”異なる環境でGAPを経験することで自分の幅は大きく広がる。”ベトナム、シンガポールで得た経験を糧に日本でビジネスを立ち上げる。株式会社Famarry代表取締役  藤井悠夏氏

約4年、ベトナムとシンガポールで事業の立ち上げ経験をされた藤井氏。ベトナムでは、ウェディングメディアの立ち上げを現地法人で行い、シンガポールではウェディングサロンを開業する企業の支援を行った。“アジアでのビジネス立ち上げを経験して、自分の基準がズレました。”と語る同氏にASEANでの経験、そしてこれからのビジョンを伺った。

《プロフィール|藤井悠夏》
1983年シリア生まれ東京育ち。大学在学中にベンチャー企業でインターン後、フリーペーパーの創刊や、300名規模の女子大生サークルを創設。2006年株式会社リクルートに入社。ゼクシィ営業部で2007年に年間MVPを受賞し、2010年に退職。その後ベトナムに渡り、現地法人にて新規事業の事業責任者として従事。事業譲渡後、日系ブライダル企業のセットアップ支援のため2013年に来星。ブライダル関連のコンサルティングや、日本でウェディングフォトの撮影を希望するシンガポール人に日本の提携企業を紹介するサービスを行う。2014年10月にFamarryを創業。

世界各国の腕の良いフォトグラファーとユーザーをマッチングするサービス『Famarry』とは?

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-現在の事業内容を教えてください。
Famarry(ファマリー)というサービスを運営しています。一言でいうと、フォトグラファーのクラウドソーシングサービスですね。フォトグラファーに登録していただき、撮影してもらいたい方々とのマッチングを行っています。現在は、ウェディング撮影を中心にマッチングサービスを提供しています。

もともと事業を始めたきっかけは、私がシンガポールやベトナムに住んでいた4年間で、アジアの人たちの前撮り(結婚式とは別の日に和装やウエディングドレス姿で記念写真を撮影すること)への情熱というものを肌で感じました。特にシンガポール人は日本で前撮りしたい場合も多かったです。しかし、日本での前撮りなどに関する情報を海外で得ることは難しく、そのコーディネートなどもシンガポールで行っていました。その時に、撮影をしたいと思う人たちに向けた良い媒体がなく、撮影したいと思う写真からフォトグラファーを探して撮影を依頼出来るようなワンストップのサービスが必要だなと思い、この事業を始めました。

ウェディングに軸を置いているわけではなく、あくまで撮影というところに軸を置いているつもりです。より良い写真を残したいユーザー、腕一本で活躍したいと思っているフォトグラファー、その両者をうまくマッチングして撮影のあり方を変えたいと思っています。

-登録されているフォトグラファーとユーザーについて教えてください。

 フォトグラファーに電話やメールなどで、サービスについて説明して登録をして頂いてます。これまで300名ちょっとのフォトグラファーに登録して頂いてます。現在月50〜100件ほどの予約申し込みがあります。海外のユーザーが日本でウェディング写真を撮りたいという場合もありますし、日本のユーザーが海外で写真を撮りたいというニーズもあり、国を横断したニーズも増えています。国内だけでなく、海外も含めてユーザーをこれからどんどん増やしていきたいと考えています。

-300名のフォトグラファーからの登録はすごいですね!現在のウェディング業界は会場やプロデュース会社がフォトグラファーを手配するので、費用が高くついてしまう印象を受けています。

 そうですね。当日の写真撮影では、式場が手配するフォトグラファーに写真を撮ってもらうと、単価が20万円ほどかかります。そのうち半分は式場が持っていってしまい、そして残りの8万円は斡旋業者に入ってしまうので、フォトグラファーに残る金額は10%ほどしかないこともあるそうです。

どこかに所属していることで、何をせずとも撮影の仕事が入ってくるということもあり、なかなか品質は上がっていきません。しかし、独立する意欲のあるフォトグラファーはより良い撮影を目指し、マージンで費用を取られることがないので、リーズナブルな価格で頼むことができます。

-ユーザーについてですが、私が聞いた話では、最近フォトウェディングというものが流行っていて、結婚式は特に上げずに写真だけで済ますカップルの方々が多いと聞きました。Famarryの利用者の方々もそのような傾向はありますか?

