世界へ “Awesome!” を生み出し続けるフランジアベトナムで人事として活躍。松山栞氏・春日井萌氏

2016.12.24

From Asia to the World. アジアから世界を目指し、約4年で800名規模になっているフランジア。毎年拡大しながら、新しいことにどんどんチャレンジしている同社で、人事として働くふたりの女性にお話をうかがった。

<プロフィール|春日井萌 (かすがい もえ) 氏>

現在新卒1年目でありファーストキャリアがフランジア。HR。東京にある中高一貫のお嬢様学園に通う。帰国子女たちの高い英語力に憧れ高校2年生のときに単身アメリカへ。大学は韓国の慶應と呼ばれる延世大学を卒業。日本語韓国語英語のマルチリンガール。

 

<プロフィール|松山栞 (まつやま しおり) 氏>

東京のIT会社から転職し、現在フランジア2年目。HR。アメリカ生まれ、オーストラリアの生活を経て日本へ。春日井氏と同じ中高一貫のお嬢様学園が母校。早稲田大学在学中には1年間のアメリカのカリフォルニア大学アーバイン校へ留学。TOEICスコアは985点。

Awesome! を生み出し続けるフランジア

We make it awesomeの壁

―フランジアさんはベトナムの中でも大きなオフショア開発*会社とお聞きしました。どんな会社なのか教えてください!

 

 

 

“We make IT Awesome!” をスローガンに、全員がそれを目指して色々な方向から仕事をしている会社です。世の中の価値になってみんなが “すげぇ!” って思ってくれるようなものを作ろうとしています。

社員の規模としては現在801名です(取材時:2016年12月19日)。ハノイから始まった会社でハノイオフィスが一番大きく、日本・ベトナム・シンガポール・フィリピン・バングラデッシュにも展開しています。

日本には渋谷、島根、大分にオフィスがあります。

※オフショア開発:情報システムやソフトウェアの開発業務を海外の事業者や海外子会社に委託・発注すること。

 

ものすごい規模感ですね!

うちの会社は『毎年売上も人数も倍にする』と決めているんです。来年にはもっと大きくなっているはずです。

 

メインの事業について教えてください。

当社では3つのDevelopmentを軸に、ビジネスをしています。

1つ目はSoftware Development です。Webサービス、スマホアプリ、ゲーム、デジタルアートなど、最新のプログラミング技術を駆使してスピードとクオリティを両立させながら開発をしています。

次にHuman Developmentです。現在は、ベトナムのトップ大学との日本語IT人財育成の為の寄附講座の提供、各種教育機関へのTech Bootcampの提供、技術者向けのOpen Education Seminarや勉強会を開催しています。

こういった教育パッケージを横展開して生まれた国や環境による教育や雇用機会の不平等を無くす、新しい教育の仕組みを作っていきます。また、プログラマーに転身したい社会人向けにも、その知識やスキルを教えています。この二つの事業は無料で行っています。さらに、いろんな学校やセンターでの単発的なイベントも行い、学びたいけど学べない人たちへのサポートも行うようにしています。

最後はBusiness Developmentです。先進国家を運営するうえで有用な情報とリソースの蓄積を享受した日本と、若き才能が集まっている国のメンバーで、アジアでビジネス展開している地の利を活かし、グローバル展開出来るビジネスの構築を行います。例えば、”Awesome!” を生み出そうとしている面白いスタートアップに、フランジアの開発部隊を投資して技術的なサポートもしています。

 

自社サービスとして、エンジニアが自分たちの経験や知識をシェアするプラットフォームを作りました。

英語、ベトナム語、日本語に対応 → Viblo

英語のレファレンスはたくさんあるのにベトナム語は少ないですし、そもそも英語で知識や経験を投稿するということはノンネイティブにはハードルが高く、ベトナム人のエンジニアたちは情報を収集するだけでアウトプットするという習慣はありませんでした。

そこで、それがベトナム語でできるサービスを作り、多くのエンジニアが気軽に活用できるよう、まずはフランジア社内でそれを使うことを必須にしました。そうするとだんだんユーザーが社外にも広がり、今は10,000人以上が使うサービスになっています。

 

ほかにも、AIを用いたコーディングコンテストを企画運営しています。元々は社内用のイベントが社外に広がった活動です。

次からは予選を勝ち抜いた人たちだけが当日会場に集まり、決勝に参加できるトーナメント形式を予定しています。

将来的には、会場に観覧に来たプログラミングがわからない人もスマホを振ったりすることでその試合に参加できるものにしたいです。ライブ感を出して、楽しめてわくわくするような場つくりを意識しています。

フランジア・ベトナムの小林社長

これには特別強い想いがあります。エンジニアは、例えばサッカー選手のようにみんなが夢中になれるものを創りだせる職種だと思っているんです。だけどエンジニアがやっていることは良く分からないし、何がすごいのか難しくて見えにくい。それをエンタメというところから変えていきたいと思ってやっています。

 

