【タイ女性特集】「このままで良いのか?」と問いその閉塞感から飛び出し挑戦していく。 タイで1番パワフルなエンジニア TalentEx(Thailand) Co., Ltd. CTO 岩崎美和氏

2016.10.20

ウェブサービスを創るためコードを書きものづくりを実現させるエンジニアは、日本でも引く手あまた。それなのに、タイでスタートアップに参画し、エンジニアとして活躍する女性がいる。38歳と岩崎さんは語るが、年齢を思わせないエネルギーがひしひしと伝わるのだ。

どうして今、タイに飛び出してきたのか、それまでの経緯と女性としての仕事観について伺った。

《プロフィール|岩崎美和氏》
TalentEx CTO。美大中退後プログラマーとデザイナーの分野にて数々のプロジェクトを経験。株式会社デジタルガレージにて8年勤めた後、上場目前の会社への誘いがあった中、知り合いの紹介から、TalentEx創業に参画。

38歳で思い切って辞職、未知のタイ・スタートアップ企業にジョイン。

── 現在のお仕事について教えてください。

TalentEx(Thailand) Co., Ltd. にてエンジニアと働いています。人材系のサービスを提供しており、例えば求人サイトやオフラインでのイベントも運営しています。今年で1年半くらいになりますね。今は38歳です。

参考:「ITを駆使して採用を効率化することでタイと日本に貢献したい」TalentEx代表 越陽二郎氏

── 30代後半でスタートアップ企業にジョインしたのは、何がきっかけだったのでしょうか。

前職でもエンジニアとしてコードを書いていました。その会社の時点で3社目で、8年ほど勤めていたんです。急に辞めたくなったんですよね。長く居続けたなぁ、という気持ちになって。前の会社では部署がちょこちょこ変わったので、それまでは退屈することもありませんでした。

勢いといいますか、特に転職活動もしないままに「辞表を出してしまえ!」と思って辞めました。有給を消化するために2ヶ月あったので、その間に決めれば大丈夫と思ったんですよね。

越さんとの出会いは、私の同僚の知り合いだったことです。その同僚が、「会社を辞めて、次の職場が決まっていないんだったら、タイで会社をつくろうとしている知り合いを手伝ってほしい。エンジニアがいなくて困っているから」と紹介してくれました。その後、私はまだ東京にいたので、タイにいる越さんとはSkypeでお話をし、とりあえずエンジニアとしてものづくりを手伝うことにしたんです。2ヶ月ほどは、東京でリモートで仕事をした後、結局タイに来て一緒にやることにしましたね。

── 決断するときに迷いや不安は感じなかったですか?

特に躊躇はなかったですね。特に東京にいつづける理由もそのときなかったし、同じ場所に居続けるのもリスクだと思っているので。自分の気持ちが何を求めているのか?ということを重視しているんだと思います。来てよかったです。タイに知り合いなんて、そのときは越さんしかいなかったので、今思えばよくやったな、と思いますね。(笑)

起業のビジョンに共感して飛んできた!なんて綺麗なことだけではなく、ただ純粋に面白いことができそうだったんです。今は人材のサービスを提供しているけれど、越さんはきっと他サービス・他分野でも広げていきたいと思ってるはず。私が持っているスキルを提供し協力するという立場で関わっていければと思いました。

タイで、タイの現地の人向けのサービスを作っているので、その土地にいなきゃわからないことがあるはず、というのも感じていましたね。例えば、イベント運営をしていましたが、来客者や雰囲気、ウェブサービスだったらユーザーの声や使い勝手など。タイでやらなきゃいけないな、と思う仕事が多かったですね。

すべて予想外な人生。今やっていることは大学生のときでは考えられなかった

── 大学は美大を中退されていますが、そこからエンジニアになるまではどのような経緯があったのですか?

大学を中退した後は特に仕事もないニート状態でした。しかし、親の病気がきっかけで働かなければまずい、親のすねをかじっている場合ではないと気づき、コンピューターの仕事であれば食べていけるんじゃないかと思ったんです。当時、2ちゃんねるとかインターネット界隈のことも好きだったし、生きていくためなら何とかやっていけるかな、と。独学で勉強し始めました。

1社目で、働いていたらだんだんとできるようになり、できるようになると好きになるんですよね。最初はデザイナーとしてでしたが、次第にエンジニアとして働けるようになりました。

ちなみに、大学生のときなんてCGの授業があっても苦手で、コンピューターなんてわからない!嫌い!って思っていましたからね。大学生の自分からしたら、コンピューターの仕事をしていること、今海外にいること、すべて予想外です。

 

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ビジョンが持ちづらい女性。それでも柔軟性を受け入れ、ありのままで生きる

