そんな時、地元住民と一緒に森林に入り、話し、聞いてもらうことでcommunity loggingの利点を説いて初めて信頼関係を築き上げました。結果として事業を始めることができたそうです。

インドネシアには、If there are no duit, don’t do it. 「お金がないなら何もするな」ということわざがあるそうです。duitはインドネシア語でお金を意味しますが、Unggul氏はIf thre are no duit, just do it.「お金がないならやるだけだ。」と笑顔で冗談を言ってくれました。

Telapakのビジネスは社会問題を一方的に解決するためのものでなく、地元民と協力して持続的な森林調達を目指そうとする、とても前向きな社会事業であることがわかりす。ただ、違法伐採への道のりは簡単ではないでしょう。今後もTelapakの動向に注目です。

HP:Telapak

 

取材後記

私は最近、ある教授からこんな話を聞きました。「政府の政策は、国民の不幸の最小化よりも幸福の最大化を考えて行うべきだ。いろいろな意見はあるだろうが、私はこうした思いで政策を考えた。」

政策に限らず、社会起業家が考えることもこれに似ていると思います。どんな政策、ビジネスにも良い面と悪い面がつきものです。しかし、ポジティブな考えで最大幸福を目指す姿が、周囲を惹きつけ将来を創っていくのだと思います。

このcommunity loggingには、もともと違法伐採に関与して捕まってしまった人が、現在は参加している場合があります。彼らは違法伐採を悔み、そしてcommunity loggingに誇りを持っています。私はインタビューを通して、Unggul氏が作ったのはcommunity loggingの仕組みだけでなく、彼らの幸せの方ではないのかと感じました。

社会起業家は確かに問題を解決しますが、Unggul氏のような常に笑顔で、ポジティブな問題解決へと向かわなくてはならないのだと思いました。Telapakのホームページには人々の前向きな姿を映した動画がありますので、興味を持った人はぜひ見ていただければと思います。

 

取材メンバー:仁科伸也、山田悠作、Nurwantini Wiyono

執筆:仁科伸也 編集:井上良太

 

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