 どちらかというと、フォトウェディングで済ませたいという方々より、人生の節目に良い写真を残したいという方々をターゲットにしています。そういった方々は結婚式も挙げる場合が多いですね。安く済ませられれば良いというモチベーションよりは、せっかくだから人生の節目に自分たちの姿を素敵に残しておきたいという人に使ってもらいたいです。

 

リクルートからベトナム、シンガポールに!人生初の新規事業の立ち上げをベトナムで行う。

-藤井さんのこれまでの経緯を教えてください。

大学に入学してすぐ、企業でインターンをする中で、何か自分でやりたいなと感じることがあり、学生向けの地域密着型マガジンを創刊しました。卒業後は、リクルートに入りました。理由としては、起業に興味はあり、その選択肢を持てる人間になるためにビジネスマンとしての能力を最短で身に着ける必要があると思ったからです。

-その後、ベトナムへ行かれましたが、それはどういったきっかけだったのでしょうか?

 中学のころ海外に住んでいたこともあり、いつかは海外で仕事をしてみたいとも思っていました。そんな時に、起業家の先輩がシンガポールで会社を設立したのをきっかけにシンガポールに視察に行きました。その際、他の国もいろいろ見てみようと思い、いくつかの国を回ってみたんです。そのなかで、インスピレーションでベトナムが面白そうだなって感じて…。行くからには、経済成長のスピードが早く、且つ自分の介在価値の高い場所で働きたい想いがあり、気づいたらベトナムに移住していました。(笑)

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-具体的にどのようなところでインスピレーションを感じましたか?

 これから何かが始まる感があり、ワクワクしましたね。リクルートをやめてからは日本で女性のキャリア支援活動を個人的に行っていましたが、日本ってその点選択肢は女性にとっていくらでもあるんじゃないかと思って。逆にベトナムはビルもたくさん建ってきて、人も増えているから可能性は感じる。でも女性にとって職の選択肢は日本と比べると少ないし、サービス産業もまだまだこれから伸びていく国です。そういう国のほうが日本にいるより、貢献できることがあるんじゃないかなって思ったんです

-そこから、ベトナムの現地法人に転職されましたが、どのような経緯でその企業に行かれたのでしょうか。

特に何をやるか決めずにベトナムに行きました。そんな中、外を歩いていた時に、ウエディングドレスで写真を撮っている人が多いことに気が付いて。これから人口が増えていく中で、結婚する人は増えていくし、ウェディングって女性が一番きれいでありたいと思う瞬間じゃないですか。前職のリクルートでゼクシィにいたこともあり、ウェディング系で何か事業ができればいいなと思い、周りの方々にそのような話をしていたら、現地法人を持っている日本人の方からお誘いを頂きました。

その会社はもともとウェディングとは関係ないインターネット系インフラ事業をしている会社でしたが、新規事業としてベトナム人向けウェディングメディアの立ち上げをやらせていただくことになりました。まずはベトナム人を雇うところから始めて私以外10人くらいのベトナム人と一緒に事業立ち上げをしました。

 

-日本人1人という環境。想像するにとても大変そうです。どのような事に苦労されましたか?

本当に大変でした(笑)当たり前だと思っていた常識が通用しませんよね。お金を払う約束なのに払わないとか、そもそものビジネスの土台すらないような感じですかね。そして自分にとって初めての新規事業立ち上げだったこともあります。ベトナム人従業員もうまくいかない雰囲気があるとすぐにやめてしまうし…。あれは結構ショックでした…。

ベトナムだからというのもありますが、それに加えて経験のないメディア事業立ち上げの難しさも相まって苦労したという感じです。

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-ベトナム現地法人で働かれた後、シンガポールに活躍の場を移されましたよね?その経緯についても教えてください。

 ベトナムで立ち上げた事業は1年で譲渡することになりました。その後は、ベトナムでウェディング関係の事業をやっている日本人は私くらいしかいなかったこともあり、アジア進出を考えている様々な企業からお声をかけてもらいました。その中の一社から、ベトナムだと進出は難しいけど、シンガポールからスタートしてアジアで事業展開していきたいので、一緒にやりませんかと提案を頂きました。私自身も、個人でベトナムでビジネスを立ち上げるのはハードルは高いなと感じていながらも、アジアで何かしたいなという想いはありました。そして、シンガポールなら英語も通じるし、住んだこともないし、ビジネスの土台もしっかりあるし不自由はなさそうだなと思い、行くことに決めました。

-どのような業務内容だったのでしょうか。

 シンガポールにウェディング事業を立ち上げることが決まっている会社の立ち上げ支援というような感じです。ウェディングサロンを立ち上げるということで、ホテルと交渉したり、内装会社を選んだり、買収先のデューデリのお手伝いなどしました。

 

 

“ビジネスをやるうえで、自分の基準がズレました。”

-全く異なるベトナムとシンガポールの2か国で活躍された藤井さんですが、日本に帰ってきて、海外に行く前の自分と比べてどのような変化を感じますか?

