「異なるのは個人のアイデンティティーだけ」国籍関係なく誰もが使えるタウンガイドアプリ”stoooc”を運営 村上英夫氏

2016.04.06

初めてベトナムへ旅行に行った時、直感的にそこに拠点を全て移すと決め、アプリ制作を始めた村上氏。他のアジアと比べ、強くベトナムに惹かれたと言う。何がそれ程彼を惹きつけたのだろうか。また、彼にとってのホームは、日本ではなく、アジア全体を指す。『日本人だから、日本のアプリだから、という考え方は違うのではないか。』その言葉の意味と、彼が今後目指して行きたいものとは?

《プロフィール|村上英夫氏》
九州大学大学院在学中に犬小屋設計会社を立ち上げ、その後大学院の仲間と株式会社サハラ(現株式会社パイプドビッツ)を設立、さらに2000年に有限会社ハイデザインズ(現株式会社ハイデザインズ)を設立、アパレルファッション特化型のECエンジンDOUCE(現SPIRAL EC)を軸に、大手ファッション系ECサイトを多数手がける。2014年より、ベトナムにてアプリ開発を始め、2015年CtoCマッチングアプリのプラットフォーム事業でstoooc株式会社を、2016年CtoCイベントマッチングアプリにてHours株式会社を設立、アジアクロスボーダーのCtoCマッチングアプリプラットフォーマーを目指す。

 

直感で拠点を全てベトナムに移転

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ー”stoooc”というアプリについて、そしてその目標について教えてください。

簡単に説明すると、グルメやショッピングなどの様々なツアーがこのアプリひとつで出来るというものです。東京オリンピックに向け、インバウントという形で、訪日外国人が楽しんでもらえたらいいな、と思って作りました。

でもこれは中期の目標で、本当にやりたいことはクロスボーダーというところです。中国から日本に来る人がいるし、日本から中国に行く人もいますよね。日本から中国に行った人が、中国からベトナムに行くこともあるわけで。そう考えたら、結局みんなアジアで行き来をしているだけですよね。

インバウンドって、視点が日本ベースの人たちの発想だと思うんです。でもぼくは、誰もが使えるものにしたい。

クロスボーダーで、人々が遊びに行ったときに、ガイドをしたりツアーを組んだり、最終的にはそれが仕事で何らかの繋がりが出来たり。旅で出逢った人たちが、アジアの中でお互いに仕事をしていくってことが実現できたらな、と思っています。

そういうわけで、クロスボーダーでアジアを行き来する人たちがコンタクトを取り合うプラットフォームを作るということが、このアプリの長期的な目標ですね。

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ーアプリ内の文字も、その人がケータイで登録している言語で表示されるんですね。凄く便利です!そもそもこのアプリを作ろうと思ったきっかけはなんですか?

一番のきっかけはもの凄くシンプルで、2014年の8月頃にホーチミンに行ったとき、ご飯が物凄く美味しかったんです。でも、食べに行くのが非常に困難でした。

ホーチミンは、ほとんどがタクシー移動なんですよ。運転手は地図を見ずに住所を見るけど、本当にお店に向かっているか分からないし、一人だと住所がベトナム語だからお店まで行けないし、メニューは読めないし…。

これは絶対みんな苦労するぞ、と思って、誰でも美味しいご飯が食べられるアプリを作ることにしました。

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—なるほど。

海外に出たことがある人は感じたことがあるかもしれないですが、ベトナムだとお店の人が皆ケータイいじってるんですよね。日本だとありえないじゃないですか。

そんなに暇でスマホいじってるなら、お店の情報でも出せば良いのに、というのも最初の取っ掛かりでしたね。

 

—では去年初めてベトナムに行ったことが、アプリを作ることに繋がったんですね。

そうですね。今ってネットショッピングで買い物する人が多いじゃないですか。でもそれって、人との関わりがないから面白くなくて。皆お店に行けばいいのに、と思うようになりました。だから、お客さんをお店に戻そう、っていうのがこの10年の僕のテーマです。

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—ではベトナムへ行ったことで生活や目標も色々と変わったんですか?

一気に変わりましたよ。もともと2年くらい日本国内でエンジニアを採用してたけど、日本だと全然いないんですよ。

そこでお世話になってる方に相談したら、ベトナムいいらしいよということを言われまして。ベトナムは、エンジニアを100万人くらい育成して、IT輸出、人材輸出するっていう政府の方針らしいのです。国家大学のエリートはITエンジニアになるのが夢で、日系企業のシステムを作るのが一つのアメリカンドリームのようになっています。

だから物凄く若い人口が多くて、人材が豊富。それで、行くしかないと思いました。

行ったその日に、ベトナムは、自分の中のパワースポットだと感じました。2日で20人くらい面接して、手応えも感じたんです。日本よりエネルギーがあるなと。

それを経て、直感的に拠点をベトナムに移そう、と決めました。ベトナムにシフトするのを考えて家族も何もかも全部ベトナムに移しちゃいました。(笑)

 

「今のグローバル社会の時代に、日本人だから、という概念はおかしい。」

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—ベトナムに行ったことが本当に凄い転機になったんですね。それまで海外に行ったことはありましたか?

アジアには何回か行っていました。タイとか、韓国とかも。でもフーンって感じだったのに、ベトナムは行った日に違いました。こいつはパワースポットだと興奮しましたね。

 

—どこにそんな惹かれたんですか?

行ってみないと分からないですよ。何だろう、本当に直感です。東南アジアの雰囲気が好きというのもあるけど…、ベトナムがダントツでした。

食べ物はズバ抜けて美味しい。親日っていうのもあるし、ベトナム人は芯が強い人が多いですね。とにかくエネルギーがありました。

村上さんc

—”ベトナム人”という視点では、どういったところに魅力を感じますか?