オフショアだけでなく、いろいろと面白い事業をされているのですね。正直、オフショア開発のイメージが崩れました。仕事をもらってやっているだけではなく、価値あることもされている、ということがわかりました。

フランジアのソフトウェア開発は納品型ではなくラボ型をメインにしています。

クライアントとなる企業さんにアプリやWEBサービスを納品する、もしくは世の中にリリースすることが真の目的ではなく、良いサービスを作ることを目的としています。そのため、アジャイル開発を導入し、ユーザーのフィードバックを反映させていきながら、常にサービスをより良くしていく、世の中に本当に価値を生みそうなプロジェクトしかやらないというスタンスを取っています。

そしてそういった企業さんとは本気で一緒に作る。誰のサービスかということよりも、すごいものを作ることが大事、こういう考え方で仕事を選んでいます。少し生意気なスタンスですが(笑)。

 

他の拠点ではどんな事業をされているのですか?

例えば島根では、日本酒応援団と一緒に日本酒造りをメインに行っています。

IoT(Internet of Things)である酒ロガーを作り、田んぼの温度をデータで管理できるようにしました。事業化する予定はなかったのですが、出来上がった日本酒が思ったよりも好評で事業となり今、フランジアは日本酒応援団をサポートする側として携わっています。酒ロガー以外にも、島根の理系の大学生と一緒にIoTを使った研究開発も行っています。

参照:SakeLogger

ほかにも、以前フランジアでQAのインターンをしていた学生が、ここで学んだ技術を生かして大分にQAセンターを作るという目標をもって拠点を作ってフランジアの成長のために奮闘してくれています。フィリピン拠点では、国自体が日本人の語学留学先として最近とても人気なこともあり、語学学校と提携して新しい事業を作ろうとしています。

このように、いわゆるWebサービスやスマホアプリだけでなく、いろんな形の”Awesome!”を作ろう。みんなが熱狂できるような”Awesome!”を作ろう。そう思って仕事に励んでいます。

 

最初の仕事は人事の根本の見直し

フランジアベトナムの社員カンボジアやバングラデシュ、カザフスタンやロシア、ナイジェリアから来ているメンバーもいる、多国籍な環境

ベトナムで人事をされているということですが、どういう経緯があったのかお聞かせください。

 

 

 

私がフランジアに入社したのは2015年12月なのですが、当時の採用チームはバックオフィスの中にあり、人事部はありませんでした。しかし、毎年規模を倍増させていく勢いの中でその状態だとまずいと思い、入社後はまずは人事部を作ることから始めました。

「人事」の大切さは、最近でこそ日本でも重要視されていますが、ベトナムでは更にまだまだと思っています。国全体的に、「人事」が経営に大きく関わる大事な役割だということがまだまだ浸透できていないように感じます。

人事担当自身の認識も同様です。単なる面接のコーディネーターではなく、経営陣と時間を多く共有して一緒に戦略を考えたり、採用が会社のブランディングにどれだけ影響するか、人材配置がどれだけ売り上げに貢献できるかを認識した上で毎日仕事をするということがまだ当たり前ではないんです。

幸運にもそういった機会が前職で与えられた私が、その経験もあってフランジア入社後、ベトナム拠点へ配属になりました。

彼女 (春日井氏) は、私と中学高校とずっと一緒で、友達の数が圧倒的に多いんです。Facebookの友達が世界中に2500人くらい。ネットワークの広さは人事には大事だと私は考えているので、一緒にやってくれたら良いなと思ってベトナムに呼びました(笑)。

 

そうなんですか(笑)萌さんは呼ばれる前はどこにいらっしゃったんですか?

 

 

 

韓国の延世大学に通っていました。フランジアには新卒で入社しました。

 

 

 

 

萌は留学してて2年ずれてるんです。

 

新しい組織はどうですか?

 

 

 

今はアルバイト含めて人事チームに13人います。それでも良い人材で1000人まで拡大し、彼らをリテインするという目標を達成するには大変ですが(笑)。

 

ベトナムで働くということのリアル

最近リニューアルされたオフィスの様子

 

フランジアで働いていて、面白いことは何かありますか?

 

 

 

すごく小さいことでいうと、人事チームは女の子ばかりなこともあって、デザートとかおやつをみんなで食べるっていう時間が突然やってくるとかですかね?初めてみる食べ物を貰うときは「これなに?」って聞くんですけど、ベトナムのお菓子を英語で説明するのが結構めんどくさいらしく「いいから食べろ。おいしいから。」って(笑)。今は大好きですけど、チェー(ベトナム風ぜんざい)とか、最初見たときは結構な衝撃でした(笑)。

 

 

 

たしかに食べ物系は面白いね。この前、社員の誕生日会があって。みんなケーキとかおかずとか作って持ってくるんですよ。そこで一人の社員が持ってきてくれたのが、鶏の足。レッグじゃなくてフィートの方。みんなかわいいケーキとかデザートを作ってきてくれた中のフィートは面白かったです(笑)。

それと、人間関係かな。東京とかだと、個人主義志向で人と人とのつながりが弱いと思うんですが、こっちにいるとそれは深いと感じています。昼休みに男の子ふたりが足を絡ませ合いながら休憩してたりして、微笑ましいなと思ってみています。

