2017.02.09

社会起業家 from Indonesia特集第5弾です!今回も熱い想いを持った社会起業家の取り組みをご紹介します!

日本の伝統的な遊びといえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。けん玉、駒、カルタ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ、などなど。

日本と同じようにインドネシアにも伝統的な遊びが存在するのですが、そうした遊びは日本と同様、徐々に失われつつあります。昨年の夏にインドネシアを訪れた際、若者がしていた遊びと言えば、ポケモンGO。良いか悪いかは別にして、伝統が失われていくのはどこか寂しい気がします。

インドネシアの伝統的な遊びを使って一見関係ないように思われるコミュニティを活性化させる。今回は、その想いを実現すべくKOMUNITAS HONGを設立した社会起業家,Zaini Alif氏の取り組みを紹介します!

≪プロフィール|Zaini Alif氏≫

Institut Teknologi Nashional(ITENAS)にてプロダクトデザインの学士号取得。その後、バンドン工科大学にてプロダクトデザインの修士号、さらには博士号を取得。

インドネシアの伝統的な被り物がトレードマーク。

ZainiさんがTEDxに出演された時の映像です!英語や日本語の字幕をつけてご覧ください。

企業というよりコミュニティ?

KOMUNITAS HONGに一歩足を踏み入れると、そこにはまるでジブリのような世界が広がっていました。

まずはKOMUNITAS HONGの概要と事業内容をご紹介します。

KOMUNITAS HONG

創始者:Zaini Alif

設立:2005年

拠点:バンドン郊外

メンバー数:約50名

事業内容:ワークショップ開催/イベント企画

(参考:Liburan Anak

KOMUNITAS HONGの最大の特徴はメンバーの全員が “地域の住民” であること。

そのため、Zainiさん自身もインタビューの中でKOMUNITAS HONGを企業というより“コミュニティ”と位置付けているほどでした。

主な事業として、毎週日曜日にKOMUNITAS HONGの広場でインドネシアの伝統的な遊びのワークショップを開いたり、企業からイベントの企画を請け負ったりしています。ワークショップやイベントの参加者は外国人観光客も多いそうです!

インタビューをした際に、インドネシアの伝統的な遊びをいくつか紹介していただきました。こうした遊びをワークショップやイベントの中で体験することができるのです。

筒状になった布を使った“Balon sarung”という遊び(遊び方はいろいろ!)

遊びを紹介してくださった後、その辺りからおもむろに細長い葉っぱを採ってきて、慣れた手つきで何かを作り始めました。

作ってくださった作品がこちら!(左上:手裏剣 左下:バッタ 右上:エビ 右下:お寺)めちゃくちゃリアルです。

 

地域の結びつきから生まれるビジネスモデル

取材を基に作成

次に遊びとコミュニティが融合するKOMUNITAS HONGの一見変わったビジネスモデルを見ていきます。

このビジネスモデル、実はインドネシアの伝統的な遊びである、“Congklak” (専用の板とお金に見立てた石や貝殻を用いた遊び) からインスピレーションを受けているそうです。

Congklakの写真

地域住民は、KOMUNITAS HONGにメンバー登録をしています。ワークショップやイベントの開催が決まると、そのワークショップやイベントで扱う遊びの種類とメンバーの能力・予定を考慮してスタッフが決定します。この仕組みは日本でいう登録型の派遣バイトに近く、メンバーも小遣い稼ぎの感覚で副業として行っているのです。 

収益源はVisiterが支払うワークショップやイベントの参加費(参加費は一人当たり50,000Rp (419円))。収益の一部は当日スタッフに給料として支払われますが、収益の残りは少量がコミュニティのメンバー全員に配分され、その後、余った分がコミュニティバンクに貯蓄されるのです。

何と言っても特徴的なのはコミュニティバンクの仕組み。

コミュニティバンクに溜まったお金は、KOMUNITAS HONGの財政が苦しくなった際に使われますが、今のところコミュニティ内で使われたことはありません。貧困地域に寄付していることが多いそうです。これは地域の結び付きが強いからこそできる信頼関係で成り立つビジネスモデルのように感じました。

実際にCongklakを使いながら説明を受けています。この彫刻の美しさに魅了されました。

とはいうものの、インタビューをしていくうちに、KOMUNITAS HONGは果たして収益性は保たれるのか、ビジネスとして成り立っているのか、少し疑問に思ってしまいました。

収益についてお尋ねすると、そもそも事業を回すのには広場の維持費以外ほとんどコストはかかっていないとのことです。「マは回り続ける限り倒れないのと同じこと」イベントを運営しさえすれば、KOMUNITAS HONGはあり続けるのです。

前述した通り、KOMUNITAS HONGは企業というより、コミュニティ。あくまでも “コミュニティ” であるため、利益は特に追い求めているわけではないようでした。

コマを回してこの話をしてくださいました。

小さなコミュニティをたくさん創る

皆さんは “かくれんぼ” に含まれる宗教的な意味を知っていますか?Zainiさんは「かくれんぼは “We are from god, and how, where, when do we go back” という死生観を表現している」と話してくれました。

つまり、「この世に存在している私たちの命は神から与えられたものである」ということを表しています。Zainiさんは “かくれんぼという遊び” を通じて、神と私たち人間の関係を子どもたちに知ってもらいたいのです。

「単に “遊び’’ と捉えるのではなく、 “道具を作り、そして遊ぶ’’ と捉えてほしい。その遊びを通して哲学的な部分 (言語、環境、数学、社会性、人生観、宗教、感情) を理解してほしい」というZainiさんの言葉はまさに彼のバックグラウンドからきたものであり、今ではKOMUNITAS HONGで最も大切にしている想いだと言います。

そして、彼の信念はKOMUNITAS HONGの創設時の出来事からよく分かります。もともと、Zainiさんは伝統的なおもちゃ博物館を作ってほしいと政府に依頼されたそうです。しかし、「おもちゃはただ飾っているだけでは何の意味もなく “play” してこそ本質が学べる」という考えのもとその依頼を断って、KOMUNITAS HONGを立ち上げたと言います。

そんな経緯で生まれたKOMUNITAS HONGは “生きたおもちゃ博物館” と呼ばれているのです。

インタビューの中でZainiさんは「事業を拡大するのではなく、小さなコミュニティをたくさん創りたい」とおっしゃっていました。助け合いながら生きるコミュニティに暮らす人々はハッピーであるはず。そのようなコミュニティがたくさん創ることで、物質的ではない豊かさを感じ、幸せに暮らすことができる人が増えていく。これがZainiさんの考える社会貢献のあり方です。

現在、バンドン以外の地域でもKOMUNITAS HONGを創り始めています。今後も生きたおもちゃ博物館として、コミュニティの繋がりを活かしながら、伝統的な遊びを普及させていくでしょう。

 

取材後記

Zaini Alifさんは伝統的な遊びが消えつつあるという一種の社会問題といえる事象を地域レベルで改善していこうとしていました。そんな彼の姿勢に感銘を受けました。

これからこのような地域密着型の小規模な社会的企業が他の畑のビジネスでも展開され、その組み合わせが多様化していけば、地域レベルでの生活や教育の水準が向上するのではないでしょうか。

 

取材メンバー:Clara Shinta Asri Alpina、田中るり子、西原義弘

執筆、田中るり子、西原義弘 編集:井上良太

 

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