ベトナムの若い人と、夜な夜な飲んで話すことがあるんですが、日本の戦後のときのように感じますね。ベトナムがこれから成長する中で、夢を掴もう、っていう話をしているんですよ。

日本でも若い子を採用するけど、日本の方が閉塞感がある。将来が凄くキラキラして、明るく語るっていうことが、少ないように感じます。夢を見れないってことはないけど、大体もう手に入っちゃってるしね。

もちろん、日本人は全員閉塞感があって、ベトナム人は全員夢を持ってるって訳ではないですよ。ただ、国が成長していて勢いがある分、一緒にやって、人生悔いがなければ良いよね、ということが素直に出来る環境が、ベトナムにはあります。ベトナム人の方が一致団結してるようにも感じますね。

 

ーなるほど、たしかにベトナムは平均年齢も若いし、日本と勢いが違いますね。ちなみに村上さん自身は、ベトナム人とどうやってコミュニケーションを取っているんですか?

ホワイトボードで図を描いたり、アプリを見せたり、身振り手振りとか参考資料見せたり…。本当に色んな方法を使って、コミュニケーション取っています。英語とベトナム語と日本語も使いますね。かなりむちゃくちゃだけど、皆案外わかってくれますよ。

 

—今聞いてる話だとベトナムについて良い面が多いですが、悪い面はないですか?

ぼくの場合はあまりないですね。でも一般的に言われるのはコミュニケーションですね。

あとベトナムの人って、言われたタスクをこなすのは得意だけど、自分たちで考えたり設計するのはあまり得意じゃないんですよ。もちろん、個人差はありますが。

 

—日本人とベトナム人って働き方の習慣とか、17時になると皆帰っちゃうとか、困ることはありませんか?

それで困ったことはないですね。日本人だからとか、ベトナム人だからとか、そういう発想はなんだか違うな、とぼくは思っています。

というのも、日本人だから残業で付き合ってくれるっていうのはおかしな発想で、裏を返せばベトナム人だって付き合う人は付き合う。だから、ぼくが忙しそうにしていると、残ってくれたり手伝ってくれたりする人もいますよ。

ただ、国や文化の背景としてはありますね。例えば、仕事より家族を大事にするとか。でもそれって、大阪人と東京人でも違うかもしれないこともあるので、結局のところ個人のアイデンティティの違いだけだと思います。

 

 

まずはアジアに出てみると、選択肢が広がる

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ー今後、アプリをどのようなものにしていきたいと考えていますか?

アジア・クロスボーダーの集合体にしたいですね。メンバーそれぞれ「こういうアプリにしたい」という想いを持っていて、それを持ち寄って皆で作っていく集合体にしたいです。

あとは、旅行で知り合いが増えても、結局友だちになるだけじゃないですか。そんな関係ではなく、ビジネス面でも繋がれるようなアプリにしたいです。仕事でつながる人たちって、繋がりも深くて長かったりするし。是非そうなってほしいと思っています。

 

ー村上さん自身の人生的なビジョンはどんなものでしょうか?

とにかく世界中旅して周りたいです。このアプリがその地域に根付くまで、しばらくその地域にいる訳じゃないですか。まさにそういう人生をやりたくて。死ぬまで世界一周旅行をstooocで出来れば楽しいな、と思っています。

現地の人と触れ合って、それぞれの国の歴史とか文化を知りながら、お店の人とコンタクト取ったり、横で一緒に飲んでるおじさんと仲良くなって、ご飯一緒に食べたり、そういうことをやりたいですね。

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ー最後に。先程、「日本の大学生は未来に希望を抱いていない」とおっしゃっていましたよね。そんな日本の若い人たちに向けて、メッセージをお願いします。

アジアであれば、希望はいっぱいあります。日本だけじゃなくて、日本以外。アジア以外でもいいと思うけど、まずアジアに出てみるともっと選択肢が広がる。希望も見えて来ると思います。

 

ーとにかく日本の外に、ということですか?

そうですね、ぼく自身はそうでした。出ることはいいと思うし、日本だけで考えないほうが、確実に選択肢が広がる。日本だと一億二千しかいない人口が、アジアだと人口どれほどいるでしょう?単純に母数増えるじゃないですか。人口だけで考えても、全然違いますよね。

 

ー海外で事業とか仕事とか、そういうものでなく、旅行でも良いですか?

全然良いと思います。でも旅行だったら、現地の人と直接コンタクトを取ったりするべきかな、と思います。

ツアーガイドとか、旅行だけしてもあまり意味がない気がします。インターネットがこれだけあるし、LCCで交通費も安くなったし、気軽に海外に行けるじゃないですか。 是非そこは異文化に飛び込んで欲しいですね。

 

【編集後記】
村上氏にとって、国境や国籍は関係ない。そんな彼からは、クロスボーダーという言葉が何度も発せられた。「日本人向けだとかそういったアプリではなく、アジア人みんなが同じように、便利に使えるアプリにしたい。」
日本といった縛りに捉われず、ASEANという舞台で活躍したいと考える方であれば、村上氏に対する共感の声も多いのではないでしょうか。

 

ABOUTこの記事をかいた人

弓場絵里加

法政大学法学部国際政治学科1年生。これから発展していくであろう東南アジアに興味を持ち、アセナビメンバーに。初海外はマレーシアとシンガポールをひとり旅。現地人と話すのが好き。ASEANの魅力を色々な角度から伝えることの出来る記事を書いていきたいです!