 

 

 

“距離が近い”ですよね(笑)。

 

 

 

 

そうですね(笑)。そういうのすごくいいなと思っています。

 

 

 

 

あと、毎年7月あたりにはだいたい洪水が起きるのですが、みんな意地でも来るというところです。バイクが半分水に浸かったり、迂回したり、大通りを渡るためのボートまで出現したりしますが、強い意志を感じて感動しました(笑)。

実際にインターン生が体験した洪水時の通勤の様子。靴を脱いで裸足になってまでも、オフィスへ向かいます

 

もともとお二人には、“ハノイで働く女性として”というテーマで取材をしようとしていたのですが、良い意味で裏切られています。なんだかお二人ともたくましくてかっこいいです(笑)。

 

 

 

うん、私たちはそういった意味では女性ではないね(笑)。

 

 

 

 

悲しいけど良く言われるね(笑)。

あと、それで言うと、うちの会社は「女性だから」という感覚が当たり前のようにないんです。だから女性としてということは考えたことがないです。もちろん育休とか産休とか、美容系の優遇などもされてはいるんですが・・・働くうえでそれについて考えたことは一回もないかな。

 

 

 

 

たしかに無いね。

 

少し昔の話も聞かせてください。ベトナムに興味を持ったきっかけなどもあれば教えてください。

 

 

 

前も採用メインの人事をやっていました。人事、特に新卒採用が楽しくて好きなので人事を続けよう思っている中、たまたまフランジアを見つけて、面接を受けました。東京のオフィスで面接を受けたのですが、実は当時フランジアにはあまり興味がなく他の会社に入社をほぼ決めていました。それをフランジアの役員に見抜かれて、「一旦遊びにおいでよ」とハノイオフィスに招待され、「じゃぁせっかくだし」くらいの軽い気持ちで、行ってみました。そこでフランジアハノイオフィスを見て、たくさんの社員と話してみて、2代目CEO就任パーティに参加して、みんなの会社への愛とか、社員同士の仲の良さとか、会社がどれだけ社員のことを大事にしているのかということが2日間という短い間で非常に多くみられたんです。こんな会社の人事が出来たら幸せだなぁと思い、入社します!と全社員の前で勢いで宣言しました(笑)。

なので、ベトナムに行こうと思って来たわけではないんです。むしろ勤務地としてでなくても、ベトナムを含めて東南アジア自体についてほとんど考えたこともなかったです。いろんな人から「どうしてベトナムに来たのですか」と聞かれますが、フランジアに入りたかったからというのが答えです。ベトナムはあとからついてきました。

 

 

 

 

呼ばれて来た私も勢いだけどね(笑)。

私はもともと韓国の大学に通っている中で「アジアで活躍する女性になりたい」という想いがあったので、ベトナムに呼ばれてちょうど良いなと思って入りました。

 

 

 

 

そう。きっかけよりも、来たら気合入れて頑張れるかが大事だと思っています。

 

逆に、働いていて苦しいことなどはありますか

 

 

 

うーん、強いて言うなら、色んなことが“急”ということかな。前職も急に決まることは多かったですけど、今は社内だけでなく外部のイベントや国の制度なんかも含め急に色んなことが決まったりします。出来ればもう少し早めから計画を立てたいと思います。だけど、これで慣れてきてしまっていて。逆にこの急に対応できるようになって良かったとポジティブに考えています。

 

海外で働く、を考える

ベトナムで働きたいという人へのアドバイスをお願いします。

 

 

 

「ベトナムが好き」でフランジアを受けてくれる方が多く、とても嬉しいです。ベトナムを好きな気持ちは一緒です。そんな好きな地で、どんなことをしたいのか、どんな風になりたいのかを教えてくれるともっと嬉しいです。そのやりたいことが、うちの会社でできるかどうか、なりたい風になれるのかどうか人事の判断材料になるからです。

 

 

 

 

どこに行くにしても、本当にそうですよね。

「とにかくベトナム働いてみたい」という声を少なからず聞きますが、本当の本当はそんなことないと思います。

 

 

 

 

そうですね。私みたいに、勤務地を先に決めたわけではないひともいると思います。その中には海外で働きたいけど、国はまだ絞ってないという人もいると思います。

「海外」と言っても、例えばシリコンバレーとベトナムのフーコック島では全然違いますよね。自分が考えている勤務地候補に共通する点を教えてくれたら一緒に考えることが出来るので、それも教えてくれると嬉しいですね。

 

取材後記

堂々としたたくましい性格で、語学も堪能なキャリアウーマンのお二人。やりたいことに向かって今その時を頑張られている姿は尊敬以外の何物でもなかった。また、その姿勢があるからこその人事としての活躍ぶりも頷ける。

最後のメッセージには厳しくも優しいものがある。とにかくやってみるというチャレンジ志向は否定しないし、筆者はむしろ肯定派だが、そこにある軸や目標は何があってもぶれずにいたい。