── 女性特集ということで、女の人生と仕事について聞いても良いですか? 先ほどお子さんもいないとのことでしたが、今は独身でいらっしゃるんですよね。

11年前に結婚し、10年前に離婚しています。このままで良いのか、このままの何かが一生続くのか?という閉塞感のようなものに突如襲われたんです。蓄積したものを全部捨てて、えいっとよくわからないところに飛んでいく、というのが時折あるんですよね、私。わけわからない決断するときがあるんです、割と常にしてるけどね。(笑)満足していますよ。

離婚していなかったらここにいないでしょうね。結婚していたら子どもを産んで、フリーで仕事を片手間で…という形だったかもしれません。タイのスタートアップ企業に、創業メンバーとしてジョインするなんて、もし子供がいたらリスキーだなと思います。旦那さんがいたら、そこまで仕事に全力にはならないというか、できないでしょうし。

── 女性と仕事、なんていうと両立していますだとかきれいな話が多いですが、こっちのほうがリアルです。

女性はビジョンが持ちづらいですよね。私自身も、こんな自分になりたい、というはっきりしたものなんて持っていないです。ビジョンとしてしっかり掲げている人って純粋にかっこいいと思うけれど、難しいと思っちゃいます。いくらそれを持っていても、その方向に向かうことができないときもあるじゃないですか。何が起こるかわからないですからね。

5年後なんて、どうなってるかわかりません。柔軟性で勝負していきましょう。

── 私もどっちかというと、柔軟タイプかなと思いますね。未来なんてわからないから何かに固執したり、どうしても!みたいな夢があるわけじゃなくて。それをネガティブに思っちゃったり、でもそういうもんだよね、と、結局はある意味楽観的に思ったり。美和さんの言葉に勇気もらいます。

父が死んだことが大きいかもしれないです。もちろん親戚などで死に直面するということは経験していましたが、身近な親という存在が本当に死ぬんだ、と。それまでも、刹那的な生き方をする方でしたが、あぁ明日死んでいるかもしれないんだ、とより強く思うようになりましたね。

父の死、結婚、離婚、と2年くらいの間に起こったんですよね。計画上にないことが起こり得るんです。何が起きても、最善じゃなくても良いから最善に近い解を出していけるような人でありたいとそのときに感じましたね。周りのみんなからしたら、何してるんだ?と思われているかもしれないけれど、明日死んでいるかもしれないんだから、10年15年先のビジョンではなくて、今やるべきこととやりたいことをやっていこうと思いました。自分の人生なので。

自由で選択肢に溢れた学生へメッセージ

── お話の中に、たくさん私の人生の指標になるエッセンスがありました。最後に、なにか読者へメッセージがあればお願いします。

最悪死ななければ、大丈夫です。私なんて、4回車に引かれても生きてますから。(笑)

学生は悩むと思います。選択肢がありすぎて、自由がありすぎるからです。
長いビジョンや、遠く先のことはまずは考えなくてもいい。楽しいなと思えることに出会って、それを続けていたらなにか形になっている、というものだと思います。

── ありがとうございました!

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取材日時:2015.12.12

編集後記

タイにいる日本人は在留届を出している人で約6万人、届けていない人も含め実際には10万人近くいるのでは、とも言われています。
私がアセナビメンバーとして活動し始めた当時は、アセナビで取材をさせて頂いている方のほとんどが起業家、そのうちの9割以上は男性でした。

タイだけで、どんな理由であれこんなに日本人が働いているのに、”ASEANで働く”人として起業家ばかりのお話だけを発信するのは、少し偏っているのでは?
むしろ、”ASEANで働く”を遠ざけているのでは?
起業している方はもちろんカッコ良くて、素晴らしい。でも、リアルな話はもっと転がっているはず。

そう思い、自分にとって身近な女性のお話を伺うことを決めて始めたのがこの特集です。
この記事の岩崎美和さんは、特に、あぁやっぱりこういう生き方もアリだしリアルだな、と大きく共感し納得した、印象的なインタビューです。

”何が起きても、最善じゃなくても良いから最善に近い解を出していけるような人でありたいとそのときに感じましたね。周りのみんなからしたら、何してるんだ?と思われているかもしれないけれど、明日死んでいるかもしれないんだから、10年15年先のビジョンではなくて、今やるべきこととやりたいことをやっていこうと思いました。自分の人生なので。” (記事より抜粋)

私が原因で公開までに時間がかかり、迷惑をおかけしました。
それでも、無理を言って発信をさせていただきます。

次の女性特集は、私が女性特集として一番最初にお話を伺った、思い出深いお二人。引き続き女性特集をよろしくお願いします!