 まず日本のマーケットが非常に特異だと感じました。そしてそんな日本において、日本人の感覚で日本人を相手にビジネスできる。日本国内のマーケットは大きいし、その大きいマーケットがある日本で日本人しかできないビジネスがあるってすごいなって思いました。ベトナムやシンガポールでの事業立ち上げと比べると、ビジネスを立ち上げるハードルが低くなった気がします。日本での資金調達環境も恵まれてると思いますし、自分の事業にかける想いがが伝わりやすいので、仲間探しも国内のほうがしやすい。この感覚って海外で事業の立ち上げを経験してみないとわからないことだと思います。

-海外に住んで事業をしないとわからない感覚ですよね!これからの藤井さんのビジョンを教えてください。

 一つは、腕さえあれば世界中どこでも活躍できる仕組み作りに興味があります。選択肢が少なくて、やりたいことができないという状況ってすごく悲しいことだと思います。現在は撮影に軸を置いていますが、そこに限らず活躍したいと願い、努力をしている人の疎外要因を取り除きたいです。

 二つ目は、人と人が繋がり、暖かさを感じる瞬間をたくさん作れればいいなと思っています。今まで経験して得たスキルや知識、そしてビジネスチャンス、今やりたいの3つが重なっているのが現在のサービスFamarryだと思っています。

そして日本で土台をつくったら早く海外で挑戦したいです。生きている以上いろいろな価値観に出会い、いろいろな場所に住んでみたい。また事業が大きくなれば自分の視界も広がると思うし、そのためにも事業は大きくしていきたいです。

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-お話を伺ってみると、ウェディング業界が好きでその事業をされているというわけではなく、結果としてウェディング業界に長く携わっていると感じました。自分の行動の指針などはあるのでしょうか??

 その時一番好きなことをやっていたいんです。そして今は、人の役に立つことを考えられるビジネスが純粋に好きでやっている感じです。行きたくなったら旅行に行くだろうし、遊びたい時は遊んでるかもしれない。恋愛が楽しかったら、恋愛にどっぷり浸かっちゃうしれない(笑)だからワークライフバランスとか特に考えたことはないです。
その時に自分にとって優先順位の高いものを選んでいる結果、仕事しかしてないんですが…。まあ、この10年、一番ワクワクさせられてるのが自分の介在価値を感じることができる仕事なので、一生熱中しているような気がします・・・。

-ありがとうございます。最後に、これからの若い方々に向けてメッセージをお願いします!

自分の幅が広がる瞬間って知らないことを経験した時だと思います。そのギャップが大きいほど自分の幅も広がっていって、選択肢も広がるかなと思います。その中でアジアに行ったり、働いたりすることでも自分の幅は大きく広がります。自分と異なる環境の人のことって想像つきませんよね。でもそういう人たちと多く触れ合うことで、想像力が付き、それによってクリエイティビティも養われると思います。仕事って「こうすれば相手にいいだろうな」って考えることができるかという想像力が大事だと思うのですが、そういった想像力を身につけられると、仕事の質が上がっていくと思います。なるべく価値観が形成されていない若いタイミングでいろいろなギャップを感じて自分の幅を広げてほしいです。そうすることで、人生も豊かになると思います!

 そして、日本人だから、女性だからということで縛られてほしくないです。それはあくまで特徴であって、アドバンテージもディスアドバンテージもある。アドバンテージであれば活かせばいいし、そうでなければ補っていけばいいと思います。だから、そういう自分の生まれ持ったものに縛られず、特徴として活かせるところは活かしてほしいなと思います!




ABOUTこの記事をかいた人

アセナビ編集部

「ASEANで働くを近くする」を理念に掲げ、ASEANで働いている日本人のインタビュー記事を発信しています!他にも、ASEANのカルチャーやトラベル情報も発信し、ASEANに行ってみたいと思ってもらえるように日々奮闘中です。ほぼ学生で運営しています。